令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む その6
財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
新たな装備品・運⽤法導⼊に当たって(P18)

○ 過去のイージス艦導⼊に当たっては、その⽬的に係る複数の選択肢を提⽰し、経費効率を含めた研究とその情報公開を⾏うことで、国⺠の理解形成に尽⼒。
○ 特に、⻑期間に渡って、多額の開発・運⽤コストが⽣じかねない「次期戦闘機」やいわゆる「敵基地攻撃能⼒」については、限られた資源のもとでいかに優れた防衛態勢を実現するのか、被我のコスト負担のバランスはどうあるべきなのかといった点を含めて多⾯的に検証し、防衛⼒を強化していく上で、国⺠に対する説明責任を果たすべきではないか。
これは極めてまともなことしか書いていません。でも安倍晋三とか自民国防部会とか、頭の悪い軍ヲタさんたちは、「国防でコスパとかいうな」とか言うわけです。
当然ながら、無限に防衛予算を増やすことはできません。
次期戦闘機にして敵基地攻撃にしても、その開発能力や費用対効果、コスト低減の方法な、そして他の何を諦めて予算を捻出するか納税者に明らかにすべきです。
イージス艦導⼊時の検討状況
【昭和61年5⽉】 防空体制研究会を発⾜
⇒ イージスシステムの導⼊が防空体制に最適との結論
【昭和62年12⽉】 国家安全保障会議にて了承
検討に際しては、対空能⼒の向上という⽬的を設定し、
① 既存護衛艦の改良型(2隻)とする場合
② 既存護衛艦(1隻)&イージス艦(1隻)の組み合わせ
③ イージス艦(2隻)とする場合
に分け、既存アセットの活⽤含めた「経費効率」を研究
実はイージス艦導入時に米国側はソフトウェアを隻数分要求しました。対して海幕の担当部署は論拠を出して、かなりの値引きに成功しました。ところこれはかなり担当者の属人的な能力に頼っていたようで、その後は海幕も多くのFMS調達は言いなりです。
まともに専門を勉強して、交渉力がないと価格交渉はできません。そのような人材の育成を防衛省は軽視してきて、組織的に行わず、改革を提唱するものを排除してきました。
いわゆる「敵基地攻撃能⼒」の検討を例にした場合の⽰唆
複数ケースに分けた形での費⽤対効果等の研究が不可⽋ではないか。(イージス艦導⼊時と同様の⼿法)
研究に当たっては、既存アセットのみならず、今後予定されているアセットも含めた検討が必要ではないか。
これらの検討を⾏った結果として、費⽤対効果等の観点から、既存または今後予定されているアセットの「調達の⾒直し」も⾏うべきではないか。
なお、検討に際しては、こうした情報をオープンにした上で、国⺠的議論を⾏うことが必要。
最後の「こうした情報をオープンにした上で、国⺠的議論を⾏うことが必要」は議論の基本です。ところがアショアにしろ、グローバルホークにしろ、「敵に手の内はさらさない」と強弁mして、民主国家では常識レベルの情報公開すら拒んできたのが防衛省、自衛隊です。
我が国の防衛に関する情報開示は民主国家のそれではなく、北朝鮮や中共、ジンバブエ、ロシアあたりに近いです。
率直に申し上げて防衛省、自衛隊に当事者能力が無いわけですから、イスラエルあたりの防衛コンサルに丸投げして装備庁長官と幕僚長がめくら判押すほうが、税金の使い方としてはコストパフォーマンスがよろしいのではないでしょうか。
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
財務省が戦車の有益性を辛辣に指摘した真の意味
現実を直視した「真に有効な防衛力」の議論が必要だ
https://toyokeizai.net/articles/-/587274
apan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
新たな装備品・運⽤法導⼊に当たって(P18)

