防衛省、自衛隊、業界、政治に防衛装備改革をやる気はない。

自衛隊機の部品代「言い値」で調達か? 価格高騰最大6年で10倍に チェック部門なく「民間ならあり得ない」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/144442

>自衛隊の航空機とヘリコプターのうち国産6機種の部品価格が量産開始からの6~12年で最大10倍超に上昇していたことが、財務省の調べで分かった。
>防衛省側は契約担当者ら一部を除き実態を把握しておらず、値上げの妥当性を巡る十分な検証を行わないまま支払いに応じていた可能性がある。岸田政権は防衛費の大幅な増額を目指すが、コスト意識が低いままでは予算の無駄遣いを助長しかねない。

>海上自衛隊のP1哨戒機は油圧系統部品が数百万円(2008年度)から数千万円(20年度)に約4.4倍上昇。陸海空の各自衛隊に配備されているヘリコプターは、尾翼関連部品の20年度の単価が14年度比で約10.2倍に膨らんだ。


>原因としては、機種本体が国産でも部品の多くは輸入に頼っているため、為替変動の影響を受けやすいことが挙げられる。防衛装備品は部品も独自仕様になりがちで、汎用品のように価格競争を通じたコスト抑制が難しい側面もあるというのが防衛省側の言い分だ。


>分科会の臨時委員を務めるSMBC日興証券の末沢豪謙氏は、取材に「日本は(価格の妥当性を)チェックする専門部署がないから『言い値』で調達することになってしまう。民間ならあり得ない方法で、相当割高になっている可能性がある」と指摘。



元ネタは財務省の財政制度等審議会の資料です。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20211105zaiseia.html

例年はあまり注目されず、メディアにほとんど取り上げられないのですが、今年は自民党が防衛費GDP2パーセントに増額という公約を掲げたことと、記事にあるようなコンポーネントが10倍に値上がり、のような目を引く項目があったからでしょうが、大手メディアが続けて報じています。ただ調達コストだけに目が行って、その他の項目を大手メディア、記者クラブメディアが殆ど報じていないことです。
財務省はこの件で、記者クラブに限らず広くメディアやフリーランスに対して説明会を開くべきです。どうせ防衛省担当の記者クラブ記者なんて殆ど興味も知識もないのですから。

また本来このような報告書は防衛省が自ら行い、開示すべきものです。都合悪い情報は「軍機である、政治家民間人は知る必要なし」みたいな寝言をいっているので、いつまで立っても自浄能力が身につかない。いっそ軍隊方がマシでしょう。なまじ自衛隊なんぞという胡乱な組織にしているから民主国家の軍隊が当たり前に開示している情報を開示できない。
むしろ共産国に近いです。それを恥とも思っていないわけですから病は深いわけです。

P-1、C-2はコンポーネントの共有化によって値段を下げると言っていましたが、蓋をあけたがそんな都合いいことはできず、共用化比率はどんどん下がって行きました。一例を上げるならばKYB社の油圧装置です。当初は両機とも同じのものを採用するはずでしたが、別々に開発することになりました。当然開発費もコストも上がっています。
事実上両機とも開発費も調達コストも高騰しました。

それを防衛省は何ら説明していない。バックレて黙り込んでいる。
これは納税者や国会に嘘をついているのと同じです。


さてこの記事でも根本的な原因について触れられていません。
もう飽きるくらい指摘しておりますが、自衛隊の装備はその多くが、何をどのような構想で使用され、いつまでにいくつ調達、戦力化し、その総額はいくらかという計画を公表していません。
予算を審議する国会も知らされていません。

防衛に強い議員でも例えば20式小銃や16式機動戦闘車がいくつ調達され、それがいつまでに調達が完了し、戦力化されて、その総額はいくらかということを知りません。ですが、それでも国会で予算が通ります。

これは普通の国家ではありえない話です。民間企業で言えば大型の設備投資です。新工場を建設するのに、工場の規模も、いつまでに稼働するのか、その予算はいくらかも知らずに役員会がプロジェクトをOKするようなものです。

