谷本真由美@May_Roma の妄想 その9

   谷本真由美さんの『日本が世界一「貧しい」国である件について』に対する分析と批評です。


日本が世界一「貧しい」国である件について
祥伝社
2013-03-27
谷本真由美(@May_Roma)

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谷口真由美さんのツイッター
https://twitter.com/May_Roma

 谷本さんは日本はジェネラリストと呼ばれるシロウトばかりで、専門性が低いといいます。

 「日本のサラリーマンがそういう専門家仕事をしても全く話にならず、『日本側はいったい何を考えているんだ?馬鹿なのか?』と言われることがあります」(P117)

 と、書いております。確かにそういう傾向もないとは言えません。

 ですが日本側からすれば、外人は平気で嘘をついて保身をする、気働きがない、官僚的だ、日本人相手なら5分で済むことが何日もかかる、などということが多々あります。ぼくもそのように感じることが多々あります。

 しかし、日本でジェネラリストが多いのは大企業です。中小企業ではそれほど異動はありません。そして日本の企業の大部分は中小零細企業です。谷本さんの頭の中の日本企業は大企業ばかりなのでしょう。中小零細企業で谷本さんのいうような「理想的」な労働をみんながやると会社が潰れます。
 ですから英国でも使えない「ネイティブ」の首を切って勤勉な移民を雇っているところが多いわけです。
 

 それから欧米人、特にアメリカ人は自分の文化が世界標準だと思い込んでいるので、それを押しつける傾向があり、余計な摩擦を生んでいます。日本に入ってきた外資で成功しているのは大抵ローカライズ、あるいは現地の文化を尊重する企業です。
 因みにアメリカには「二カ国語ができるのはバイリンガル、三カ国語ができるのはトリリンガル、では一カ国語しかはなせないのは?、アメリカン!」というジョークがあります。


 また谷本さんは英国などは外国人や移民が多く多様性があるのが宜しいだから、日本は駄目だ論を展開しています(P117~P120)。
 ですが、これまた味噌も糞もみたいな話です。

 英国は世界中で帝国主義で阿漕に植民地をつくって収奪してきました。ですから世界中で英語を話す人間も多いわけです。またかつての植民地であるインド、パキスタン、カリブ、南部アフリカなど多くの国々から移民が多いのもあたりまえです。

 ですが日本はそこまで悪辣に植民地を拡大してきませんでした。何しろ英国はインドの織物を潰すために職人の手首を切り落とし、大量に餓死させさりしてます。結果赤い大地が白骨で白くなったという話もあります。また王族の女性たちを自軍の兵士たちの「慰安婦」として投げ与えたりしています。これなんぞまさに「性奴隷」ですけども。

 ですから世界で英語が話せる人間が多くてあたりまえ、英語の話せる人間がいっぱい入ってきたあたりまえです。スタートが違います。

 米国はそもそも移民国家です。ですが、移民を受け入れることによる摩擦も大きいのも事実です。

 で、谷本さんはいかに英国の教育が素晴らしいかを縷々説かれているわけですが、それはごく一部のアッパーミドル以上の話です。

  ですが、英国人の多くは教育水準が高くないし、単に英語が話せるだけ。外国語ができないということは外国の文化や習慣について真摯に学ぶ機会がない、ということです。ですから繰り返しますが、谷本さんが自ら書いているように、移民に仕事を取られているわけです。

 対して日本の場合一般に、労働者でも読書の習慣があります。英国ではミドルクラスでも大して本を読みません。ロンドンの本屋を数を東京と比べてもよく分かります。一般的な労働者の知的水準は日本の方が上です。トップマネジメントは別でしょうけども。

 例えばフンラスのマクドナルドなんぞ、日本のマクドナルドよりも人数が多いのに、仕事が日本の何倍も遅いわけです。
 欧州の競争力が落ちるのは当たり前です。やはり旧植民地からの富の収奪の上にあぐらをかいてきたことが影響しているのではないでしょうか。 

 
 昔、日本人は電車の中でマンガを読む(だからオツムの程度が低い)ということを外国人から言われたときに、ぼくも電車の中でマンガを読みますが、年間図書費はマンガを除いても、100万円以上使っていますが、あなたはどのくらい本にお金を使いますか?と聞いたら黙ってしまいました。

 繰り返しますが、日本の労働者の方が英国の労働者よりもインテリジェンスがあるし、フレキシビリティ、適応力があります。ですから複数の仕事もこなせるとも言えます。

 
 谷本さんはユニクロの柳井正社長の言葉を引用しています。

 「成功する人はクレージーでちょっと変人でないといけないんです。スティーブ・ジョブスだろうがアンディ・グローブ(インテルの元CEO)だろうが、クレージーですよ」(P132~133)

 その柳井氏のユニクロ(ファーストリテイリング)こそが、谷本さんが口を極めて罵っておられる、滅私奉公、長時間労働を強要している谷本が攻撃している悪しき日本企業の典型例だと思うのですが、ロンドンにおいてだと、いい評判しか聞かないのでしょうか。

 

以下の記事を朝日深部のWEBRONZA+に寄稿しております。

空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(上)
――ロシアが売却する事情とは?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070400007.html?iref=webronza
空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(中)――日本が不利な理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013071000011.html?iref=webronza
空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(下)――F-35導入の是非を再考すべき
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013071100005.html?iref=webronza


東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(1)――墜落を恐れた?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013061900007.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(2)――省内の食い違い
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062000004.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(3)――難しい新規参入
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062700005.html?iref=webronza 
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(4)――「我が国固有の環境」とは何か
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070100008.html?iref=webronza

この記事へのコメント

ひゃっはー
2013年07月13日 14:46
イギリス人がそこまで悪辣だったからこそ、推理小説や手品が発達した、と言ってもいいでしょう。
マリンロイヤル
2013年07月14日 21:18
ビルマで重傷の兵士と共に残った、日本赤十字の「従軍看護婦」をガソリンかけて焼き殺したのもイギリス軍でしたね。

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