今回のハリケーン被害は米国の歪みの象徴

 米国では今回のハリケーン「カトリーナ」による被害が甚大です。9・11以来、危機管理が一元化されたにしてはお粗末です。これがテロリストによる大量破壊兵器でも同様の結果となったでしょう。
 今回のハリケーンによる被害はアメリカ社会の持っている歪みや、政府の政策ミスが重積されたかたちとなりました。

 まず、第一にやらんでいいアホなイラク戦とその後始末で大量の州兵が召集されており、初期に救助と治安維持のために十分な兵力が投入できなかったこと。

第二に既に死者数千名という被害者がクルマを持てない貧困層に集中していること。前にもこのブログで書きましたがアメリカでは中間層が減り、金持ちと貧乏人の二極化が進んでいます。貧乏人はクルマを持てない。しかも他の先進国ほど、公共交通機関が発達していないので、徒歩で移動できる範囲で生活する(というよりも生活せざるをえない)。でもって逃げ遅れて被害にあったわけです。

 第三に社会資本整備の遅れです。堤防などの補強に責任を持つのは米陸軍工兵隊ですが、予算を要求してしても通らなかった。毎月空母が買える程の外国で戦費を投じている場合か、と思うのはぼくだけじゃないでしょう。

第4に治安の悪化。お定まりの住人の暴徒化で、略奪やら殺人まで起きている。なまじ銃が普及しているだけに始末が悪い。先の東南アジアでの津波とくらべると歴然としています。なにしろ、制服きた警官が率先してスーパーで略奪している映像がニュースで流れるんだもん。薬品やモルヒネ目当てで救急隊を襲う連中もいるわけで、医療やレスキュー隊にも護衛がいる。その分警察や州兵の人手がとられて、救助や復旧が送れるというわけです。
 しょうがないんで、米政府は州兵を4200名を増派し、武装集団は射殺することも辞さないと宣言したわけです。ほんとに文明国かいな?

 常々ぼくが指摘してきた、アメリカの問題がハリケーンで噴出結果になったと思います。
日本人はアメリカ大好きというか、アメリカマンセーの人が(政府や役人、特に留学帰りも)多いのですか、「アメリカ良いか、住み良いか~」(麦と兵隊のメロディで)ということを考え直す機会としてはいかがでしょうか。
  

<米ハリケーン>高まる弱者の死亡危機 武装集団には射殺も
(毎日新聞【バトンルージュ(米ルイジアナ州)和田浩明、ニューヨーク高
 橋弘司】) - 9月2日21時40分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050902-00000110-mai-int

