欧州への難民に日本は何かすべきか

 昨日帰国しました。シルバーウィーク中ということもあり、帰りもビジネスクラスにアップグレードされ快適でした。往復ともアップグレードで得した感じです。
 でもこれを自費で払うかというと、難しいですねえ。年に1回ぐらいならともかく、エコノミーあるいはプレミアムとの差額で、宿泊費やら各種経費プラスが出る上に、更にあれも買える、これも買えると計算するとするとダメですね。ビジネスクラスで毎回というのはかなり先の話になりそうです。

 帰国便で、ファーストクラスに認知科学者のT氏のお姿が。ひっつめ髪で、レザーパンツのいかにも怪しいおじさん的な姿でした。連れのアラサー前半と思われる女性は栗山千明をちょっとアジアっぽくした美人で、同じくレザーパンツとヒールの高いブーツをお召で同じテイストの方でした。奥様なのか秘書なのか存じませんが、羨ましい限りです。自分も頑張ろうと思いました。とりあえずレザーパンツをはいてみようかと(笑

 さて現地では連日、中東からの難民に関する報道がありました。日本のメディアでも大きく扱われておりますが、こういうことが起こると、日本も何かすべきだ、日本は難民に冷たいという人道派の主張がよく登場します。

 確かに決死の覚悟で難民となる人達には個人的な感情としては同情心もあるし、なんとかしてあげたいと思います。でも我が国が今回で何かすべきかというと、基本やるべきではないと思います。

 そもそも中東の不安定化を招いたのは、欧米の助平根性と傲慢人権意識です。
 彼らが責任をもって処理すべき問題です。他人にケツを拭かせるものではありません。

 いまさら帝国主義時代の植民地時代の責任を取れとは申しませんが、現在の中東の混乱を招いたのは明らかに欧米の不見識な干渉です。

 イラン・イラク戦争にしても欧米は両方に兵器を売りつけて大儲けしたわけです。そしてサダム・フセインを強大化させ、彼はクウェートに攻め込んで、湾岸戦争が勃発しました。
 ここでも軍事費やら資源やらの利権で大儲けをしました。しかも米国ではPR会社のイラク人が赤ん坊を殺しているというインチキ映像で民意を戦争に傾けました。旧ユーゴで同じような世論操作が行われ、セルビアが一方的な悪者にされ、それに乗せられた世論も政府を支持ました。

 その後ブッシュの息子がパパと同じように甘い汁をすおうと、難癖つけサダム・フセインを謀殺し、イラクが不安定化しました。この戦争とアフガンでの戦争には英国を始め欧州各国が協力しました。それは政治的、経済的に美味しいことを期待したからでしょう。
 
 そして欧米は独裁がイカンと、中東の民主化も煽りました。カダフィが殺され、ムバラク政権が倒れ、シリアでも反政府組織を焚き付けました。欧州の民衆も「中東の民主化」を是としました。

 ところがこの有様です。
 イスラム国ははびこり、各国は混乱と紛争が起きております。率直に申せば、現在の混乱に比べれば、サダム・フセインやアサド政権時代の方がはるかにまともでした。無論独裁による粛清や弾圧はありましたが、少なくとも秩序は保たれてた。

 思い起こせば60年代にアフリカ大陸で多くの国が独立しましたが、その後内戦に明け暮れてた国が如何に多かったことか。人間の社会は数学と違って、1+1=2ではなく、1+1=-1,000とかになったりします。
 植民地から開放されたり、人種差別が撤廃されたり、独裁が倒れれば自動的にバラ色の民主国家になるわけじゃありません。

 当然ながらアラブでは宗派や民族、部族対立が強いわけですから、欧米風の民主主義がすぐ根付くわけがない。ところがナイーブなリベララルな連中までが「アラブの民主化」を指示しました。これって、例えれば「頭がいたい?じゃ頭をとっちゃいましょう」みたいな話です。いうまでもありませんが、頭を取れば人間は死にます。


