機動戦闘車よりも骨董品のエラント装甲車の方がマシなんじゃないの?
まあ、頭の体操と思って読んでください。
陸自が開発中の機動戦闘車よりも、フランスのAML装甲車やこれをベースにしたエラント装甲車の方がマシなんじゃないでしょうか。大戦後に開発された旧式ですが。
エラントは4輪の軽装甲車で砲塔を有しており、90ミリ砲を搭載したエラント90と、60ミリ後装迫撃砲を装備したエラント60があります。20ミリ機関砲を搭載したエラント20も若干製造されました。
重量は6トンですから、ヘリで余裕で空輸できます。ですから事実上LCACでしか運べない機動戦闘車よりも島嶼防衛では有利です。
またゲリコマ対処にしても敵の軽戦車に対してもエラント90の90ミリ砲をならばT-55でも撃破可能ですから、威力は十分です。
更に60ミリ迫撃砲による普通科への火力支援は副次被害を減らすことができます。また携行弾数も56発とかなりのモノです。
対して機動戦闘車の横幅は約3メートルです。これが「戦車」的に使用するのであれば、問題ありませんが、普通科に随伴して火力支援を行うのは苦しいのではないでしょうか。この点エラントは横幅約2メートルで車体はコンパクトです。先述のようにヘリでの空輸も楽です。戦術的な柔軟性はエラントの方にあります。
都市部に7割の人口がくらし、狭い道が多い我が国では使いづらいのではないでしょうか。無論現在の装輪装甲車に対する横幅2.5メートルという規制は厳しすぎる問題がありますが、だからといってすべてを3メートルまでに広げるのは考えものでしょう。
装甲車両の横幅をどの程度まで緩和するのかは、実際にいくつかの車輌をリースするなどして、試験して見る必要があります。まあ陸幕はやらないでしょうけどね。
そういえば機動戦闘車の横幅が約3メートルというのはぼくが初めて報じました。ネットでは2.7メートルとか怪しげな情報が飛び交い、それを信じていた人たちが多いようですが、どこからそのような話がでたのでしょう。
またぼくはかねてから横幅2.5メートルという規制は厳しすぎると、主張してきましたが「尊皇攘夷」の国士さまたちは、我が国の優秀な技術をもってすれば、横幅2.5メートルでも96式のような優秀な装甲車を開発できるのだ、日本の道路の実情をみれば2.5メートル以上の横幅は無理だと主張してきました。ところが彼らが機動戦闘車の横幅に対して物言いをしたこという話は寡聞にしてきいたことがありません。
憲法症なのか、防衛省のやることはすべて正しいと盲信しているのかどちらなんでしょうかね?
それからエラントは南ア陸軍で大量にモスボールしています。お値段もせいぜい2千万円程度です。軽装甲機動車よりもお安い。機動戦闘車を1輌買う予算で25輌ほど、2個中隊分調達できるでしょう。
同様な武装をもった6輪装甲車、ラーテル90やラーテル60なども3千万円程度です。ラーテルの完全に近代化したモデルでも6千万円程度で、96式よりもお安いレベルの値段です。
無論エラント旧式で、砲塔の旋回は人力ですし、夜間暗視装置も不十分です。現実的にエラントを装備することには問題があるでしょう。
ですが、このような極端な例を挙げて比較してみると、機動戦闘車の必要性や優位性が果たして本当にあるのかということに疑問が出てくると思います。
はじめに機動戦闘車は正しいのだ、という「結論」を前提に議論をすることは不毛です。
実際のところ一桁安いこのような装甲車を採用し、ある程度の近代化を施しても、機動戦闘車を調達するよりもかなり安く上がります。浮いた予算でC4IRを強化するなどをしたほうがまともかもしれません。
因みに南アの76ミリ砲を装備したロイカットであれば105ミリ砲よりも副次被害を低減できますし、より多くの弾薬を携行できるので島嶼に持ち込んだ時も兵站面で有利でしょう。
ロイカット
正面装甲は23ミリ機関砲の徹甲弾に耐えられます。重量が28トンで恐らくはC-2では運べないでしょうが、どうせ機動戦闘車も舗装された2千メートル級滑走路が必要で、多くの南西諸島には空輸できず、沖縄本島や下地島あたりからフネやLCACで運ぶ必要があります。
であればロイカットでも大同小異です。
因みにロイカットも余剰品がモスボールされており、お値段は恐らく2~3億円程度でしょう。
本当に機動戦闘車が必要なのか、他にもっといいものはないのか。生産する前に納税者として熟考が必要です。
想定するゲリコマ対処、島嶼防衛に何が必要なのか考えてみるべきです。
新しいウェブニュースサイト、NEXT MADIA Japan In-Depthに寄稿しております
防衛省は自衛隊の戦力を過小に見せる世論操作をしている?〜知られていない『防衛大綱』の不正確な記述
http://japan-indepth.jp/?p=1748
民主主義・法治の危機〜国家安全保障会議(日本版NSC)と特定機密保護法は警察官僚に支配される(1/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1821
民主主義・法治の危機〜国家安全保障会議(日本版NSC)と特定機密保護法は警察官僚に支配される(2/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1824
防衛省・技術研究本部に実戦的な装備は開発できるのか①〜リモート・ウェポン・ステーションとは何か?