この記事へのコメント

2005年09月04日 01:01
いつも、楽しく見さして頂いて
おります。
この記事だけ見たら
共○主義者と間違いそうです。
キヨタニ
2005年09月04日 01:37
なんでぼくのような反動右翼が社会問題やら人権問題なら扱わなならんのでしょうか(笑)。
問題は第三世界と同じで中間層がいなくなると、ボリュームゾーンの商品やサービスが廃れて、産業が衰退してしまうからなんですが。
 しかもアメリカの工業は衰退する一方です。なにしろ装甲車まで外国頼みですからねえ。
 戦後日本が高度成長を遂げたのはお隣との
競争ですから。隣が冷蔵庫を買うと、ウチも、ピアノを買えばピアノもという具合。
 個人的にはアメリカの未来はあまり明るくないような気がします。
2005年09月04日 02:14
反動右翼?
私は昔、下層左翼と言われ
ちゃいました。
装甲車まで外注ですか?
アメリカの未来は暗そう。
あんまり、真似しない方が
よろしいようですね。
ぷろすて
2005年09月04日 03:13
ここはアメリカか、と思うような映像…こうしてまたひとつ日本人は覚醒していくわけですね。
戦国時代に作った信玄堤が未だ機能しているのを思うと、
アメリカはまだまだこれから歴史を作り国民のいる国を作る国なのでしょうねぇ。
team9
2005年09月04日 03:20
以前NHKで見たハイチ?の暴動や光景と瓜二つで
とてもシュールでしたね。
ねぶお
2005年09月04日 06:38
7月にニューオリンズに行ってきたばかりなので今回のことは大変驚いています。今アメリカの最下層は移民メキシカンのことと思っていたのですが、今回貧乏で被害にあった人たちが相変わらずアフリカ系であることについては考えさせられます。メキシカンは良く働きますから結局働かないで都市に住み着いていた人たちが被害にあったという側面もあるのではないかと思います。実態を把握しているのではないのですがどこかの国の文句ばかりで働かす、生活保護を受けている在○と同じ構造があるのかもしれません。アメリカでも寄付活動がインドネシアのときよりも盛り上がっていない感じがするんですけれど。
KKMM
2005年09月04日 09:18
またこれで、生命を守るためには銃が必要だという理屈で全米ライフル協会の勢力が増すのでしょうか。
キヨタニ
2005年09月04日 09:39
全米ライフル協会が(白人は数ですくなから)
アサルトライフルとか軽機銃とかまで認めろ、
と言い出したりして。
ぼくは先日見た、ロメロのゾンビ映画とダブってしまいました。
truely_false
2005年09月04日 18:14
むかし、米国のB級ニュースで、硬貨を運んでいた輸送車がハイウェーから下の一般道路に転落し、中の硬貨をぶちまけてしまったというのがありましたが、そこに近所の住民(多くは黒人)が群がり、懸命に小銭をかき集めていたのが思い出されます。たしかにビンボーだというのは分かりますが、しかし、矜持ってモンはないんでしょうか。関東大震災のときも、東京の下町がやられましたが、ああいった略奪なんぞはおきず、そのことが外国人特派員によって報じられて賞賛されました。ツラいから何をしてもいいというのは、信用をつくり上げることができず、結局、ツラいまんまになってしまうと思うんですが。なんか、アフリカ諸国への債務免除とダブってみえます。
キヨタニ
2005年09月04日 20:14
ありません。
ごく一部の例外を除いて彼等にあるのは絶望けです。
 アメリカを先進国と思ってはいけません。社会構造は第三世界です。ですから、我が国が目指すもでるたりえません。日本のインテリは認めたくないでしょうがね、こういうこと。
在米15年の反米保守
2005年09月05日 14:12
確かにアメリカの現状は末期のローマ帝国を思わせます。日本で同じような災害が起これば責任のなすり合いと自己憐憫で全てが終わるでしょう。しかしアメリカ人の国民性がそうさせないと思います。彼らはあらゆる国難や悲劇を最終的に団結と愛国のドラマに置き換えてしまいます。一年後の「復興記念日」にブッシュ大統領はニューオリンズで偉大なるアメリカを称えるスピーチを行うでしょう。そして星条旗の小旗を振って歓喜する聴衆の映像が世界中に配信されるでしょう。そんなの当のアメリカ人だって信じちゃいないよ、と清谷先生は仰るかも知れませんが、なかなどうして彼らは信じているんですよ。「アメリカ」を。アメリカ人の自己正当癖は我々外国人を呆れさせますが、一方で彼らは極めて楽観的で未来志向の国民です。そこに彼らの強さがあると思います。
キヨタニ
2005年09月05日 21:34
>一年後の「復興記念日」にブッシュ大統領
は~ 
いえいえいそのんなことはありませんよ。おおざっぱですからあの国は。それにアメリカ、アメリカといってないと空中分解しますからね。それしか求心力がない国ですから。
 ただ、米国はかつて、移民でもコツコツやったていたらそれなりには報われた国だったわけです(ある程度は)ところが、ある程度の業績をだしても、会社を精算、転売した方が儲かるとなると、従業員を解雇してしまう。努力しても報われなくなると人心がすさむと思います。
ねぶお
2005年09月05日 23:53
いつも勉強になるのでよく見させていただいているのですが、このブログについてはどうなんだろうという感じがします。
第1、第3についてはその党利なのかもしれませんが、第2の部分についてはちょっと違う感覚を持っています。ニューオリンズは大都市で、市電などもあり公共交通機関が整っているから車を持たなくても生活できるというのが本当のところであったのではないかと思います。田舎では車がないと生活できませんから貧乏人でも車は持っています。コストも日本ほどかかりません。
キヨタニさんの今回の評論はアメリカの都市部だけを見ている感じがします。現在のアメリカを支えているのは金融を中心とした大金持ちグループと農業生産を中心としたお金のあまり要らない生活をしているグループではないかと思っています(共和党の支持基盤です)。都市部はいろいろと問題があるとは思いますが、日本と異なり農村部はまだまだ強いというのが私の印象です。
キヨタニ
2005年09月06日 00:29
幾つか誤解があります。アメリカの大都市が東京やロンドン、パリのように緻密に公共機関が発達していません。市電なんぞホントにセンターにあるだけです(因みにニューオーリンズは全米でもっとも犯罪の多い都市)。
 ですから都市および、その郊外の中で島のように孤立した場所が多数存在するわけです。
 日本の感覚で都市と地方をくらべてると勘違いを起こしますよ。田舎といってもアメリカで農業従事者は人口の3パーセントほど、それが全米の広大な農地や牧場を動かしているんです。つまり大規模農家が多いわけです。日本的な「農村」のイメージとは大いに異なります。
 大規模農業には莫大な投資が必要で貧乏人ではできません。
 アーミッシュみたいのは例外ですよ。
 今一度今回の災害に関する報道を丹念にご覧になることをお勧めします。
キヨタニ
2005年09月06日 00:30