 たかだか半世紀前の60年代のアフリカで何が起こったかという教訓がまるで生きていないわけです。

 しかもそれだけ独裁や民衆弾圧がダメならなんで中国やら北朝鮮、湾岸産油国が許されるのでしょうか。

 また独裁後「民主的な選挙」を経てイスラム原理主義政権になった場合、それも認めないといけないことになります。それが気に食わないと、また欧米は内戦を誘導するのでしょうが。


 はっきり言えば、中東の混乱の原因は欧米の政治と産業界の利権漁りと、底の浅い世論のヒューマニズムが最大の原因です。中東で欧米が思うような民主的な政治が行われるは何十年、あるいはそれ以上の時間がかかるでしょう。それは気長に待つべきものでしょう。


 ですから、自分のケツは自分で拭けということです。

 どうしても我が国やらその他の国に助けて欲しいならば、自分たちの過ちを素直に認めて、お願いすべきです。ところが一般に、問題は普遍的な人道主義にすり替えられがちです。
 それは人類の問題ではなく、あんたがたが火遊びしたことが原因でしょう。

 彼らは、自分たちが悪いなって、これっぽっちも思っていません。そのような自分たちが正しい、欧米の常識、価値観は世界的に普遍であるとの思い上がりが、無意識に彼らにはあります。

 我々は彼らの主張から、そのことを割引いて物事の本質を見るべきです。

 無論、独裁や非人道的な行為は非難されるべきだし、またその解消に我々も努力をしないといけない。ですが、独裁者を倒せば自動的に平和と民主主義が手に入るわけでもないという現実があることを知るべきです。

 それには即効薬もないし、独裁でしか国家としての維持ができないところも多いことを知り、それは外科手術的なものではなく、漢方治療のような根気良い努力を行うべきです。



東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
陸自「攻撃ヘリ部隊」は、自滅の危機にある
オスプレイ大量調達の前に見直すべきこと
http://toyokeizai.net/articles/-/84832
エアバスは、なぜ日本政府に激怒しているのか
不透明すぎる日本の防衛調達の問題点
http://toyokeizai.net/articles/-/84639

東京防衛航空宇宙時評で軍事見本市、DSEIのレポートを掲載しています。
 http://www.tokyo-dar.com/

この記事へのコメント

わかば
2015年09月24日 17:16
きよたに先生
あなたの文章に、初めて全面的賛意を示します(レザーパンツのくだりは除く)
素朴な疑問
2015年09月24日 19:59
何で金持ちのサウジは関与しないの。難民だって同じイスラムのほうがいいでしょうが。欧米では誤って豚肉食ってしまう危険もあるのにね。
張子の虎にウンザリ
2015年09月24日 20:32
大規模破壊兵器を世界一使っているアメリカが、
大規模破壊兵器を持っているという濡れ衣でイラクを崩壊させる。
こんなの何度考えても笑えないコントです。

イギリスはアメリカに付いて戦い、冤罪に加担してしまいました。

日本が将来、愚かな政権の判断により、米国の暴挙に加担する事がないよう願います。

同盟は大事ですが、同盟国の間違いを判断できないと、イギリスの二の舞になってしまいます。
プラトーン
2015年09月24日 22:19
欧米諸国は、中東やアフリカに本当の平和が来るなんて本音では思ってませんよ。

混乱が続いてくれれば、自分達より発展することはない=自分達を脅かすことはない、とでも考えてるんですよ。

白人だけが人間であり、黒んぼやイエローモンキーは自分達より劣っているという思考から未だに抜け出せない。

ナチスの優生主義的な思考は、ドイツに限らず、白人国家共通のような気がしてなりません。
府中のふとん愛好家
2015年09月25日 00:13
レザーパンツは、オーダーしないと破れてしまう可能性があります。