http://japan-indepth.jp/?p=1703
防衛省・技術研究本部に実戦的な装備は開発できるのか②〜必要な調達をする気のない自衛隊と必要ない装備を技術実証する技術研究本部の悪すぎる連携
http://japan-indepth.jp/?p=1720
防衛省・技術研究本部の海外視察費はわずか92万円〜写真やカタログだけで十分な開発ができるのか?(1/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1750
防衛省・技術研究本部の海外視察費はわずか92万円〜写真やカタログだけで十分な開発ができるのか?(2/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1758
[仏パリ“ミリポール”リポート]防衛産業の輸出を阻害しているのは防衛産業を擁する大企業トップの無知蒙昧と保身
http://japan-indepth.jp/?p=1508
朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(上)――トルコの狙いは何か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013112500006.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?
アベノミクスで食材偽装が増える?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013111100009.html
機動戦闘車は必要か(上)――島嶼防衛にもゲリラ・コマンドウ対処にも不向き
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013103100010.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(中)――脆弱な防御力
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110100004.html?iref=webronza
陸自が開発中の機動戦闘車よりも、フランスのAML装甲車やこれをベースにしたエラント装甲車の方がマシなんじゃないでしょうか。大戦後に開発された旧式ですが。
エラントは4輪の軽装甲車で砲塔を有しており、90ミリ砲を搭載したエラント90と、60ミリ後装迫撃砲を装備したエラント60があります。20ミリ機関砲を搭載したエラント20も若干製造されました。
重量は6トンですから、ヘリで余裕で空輸できます。ですから事実上LCACでしか運べない機動戦闘車よりも島嶼防衛では有利です。
またゲリコマ対処にしても敵の軽戦車に対してもエラント90の90ミリ砲をならばT-55でも撃破可能ですから、威力は十分です。
更に60ミリ迫撃砲による普通科への火力支援は副次被害を減らすことができます。また携行弾数も56発とかなりのモノです。
対して機動戦闘車の横幅は約3メートルです。これが「戦車」的に使用するのであれば、問題ありませんが、普通科に随伴して火力支援を行うのは苦しいのではないでしょうか。この点エラントは横幅約2メートルで車体はコンパクトです。先述のようにヘリでの空輸も楽です。戦術的な柔軟性はエラントの方にあります。
都市部に7割の人口がくらし、狭い道が多い我が国では使いづらいのではないでしょうか。無論現在の装輪装甲車に対する横幅2.5メートルという規制は厳しすぎる問題がありますが、だからといってすべてを3メートルまでに広げるのは考えものでしょう。
装甲車両の横幅をどの程度まで緩和するのかは、実際にいくつかの車輌をリースするなどして、試験して見る必要があります。まあ陸幕はやらないでしょうけどね。
そういえば機動戦闘車の横幅が約3メートルというのはぼくが初めて報じました。ネットでは2.7メートルとか怪しげな情報が飛び交い、それを信じていた人たちが多いようですが、どこからそのような話がでたのでしょう。
またぼくはかねてから横幅2.5メートルという規制は厳しすぎると、主張してきましたが「尊皇攘夷」の国士さまたちは、我が国の優秀な技術をもってすれば、横幅2.5メートルでも96式のような優秀な装甲車を開発できるのだ、日本の道路の実情をみれば2.5メートル以上の横幅は無理だと主張してきました。ところが彼らが機動戦闘車の横幅に対して物言いをしたこという話は寡聞にしてきいたことがありません。
憲法症なのか、防衛省のやることはすべて正しいと盲信しているのかどちらなんでしょうかね?