また金融に限らず、投資家、株主、経営者は
短期の益出しに奔走していますから儲かっている企業でも平気で売り飛ばします。IBMはラップトップ部門を中国の企業に売り渡しましたが、これを担当していたのが日本IBMで、この発表後
退社した人間が非常に多かったそうです。
現業部門でも空洞化はすすんでいるわけです。
ねぶお
2005年09月06日 04:13
うーん誤解ですか。おっしゃるように公共機関が発達していませんが、町自体そんなに大きくないし、貧乏人は都市の中心、金持ちは郊外に住むのがアメリカのスタイルですから島のように孤立した地域に住んでいる人はみんな車をもっていると思います。
農業は確かに大規模で、だいたい畑で人が働いているところを見たことがないぐらいです。しかし、生産したものは輸送され、加工され輸出されています。これらにかかわる人の人口はかなり多く、アメリカ産業の基盤を支えているのは間違いないと思います。
何が言いたいのかというとアメリカの中西部に住んでわかったのですが、アメリカは都会と田舎の二つの顔を持っていて、都市の顔はよく紹介されるので日本でもわかりやすいのですが、なかなか地方のことはわかりません。しかし、アメリカの基盤になっているのは、間違いなく地方であり、その動向を把握した上でないとアメリカの分析はできないということです。キヨタニさんのおっしゃることが間違いだとは思わないのですが、日本の報道を丹念に見てもそのあたりはわからないのではないかと思います。
キヨタニ
2005年09月06日 10:59
おっしゃことの意味は理解しているつもりです。フランスでもパリとその他の地域(都市)は全く別です。ですからフランスでもパリはフランスではない、とわれます。それは地方に行くと実感できます。

 ぼくがいっているのはアメリカの大都市は第一に公共機関が発達していない(というよりビッグ3が潰しちゃったんですが)。第二に非常に貧しい層が都市内(郊外も含む)に点在してコミューンをつくっているわけです。
 今回のハリケーンの被害を受けたのは、彼等であるちというこおとです。
 米の大都市と田舎の比較を持ち出すと、今回の何故ニューリンズの問題では議論がずれてしまうと思います。
土門見人
2005年09月08日 20:44
しかし、映像の中で助けを求めて泣き叫ぶ黒人が皆デブ屋なのは、正直言って引けますね。「インスリーン!」なんて叫び、まず第三世界では聞けないでしょう。言っちゃなんですが、これを機会に少しはやせろよ。健康にもいいぞ。

 一方、この前の台風では、恐らく支那大陸で同規模以上の犠牲者を出しているはずですが、カトリーヌの影響か少しも報道されないのは、ざまあ味噌汁です。
キヨタニ
2005年09月09日 03:36
昔は太っていたのが裕福の証だったのですが
いまやデヴは貧乏人の証です。果物とかもあまり摂らないし。英国でもそういう傾向はありますが、同じような食生活をしていて米国になんであんななにデヴが多いんでしょう。

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