○ 過去のイージス艦導⼊に当たっては、その⽬的に係る複数の選択肢を提⽰し、経費効率を含めた研究とその情報公開を⾏うことで、国⺠の理解形成に尽⼒。
○ 特に、⻑期間に渡って、多額の開発・運⽤コストが⽣じかねない「次期戦闘機」やいわゆる「敵基地攻撃能⼒」については、限られた資源のもとでいかに優れた防衛態勢を実現するのか、被我のコスト負担のバランスはどうあるべきなのかといった点を含めて多⾯的に検証し、防衛⼒を強化していく上で、国⺠に対する説明責任を果たすべきではないか。
これは極めてまともなことしか書いていません。でも安倍晋三とか自民国防部会とか、頭の悪い軍ヲタさんたちは、「国防でコスパとかいうな」とか言うわけです。
当然ながら、無限に防衛予算を増やすことはできません。
次期戦闘機にして敵基地攻撃にしても、その開発能力や費用対効果、コスト低減の方法な、そして他の何を諦めて予算を捻出するか納税者に明らかにすべきです。
イージス艦導⼊時の検討状況
【昭和61年5⽉】 防空体制研究会を発⾜
⇒ イージスシステムの導⼊が防空体制に最適との結論
【昭和62年12⽉】 国家安全保障会議にて了承
検討に際しては、対空能⼒の向上という⽬的を設定し、
① 既存護衛艦の改良型(2隻)とする場合
② 既存護衛艦(1隻)&イージス艦(1隻)の組み合わせ
③ イージス艦(2隻)とする場合
に分け、既存アセットの活⽤含めた「経費効率」を研究
実はイージス艦導入時に米国側はソフトウェアを隻数分要求しました。対して海幕の担当部署は論拠を出して、かなりの値引きに成功しました。ところこれはかなり担当者の属人的な能力に頼っていたようで、その後は海幕も多くのFMS調達は言いなりです。
まともに専門を勉強して、交渉力がないと価格交渉はできません。そのような人材の育成を防衛省は軽視してきて、組織的に行わず、改革を提唱するものを排除してきました。
いわゆる「敵基地攻撃能⼒」の検討を例にした場合の⽰唆




最後の「こうした情報をオープンにした上で、国⺠的議論を⾏うことが必要」は議論の基本です。ところがアショアにしろ、グローバルホークにしろ、「敵に手の内はさらさない」と強弁mして、民主国家では常識レベルの情報公開すら拒んできたのが防衛省、自衛隊です。
我が国の防衛に関する情報開示は民主国家のそれではなく、北朝鮮や中共、ジンバブエ、ロシアあたりに近いです。
率直に申し上げて防衛省、自衛隊に当事者能力が無いわけですから、イスラエルあたりの防衛コンサルに丸投げして装備庁長官と幕僚長がめくら判押すほうが、税金の使い方としてはコストパフォーマンスがよろしいのではないでしょうか。
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
財務省が戦車の有益性を辛辣に指摘した真の意味
現実を直視した「真に有効な防衛力」の議論が必要だ
https://toyokeizai.net/articles/-/587274
apan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134
この記事へのコメント
意外と海自は調達は上手い方だと思いますね。ciwsやエンジンは海外製だったり、それなりに妥協してますね。でもときどきp-1みたいになってしまうことも。ただp-1は性能的には申し分ないのが救いかと。
>最後の「こうした情報をオープンにした上で、国⺠的議論を⾏うことが必要」は議論の基本です。ところがアショアにしろ、グローバルホークにしろ、「敵に手の内はさらさない」と強弁mして、民主国家では常識レベルの情報公開すら拒んできたのが防衛省、自衛隊です。
スパイに情報を盗まれることを恐れるあまり、国民に情報を出すことまでやらなくなってしまうとは、なんとも皮肉
>率直に申し上げて防衛省、自衛隊に当事者能力が無いわけですから、イスラエルあたりの防衛コンサルに丸投げして装備庁長官と幕僚長がめくら判押すほうが、税金の使い方としてはコストパフォーマンスがよろしいのではないでしょうか。
イスラエルがやってくれるものなのか。最低でも自分たちだけで賢い買い物ができるように改善してもらいたいもの
https://friday.kodansha.co.jp/article/242797
菊池さんは実態を知っていながらかなりマイルドな書き方になっていますね。
ご参考までに。