米国で 集団訴訟しかけ原告に見返り? 過剰訴訟反省へ。

 6月29日付け日経朝刊の記事です。米司法当局は企業を相手どった集団訴訟で不正を働いたとして有力弁護士事務所ミルバーグ&シュルマンに対して本格的な調査を入れたそうです。
 これは81年から04年にかけて同事務所が行った集団訴訟のうち、50件以上に同事務所のパートナーの親族が原告側として登場。同氏は親族からキックバックを受け取った疑惑がもたれている。

 米国では、大企業から損害を受けた「被害者」と称する人に弁護士が近づいてきて、訴訟をけしかけるわけです。本人は負けても何も損をしない。勝てば天文学的なカネをせしめることができるわけです。

 その典型例がマクドナルドのドライブスルーで股にコーヒーを挟んでこぼし、やけとしたバーサンが億単位の補償金を勝ち取ったケースです。逆に東芝は実際起きてもいない作動不良の「可能性」があるとして訴えられ、米法人の10年分の利益をもぎ取られました。

 このような裁判は、たいてい保守的な地域の田舎で、行われるわけで、企業、特に外国企業にとっては非常に不利な形でおこなわれます。まさに騙しやすい連中がいるところで行われる、陪審員制度を悪用ないし乱用した訴訟です。

 これが米国でビジネスをする上での非常に大きなリスク、リーガル・リスクとなっています。実際ぼくの会社では米国相手の輸出はしない。輸入だけです。輸入にしても契約書はつくらない。下手に契約書をつくると、訳の分からない裁判に持ち込まれ、法外な金額を請求されるリスクをさけるためです。契約書をつくるためには日米の商法に精通した弁護士を立てる必用がありますが、高額なうえに、人数も限られており、零細企業には高嶺の花です。

 実際、ぼくの会社が日本代理店をやっていた懐中電灯メーカーは、いきなり代理店解除を通告してきました。日本でのビジネスが、拡大してきたから消防専門の大手の商社に乗り換えたわけです。
 まあ、ウチとしても面白くはないですが、変な訴訟を起こされるよりはマシ、とわりきっています。実はこの会社の製品は性能は高いのですが、不良品率がパーセントレベルで、ウチのような小回りの利く企業が、敢えて一般消費者をあまり対象にせず、プロ相手にこまめに対応してきたから業績が伸びたんですが、大きな会社ではそんな対応してくれるわけがない。実際その商社はこの懐中電灯に関しては休眠状態らいしいです。

米国小型飛行機メーカーやら工作機械メーカーは多発する訴訟が原因で業績が悪化し、無くなってしまいました。ある意味弁護士につぶされたともいえるでしょう。ヨーロッパの大企業でもリーガル・リスクを理由に米国に進出しない、ないしは撤退した会社も少なくありません。この過剰訴訟は経済活動の足かせとなっています。米国で物づくりが衰え、企業が外国に生産拠点移すのは、このリーガルリスクが一因となっています。

 日本のメディアでは米国こそビジネスの楽園、みたいな煽りをやっているところが多いのですが、真っ赤な嘘です。無論成功はあるでしょう。ですが、その影に多数の、理不尽な訴訟やら、二階に上がってハシゴをはずされるような、汚い手を使われて潰された会社も多いのです。でもそういう影にマスメディアはスポットを当てない。

 日本のコンテンツ産業は何かというと米国を指向しますが、ポケモンの小学館プロダクションの久保田氏は「当社が進出したのは任天堂という既に米国に根をおろし、潤沢なキャッシュフローをもった会社がパートナーだったからです。弁護士費用は毎年20億円はらっています。20億円払う覚悟があれば対米進出をお勧めします」と述べています。

まあ、こういう国内外の意見に耳を傾けたのはブッシュ大統領で、この点だけは唯一彼の政策で評価できるところであります。

この記事へのコメント

土門見人
2005年07月04日 21:17
http://web.archive.org/web/20030219023433/www.nakashimalaw.com/essay/hatanaka/0211.html

 上記は、米国の法曹とその養成方法をケチョケチョにけなす弁護士先生のサイトです。当っていないとは言わないけど、日本の法曹も威張れたもんじゃないと思いますけど。
 実際、「日本の弁護士はアロガント(倣岸)で、国際取引には使えない」との酷評もあるんですが……
キヨタニ
2005年07月04日 22:31
やはり互いにセンセイと呼び合う世界のろくななのが多くないというのはこの世の常でしょう。
 しかも日本の場合弁護士のギルド団体が数の増大による競争と淘汰を恐れて、妨害してきました。

 双方代理で資格を剥奪されしまいましたが、日大法学部の教授だった並木俊守氏は米商法の権威とよばれ、日本で最も収入の高い弁護士でしたが、こういう人は例外。
 まともに国際的な契約書作れる弁護士がどのくらいこの国にいるのか知りたいものです。
名無し
2005年07月06日 03:42
東芝の場合アメリカ政府に訴えられたはず。
キヨタニ
2005年07月06日 10:48
東芝のケースは集団訴訟だと思いますが。
で、中国でも同じような訴訟を起こそうとしました。

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