私も本文中の下記の部分を特に強く思います。

“どうしても我が国やらその他の国に助けて欲しいならば、自分たちの過ちを素直に認めて、お願いすべきです。ところが一般に、問題は普遍的な人道主義にすり替えられがちです。
 それは人類の問題ではなく、あんたがたが火遊びしたことが原因でしょう。”

実際に難民受け入れの方向になってしまう前に議論をしておくべきなのでしょうが、議論に持って行くまでが難しそうです。

「郷に入っては郷に従え」という発想のなさそうな彼らを受け入れたとき、いまの日本社会で受け入れができるかといえば否です。私もその傾向を内包しているのを否定できませんが、多くの日本人は、難民を一枚下に見てしまいそうなので、その部分でも摩擦が起きそうです。
マリンロイヤル
2015年09月26日 09:25
ドイツが善人ヅラをするために人がたくさん死にました。初期の段階で、難民受け入れを断固拒否していれば、危険な海で遭難する人は少なくて済みました。
八王子の白豚
2015年09月26日 13:27
記事の通りですが、その土地の歴史とか民族の特性とかを軽視して自分たちの価値基準こそ永久不変の正義であるかのごとくに錯覚した欧米諸国の傲慢がシリア難民の現在の苦境をもたらしたのでしょうね。
その国にとってのベストな統治体制はその国の人たちに決めさせれば良い、これが民主主義ってもんでしょう。
他者がそこに口も手も出すのはそいつが民主主義をただの手段としてしか見てないからです。
我が国は人道にのっとって難民を受け入れるべきなのかもしれませんが、受け入れたことによって被るリスクを欧米諸国は担保してくれるのでしょうか?
まあ、無責任な独仏はもちろん、アメリカもそんなことはしないでしょうし出来ないでしょう。
ならば無理はすべきではないでしょうね。
ひゃっはー
2015年09月26日 16:38
「軍事研究」に書いてあったのですが、武力で民主主義を押し付ける、という非民主主義的な方法では民主主義というものは根付かないんですよ。
ということは、その土地に勝海舟や坂本龍馬や大隈重信のような人物が現れないとダメなんですね。
で、勝海舟のような人物を輩出するためには、子供に読み書きそろばんを習わせないとダメなんですよ。
すると子供に読み書きそろばんを習わせるためには、内戦を終結させて、インフラを整える必要があるんですよ。それから、開国をして海外との人・物・情報の交流を活発にする必要もあるでしょう。
そうやって、百年単位の時間をかけて民主主義化は達成されていくものなのです。仮面ライダーやプリキュアのように、「悪の独裁者」を倒せば民主主義国家ができ上がるわけではない。
ブロガー(志望)
2015年09月26日 20:27
お邪魔します。
 難民は「生存等が脅かされたため、やむなく国を出ざるを得なかった人達」です(行きたいから行くのは「移民」)。となればすべき事は「生存等を守る事」であり「故国への帰還が最終解決」のはずです。しかし「難民を自国の社会に入れ、自国民と共存させるか否か」にされている事に違和感を覚えます。身銭を切った挙句、「たかが金ごとき」とまで言われるのにも。欧州まで到達できるのはまだ恵まれた方で、トルコやヨルダンといった隣国に多くの難民がいるとも聞いています。となれば「遠く、かつ言語や習慣等が異なる異国へ連れていく」事がどの程度難民達のためになるのか考えねばならないと思います。その意味でエジプト大富豪の「ギリシャかイタリアの無人島を買って、そこに生活の場を作る」に興味があります。
ブロガー(志望)
2015年09月26日 20:37
続きです。