それからエラントは南ア陸軍で大量にモスボールしています。お値段もせいぜい2千万円程度です。軽装甲機動車よりもお安い。機動戦闘車を1輌買う予算で25輌ほど、2個中隊分調達できるでしょう。
同様な武装をもった6輪装甲車、ラーテル90やラーテル60なども3千万円程度です。ラーテルの完全に近代化したモデルでも6千万円程度で、96式よりもお安いレベルの値段です。
無論エラント旧式で、砲塔の旋回は人力ですし、夜間暗視装置も不十分です。現実的にエラントを装備することには問題があるでしょう。
ですが、このような極端な例を挙げて比較してみると、機動戦闘車の必要性や優位性が果たして本当にあるのかということに疑問が出てくると思います。
はじめに機動戦闘車は正しいのだ、という「結論」を前提に議論をすることは不毛です。
実際のところ一桁安いこのような装甲車を採用し、ある程度の近代化を施しても、機動戦闘車を調達するよりもかなり安く上がります。浮いた予算でC4IRを強化するなどをしたほうがまともかもしれません。
因みに南アの76ミリ砲を装備したロイカットであれば105ミリ砲よりも副次被害を低減できますし、より多くの弾薬を携行できるので島嶼に持ち込んだ時も兵站面で有利でしょう。
ロイカット
正面装甲は23ミリ機関砲の徹甲弾に耐えられます。重量が28トンで恐らくはC-2では運べないでしょうが、どうせ機動戦闘車も舗装された2千メートル級滑走路が必要で、多くの南西諸島には空輸できず、沖縄本島や下地島あたりからフネやLCACで運ぶ必要があります。
であればロイカットでも大同小異です。
因みにロイカットも余剰品がモスボールされており、お値段は恐らく2~3億円程度でしょう。
本当に機動戦闘車が必要なのか、他にもっといいものはないのか。生産する前に納税者として熟考が必要です。
想定するゲリコマ対処、島嶼防衛に何が必要なのか考えてみるべきです。
新しいウェブニュースサイト、NEXT MADIA Japan In-Depthに寄稿しております
防衛省は自衛隊の戦力を過小に見せる世論操作をしている?〜知られていない『防衛大綱』の不正確な記述
http://japan-indepth.jp/?p=1748
民主主義・法治の危機〜国家安全保障会議(日本版NSC)と特定機密保護法は警察官僚に支配される(1/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1821
民主主義・法治の危機〜国家安全保障会議(日本版NSC)と特定機密保護法は警察官僚に支配される(2/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1824
防衛省・技術研究本部に実戦的な装備は開発できるのか①〜リモート・ウェポン・ステーションとは何か?
http://japan-indepth.jp/?p=1703
防衛省・技術研究本部に実戦的な装備は開発できるのか②〜必要な調達をする気のない自衛隊と必要ない装備を技術実証する技術研究本部の悪すぎる連携
http://japan-indepth.jp/?p=1720
防衛省・技術研究本部の海外視察費はわずか92万円〜写真やカタログだけで十分な開発ができるのか?(1/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1750
防衛省・技術研究本部の海外視察費はわずか92万円〜写真やカタログだけで十分な開発ができるのか?(2/2)
http://japan-indepth.jp/?p=1758
[仏パリ“ミリポール”リポート]防衛産業の輸出を阻害しているのは防衛産業を擁する大企業トップの無知蒙昧と保身
http://japan-indepth.jp/?p=1508
朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(上)――トルコの狙いは何か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013112500006.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?
アベノミクスで食材偽装が増える?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013111100009.html
機動戦闘車は必要か(上)――島嶼防衛にもゲリラ・コマンドウ対処にも不向き
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013103100010.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(中)――脆弱な防御力
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110100004.html?iref=webronza
この記事へのコメント
いつもブログを拝見し、勉強しております。
清谷先生、手のお怪我は大丈夫でしょうか?
お仕事頑張ってください。
応援しています。
規格外の車両(牽引系とか)を持つ部隊は普通に通行申請して通行の度に道路管理者に通報して通行していますよ。
なので2.5m制限はどちらかと言うと物理的制約を嫌っているのでは?と思います。
①予算(74式の砲弾とその生産ラインを使用する事によるコスト削減)
②射程(敵装甲戦闘車に対処するためには敵と同等またはそれ以上の距離を取る方が有利。装甲の薄さを射程である程度カバーする必要があるのでは?)
③威力(敵も同等程度の砲を搭載しているため、それ以下の砲を採用するのは自殺行為ではないかと…。加えて将来的に登場する可能性のある脅威にも対応できるよう、運用できる最大の砲を採用したという可能性も…。)
などが考えられないでしょうか?
また将来装輪戦闘車両の研究もされてるみたいですから迫撃砲搭載型も開発されるかも。都市部以外でも日本の長い海岸線をカバーするために、戦車砲を搭載し高い機動力を有した車両が必要と判断し、ある程度の車幅の拡大はやむなしと考えたのかも…。
僕も言ってましたし、他の方もそこそこ見ましたよ。
2.5mは住宅地での物理的制約ですし、普段の移動にも3mでは戦車と変わらんから、その分戦車を導入しろと。
諸島防衛にも、キドセンの重量で中多と普通科中隊を運んだ方が戦力として優れてる。