ここに最大の問題点があります。これは輸入品でも同じですが、普通に考えればメーカー、商社が事業計画を立てられません。つまり大人の仕事ではない、ということです。

調達完了という「締切」がないので、ダラダラとジジィの小便みたいにチョロチョロでては止まり、を繰り返します。コストが高騰するのは当たり前です。そのコストに利潤を上乗せするのだからコスト削減は無理に決まっています。

例えば5年で調達するのか30年で調達するのかではラインの維持費も人件費も6倍です。防衛省側の調達人員も同じく多くかかります。それでも30年と決まっていればいいのですが、それすら決まっていない。ゴールが分からないマラソンのようなものです。

特に輸入品は問題です。自衛隊はクズなので決断ができず、調達決定までにものすごく年月がかかります。そして海外メーカーの生産が終盤に入った頃に、ぼちぼち調達を開始します。生産数が減った時期の少数調達ですから当然価格は高くなります。そして商社の手間もかかります。端的に申せば輸入コストは千個でも1個でもたいして変わりません。人件費も同じです。

そしてメーカーが生産終了を決定しても、まとめ買いもしません。それでダラダラと自衛隊分だけお願いすればコストが高くなるのは当たり前の話です。
陸自のOH-1の調達が中止になったのは「純国産」といっていた同機は実は多くのコンポーネントを海外メーカーに頼っていた。ところが、調達数が少なく、単年度主義で、今年は発注ありません、とか国内メーカーと同じ調子でやっていたので海外メーカーから「ふざけるんじゃねえ、こんなものは商売じゃねえ」と三行半を叩きつけられて供給を断られたことが最大の要因でした。

本来防衛装備工業会など関連団体が提言をすべですがしません。やる気が無いんでしょう。
経団連の提言はトンチンカンで明後日の方を向いています。


防衛省、自衛隊は「発注してやっている」という意識ですから、自分を省みることはない。海外メーカー、商社からみれば頭のおかしい、手間ばかりかかる、みみっちい貧乏人相手のクズ仕事ですから、プレミアム乗っけて当たり前です。


防衛省や自衛隊の人間は、海外製品は実は高い、信用できない、といいますが、それは違います。防衛省や自衛隊に常識がないだけです。その自覚すらないわけですから、外国のメーカーから見れば精神がおかしい連中と商売はできないと言われても理解ができないわけです。

これを政治が放置しているとも問題ですが、記者クラブが専門記者を取材機会から排除しているのも問題です。彼らは専門知識がないし、誰とは言いませんが、長くいても防衛省の足を引っ張って因縁つけるだけの記者とかばかりです。
まともに防衛予算の使いみちを考える気はサラサラ無い。特に政治部の記者はそうです。

調達計画が国会はもちろん、納税者に明らかにされないのは民主国家の軍隊としては極めて異常です。

防衛省や自衛隊は改革をするふりをしているだけです。その気は全くありません。
例えるならば川の源流の水源近くでうんこをしているやつを放置しておいて、下流で一生懸命川をきれいにするふりだけしているようなものです。
必要なのは水源でうんこしているやつの排除ですが、それは防衛省や自衛隊の利権なので排除しない。だから川下で川をさらって「やったフリ」をしているだけです。

当然ながら改革志向の人間は徹底して排除されます。何年も地方に飛ばされたりします。
政治家も無関心です。ぼくは河野太郎氏が防衛大臣当時具体名をあげて申し上げたのですが、彼は興味を示しもしませんでした。

当然ながら防衛装備庁が機能するわけもなく、いたずらに幕僚監部と反目して、装備調達を迷走させているだけです。


この件は記者クラブメディアにでも、これもお国のためと思ってレクチャーして差しあげますから、興味がある奇特な記者はコンタクトください。防衛省で装備絡みのスキャンダルがあったときだけぼくに話を聞きにくるのはいかがなものかと思います。

この記事へのコメント

ミスターフリゲート
2021年11月24日 15:36
>防衛省、自衛隊、業界、政治に防衛装備改革をやる気はない。
防衛省、自衛隊、業界、政治に防衛装備改革「の」やる気はない。の間違いではないでしょうか。