>独裁者を倒せば自動的に平和と民主主義が手に入るわけでもないという現実があることを知るべきです。

 ホッブスは『リヴァイアサン』で「限られた富を奪い合うから争いが絶えない。だから強大な権力が必要不可欠である。」といった事を書きました。それに対して「労働によって富は生み出せる」と言ったのがジョン・ロックです。しかし「行き渡るだけの十分な富が無い、生み出せない、(直接的な)暴力等に寄らない配分の仕組みがない」状態では、ホッブスの言う「万人の万人に対する闘争」に成らざるを得ないのではないかと思います。カリブの海賊が「殺人をも厭わる悪党ども」であっても、力の均衡と利害関係で「船長は投票、船長の取り分も平の3倍程度」と当時の堅気よりも近代的・民主的であったように。
レッド・バロン
2015年09月27日 10:14
そういや、シリア難民、その実、クルド難民の
「ターゲット」となっているドイツなんですが。

いつの間にやらドイツって北イラクのクルド人
勢力に軍事顧問団なんて送り込んでいたんですね。

http://www.einsatz.bundeswehr.de/portal/a/einsatzbw/!ut/p/c4/LYvBCsIwEET_KJuIVfRm6MWrB7W9yLZZymKalLi1UPx4E-gMDMw8BlrIDvjlAYVjQA9PaHo-d4vqFkcv4vBBWXPFt8zk_TaRrASPcnak-hhISgoF4ZxDQolJTTGJL2ROKRPFDhptamuOe73J_E731lYHXe3qq73BNI6XP1JT580!/

ドイツ連邦軍HP

私もブログ主さん同様、今更、帝国主義のツケを
払え・・なんて極端な話をするつもりはないのですけど、こんな余計なちょっかいを出してたら、そりゃ何かしらのリスクがあって当たり前ですよね。

それにしても、軍事顧問団派遣ねぇ・・。
戦後のドイツには日本に見られるような軍事とか軍隊へのアレルギー、忌避反応はないんでしょうか?

ナチス絡みのタブーはあれだけあるのに軍や軍事に対するタブーはまるでなさそうにみえるのが個人的に不思議なのです。

確か2011年までドイツには徴兵制が存在したと思いましたし、現在、ドイツは米露につぐ世界トップクラスの武器輸出国でもありますよね?
これらに関してドイツ国民は何とも思っていないんでしょうか?社会民主党など左派政党、勢力から反対や異議申し立ての動きはなかったんでしょうかね??

軍事顧問団派遣・・なんて日本の反安保の闘士たちが聞いたら目を回しそうな話ですが。
ひゃっはー
2015年09月27日 20:29
レッド・バロン様へ
ロシアはシリア政府軍にT-90を7両、火砲、輸送機、海軍歩兵200名を送り込み、アメリカ中心の有志連合はシリア反体制派に武器を供与して訓練を施し、ドイツはクルド人に軍事顧問団を送り込んでいるわけですか。アサド大統領は自国の内戦について「欧州にこそ責任がある」などと批判しましたが、そういう部分が無いとは言えない。
まあ、日本も幕末の時代は長州がイギリスから武器を購入して、幕府はフランスから軍事顧問団を受け入れていましたから、欧州諸国が特に悪どいとまでは言えないのかもしれませんが。
八王子の白豚
2015年09月29日 12:20
レッド・バロンさん

ドイツ人は昔も今も二重基準を何の臆面も無く使い分けられる民族です。
第2次大戦とユダヤ虐殺をヒトラーとナチスのせいにして特段謝罪などをしてないのはご存知だと思いますし、戦前に日本と外交的に接近しておきながら蒋介石の国民党に軍事顧問団を派遣して大量のドイツ製兵器を売り込んでいました。上海事変で海軍陸戦隊が壊滅寸前まで追い込まれたのはそのためです。
そういえば南京事件の有名な証言者ラーベもドイツ人でしたね、兵器取引の仲介人だったそうですが・・・
いずれにしても個人としてのドイツ人は別に信じても良いのでしょうけど、集団としてのドイツ人は絶対に信じてはいけない相手だと思いますよ?(フォルクスワーゲンの件でも明らかですし・・・)

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