まあ装備調達の話はもう耳にタコができるくらい聞いてきましたね。
Goodman80
2021年11月24日 15:49
陸自の無人偵察機、訓練飛行中に行方不明…旧種子島空港の南東で通信途絶
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211124-OYT1T50146/
7年以上前から試験運用して6年前にも事故を起こし(しかも発表もせず)、最近やっと部隊運用を始めたら、この体たらく。陸自にはこの程度のUAVでさえ過剰品質で猫に小判なんでしょう。まあ、陸自はこの程度(ペイロード:3.4kg)のUAVでも「UAV(中域用)」と呼んでいる様なので海外とは時代がずれているのでしょう。
キヨタニ
2021年11月24日 17:05
ご指摘ありがとうございます。

>ミスターフリゲートさん
>
>>防衛省、自衛隊、業界、政治に防衛装備改革をやる気はない。
>防衛省、自衛隊、業界、政治に防衛装備改革「の」やる気はない。の間違いではないでしょうか。
>
>まあ装備調達の話はもう耳にタコができるくらい聞いてきましたね。
>
19190213
2021年11月24日 18:57
公務員ですから、体質を考えれば当然かと思います。
個人的には小さい単位・・部隊単位で取り組んだ方が巧くいく傾向が強いなとは思います。
大きくなればなるほどに政治的になり(政治家ではなくて部内の)本来の目的が手段になり己の利益の為になりがちです。

ただ一国の組織としては、中央が統制し装備編成を決めるというのは効率的で当たり前の話なので、それが最適な形で出来るようになれば良いですよね。
とは言えども、草刈り駆け足訓練が彼らの仕事なので純粋に最新装備なんて勿体ないかもしれません。
実銃を木銃に変えて防衛は外国にアウトソーシングしている現状では強い装備よりも安価なものの方が最適なのかもしれませんね。
そう考えれば、中露韓も含めて安かろうで購入するのもありかもしれませんね。
どうせ戦わないのですから。20式小銃も20式木銃に変えるのが良いかもしれません。
個人的には20式木銃には草刈り機能が必要だと思います。
やれやれ
2021年11月24日 19:40
「陸自のOH-1の調達が中止になったのは「純国産」といっていた同機は実は多くのコンポーネントを海外メーカーに頼っていた。」
だから部品が入手できなくなったと大っぴらに宣伝しないと駄目でしょうね。C2,P1で同じことが起これば否応なく異常性に気づくと思いますが、ネトウヨ、酷使様は補正がかかって全て良い方向に解釈するんでしょうね...

「必要なのは水源でうんこしているやつの排除ですが、それは防衛省や自衛隊の利権なので排除しない。」
下流に汚水処理場を作るしかないかも知れないですね。
財務省がそれっぽいことをしてくれていますが、如何せん川がウンコ色で臭いとあっては処理が追いつきません...

「防衛省、自衛隊は「発注してやっている」という意識ですから、自分を省みることはない。」
この様な顧客は余程散財してくれないと相手もしたくない最悪の客ですが、それで美味しい思いをする会社(いや個人かも?)があるからつけあがるんでしょうね。
普通なら干されて己を知るのでしょうが、国内の防衛産業が壊滅するまで気づかないのでしょうか。

「防衛省で装備絡みのスキャンダルがあったときだけぼくに話を聞きにくるのはいかがなものかと思います。」
彼らにプライドは無いのでしょうね。取材する気がまるで無い。そういうチャンネルも無いのでしょう。大本営発表に勤しんだ結果といいましょうか。
ぬこちん
2021年11月24日 20:34
川の源流の例えはわかりやすく笑えました。
KU
2021年11月25日 13:36
>三菱重工はインドネシアへ護衛艦を輸出しないで!12.3東京本社申し入れ&アピールへ

https://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-12712126703.html

護衛艦はダメでも巡視船なら良いの?あれだって機関銃やら機関砲をバカスカ撃てるけどw。だいたい、売れる保証はどこにも無いのに。どうせフランスか中国辺りにかっさらわれて終わりでしょうよ。

>自衛隊が「離島奪還」訓練 水陸両用車で上陸 鹿児島・種子島

https://www.mbc.co.jp/news/article/2021112500052993.html

このビーチだから出来る芸当なんでしょうね...。そもそも今時、こんなオーソドックスな上陸作戦を行う軍隊なんて、そうそう無いですよね?

>鹿児島・鹿屋市 海上自衛隊鹿屋航空基地 米軍ミサイル部隊が参加して訓練

https://www.kts-tv.co.jp/news/8491/

あんなベンツな練習ヘリが写っていますね。一時期は稼働率3割だなんて、あり得ない数字を叩き出していた機体ですけど(^_^;)。さすがに多少は改善されましたかね?最も今では、乗せるべき訓練生を確保出来るどうかを心配しなきゃですが。
KU
2021年11月25日 13:55
与党も野党もメディアも知らぬ存ぜぬorz。何か起これば鬼の首でも取ったかのように大騒ぎ。いつまで、こんな茶番が繰り返されるのやら。

>三菱重工、次期戦闘機デジタルモックアップ全貌は5年以内に

https://www.jwing.net/news/45560

美味しい所はLMとかに軒並み、持っていかれるんでせうね...。あと、運用開始後にどこかを変更しますなんて話ですが、いまでもイーグルの改修1つ取ってもグダグダなのに、まともな予算が確保出来るのか?

>>>改革志向の人間は徹底して排除

あんな汎用ヘリは民間でも売れる機体にしたい!と話していたら、南関東防衛局長に左遷された某部長さんとかですか?
Goodman80
2021年11月25日 14:25
PL-15との交戦範囲ギャップを埋める米国のAIM-260、実用化に向け順調にテストを消化中
https://grandfleet.info/us-related/u-s-aim-260-closing-the-gap-in-the-range-of-engagement-with-p-15-steadily-digesting-tests-for-practical-use/
長射程AAMが狙うのは後方をのんびり飛んでるAWACSだから、空自は旧世代機のE-767の更新が急務。RCS値が低い戦闘機には使いにくいし、ましてステルス機には無用の長物。確かレーダー装置は随分前から地上で試験していたはずだが、無理だったのなら諦めてE-7等の購入を早急に行こなわなければ。F-3の開発などやってる場合ではない。F-15Jの改修も止めて、F-35Aの調達は60機程度に減らし、F-15X、F-16Vの調達を早急に行い使える機体数を確保する必要が有る。練習機も汎用性の高い物に変更すべきだろう。高等練習機は軽戦闘機、初・中等練習機はCOIN機等に使える物にすべき。
Goodman80
2021年11月25日 14:42
「いじめられていた」愛知の中学生刺殺事件で逮捕の男子生徒
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4412885.html
確か4人殺害した容疑者が精神疾患で無罪判決になった例があった。イジメ、パワハラを受けた人間は精神に異常な状態になる可能性が高いから、この様な事例は基本的に無罪にすればイジメやパワハラも減るだろう。学校側や教育委員会、PTA等も少しは真剣に考えるようになるだろう。イジメは生徒間だけで行われるものでは無いのだから。会社や官庁(自衛隊も勿論含む)も同様に。
Goodman80
2021年11月26日 11:12
北海道は「中国の32番目の省」になってしまうのか?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67830
国土交通省と北海道開発局が主導して、国土の切売りを図っている模様です。本当に奴らはバカなんですかね?
もしかして購入させるだけさせといて、国際上の定義を盾にして中国人の土地の所有権を全て取り上げる、思慮遠望な計画なのかもしれません。そういえば駅前のマンションも、新築住宅の購入者も中国人が多いような気が。
偽陸士
2021年11月26日 15:40
Goodman80様。

>もしかして購入させるだけさせといて、国際上の定義を盾にして中国人の土地の所有権を全て取り上げる、思慮遠望な計画なのかもしれません。そういえば駅前のマンションも、新築住宅の購入者も中国人が多いような気が。

これは土地取引規制よりも、治山治水、水利権、水道事業運営の問題かと。

地域住民が不当な負担で水道サービスを受けたり、農業用水を使えなくなる事態だけは避けるべきです。
また中国人が新参者だからといって、土地の購入を認めないのもどうかと。
ただ水の独占は中国だろうと、欧米資本だろうと許してはいけません。

問題のツボはそこかと。

ただ中国人達が原野商法に引っ掛かるとも思えませんが、バブルに踊らされている可能性はあります。

この記事へのトラックバック