令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む 参考資料編その4
財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「参考資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
研究開発費の投資対効果︓⺠⽣市場への技術のスピンオフ(P8)

○ 国内の⺠⽣市場への技術のスピンオフについて、その実績等を確認。
○ 防衛省の研究開発事業は、新たな領域に関する技術や最先端技術分野に投資をしているものの、「防衛⽤途に特化」する傾向にあり、防衛技術の⺠⽣への転⽤は、実績上も限定。現在は、むしろ⺠⽣技術からの転⽤を推進。
○ また、経済安全保障の観点から、機微技術の情報保全に向けた取組も進んでいる中、防衛等の⽤途で研究開発した重要技術を⺠⽣へ転⽤することは、現状より限定的となるのではないか。
防衛省にも業界にも防衛産業を「産業」と認識していません。まるで行政機関内で完結する仕事であるかのような感じです。
前回ご案内の通りです。
>技本の担当がネットで見て参考にした写真というのはぼくもご本人に確認しました
https://kiyotani.seesaa.net/article/201403article_13.html
日本の防衛装備が中国に後れを取る根本的背景
https://toyokeizai.net/articles/-/274368?page=2
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
つまり、防衛省から仕事を受ければ、それで終了。それを将来の収益に役立てる気はありませんし、能力もありません。民間企業失格です。
例えばヘリ産業。メーカー3社エンジン2社がほぼ防衛省にぶら下がって寄生しています。それが何十年も続いています。まるで50ズラ下げて親に喰わせてもらっているニート「子供部屋おじさん」そのものです。
本来ヘリは軍事以外の市場が内外で広く、日本は世界有数のヘリ市場を持っています。にもかかわらず、顧客はBK117を除けば、全部防衛省だけ。民間は勿論、警察、海保、消防、自治体などすべて外国製ヘリを採用しています。
それはメーカーにやる気がなく、性能、品質、コストで世界に太刀打ちできる製品が開発できないからです。そのようなヘリを防衛予算という税金で、諸外国の何倍も高い値段で買い支えてメーカーを喰わせています。
そしてそれが将来内外の市場で食っていけるまともなメーカーになることは絶望的でしょう。この期に及んでも、メーカーの統合すらできないのは官民共に当事者意識と能力が欠落しているからです。
最後のチャンスは先の陸自のUHXでした。これで川重エアバス共同開発案が採用さされば、スバルは自動的にヘリメーカーから脱落、BK117に次ぐ世界市場で売れるヘリの開発になるはずでした。ところが川重が慢心してまともにプレゼンもやらなかった。この件で川重とエアバスの関係は冷え切りました。更に申せば、安倍政権がオスプレイ導入のために、安かろうかろうでもいいと内局に圧力を掛けました。
結果スバルは旧式のB412の改良型、その改良も全部ベルに丸投げで、世界で殆ど売れる見込みもないUH-2が採用されました。これで事実上日本のヘリ産業の可能性は断たれました。
にも関わらず、未だに何倍も高い値段で国産ヘリを調達するのは納税者に対する背信行為です。
MRJにしても防衛需要で培った高い技術も持ってすれば容易に旅客機なんぞ作れるとおもっていたわけですが、結果はあのざまです。
ゴム製履帯も壁面透過レーダーもそうですが、防衛省需要で培った技術を民間に転用したり、輸出をしたりして事業の層を厚くすれば会社としても利益があがります。無論そこにはリスクがあるわけですが、民間企業なら取って当たり前のリスクを嫌って、ひたすら「子供部屋おじさん防衛産業」を決め込んでいるわけです。
こういう事業は潰すほうが国益です。
<防衛技術の⺠⽣への転⽤実績>
F-2戦闘機(1995年初⾶⾏) P-1哨戒機⽤F7エンジン(2010年設計完了)
※ ⺠間転⽤契約の実績は、P-1哨戒機⽤F7エンジンに係るもの(2016年)に限られる。
「現在は、むしろ⺠⽣技術からの転⽤を推進」
P-1のエンジンにしてもそうです。これをてこに、世界のエンジン市場にIHIとしての乗り込んで一定市場を取るという野望も希望もありません。単にP-1の開発と生産で防衛省の予算を食いつぶせばそれで終わりです。世界市場に進出するならばリスクもコストもかかりますが、防衛需要で寄生しているだけならばリスクなく、利益は確実に確保できます。後は今まで通り外国企業の下請けをしていればいい。
こういう後ろ向きな企業が、先端的な戦闘機用エンジンを自主開発できるわけがない。
<機微技術の管理に向けた動向>
○ デュアルユース技術等の懸念国等への流出を防⽌するため、政府全体としての取組を強化。
○ 現在、経済安全保障法制で「機微技術の流出防⽌」等に向けた議論が⾏われており、防衛関連の技術は厳格な管理対象になる⾒込み。
実際の話、そんな盗まれる高度な技術が防衛産業にあるのか大変疑問です。
三菱電機など大手でも、サイバーセキュリティには無頓着です。実際にハッカーに侵入させてみて、その穴を塞ぐというようなサービスもあるのですが、「うちの会社」は大丈夫といってやらないところも多いわけです。根拠ない自信を持っている会社は情報の保全、技術の保全にもたいてい甘い傾向にあります。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「参考資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
研究開発費の投資対効果︓⺠⽣市場への技術のスピンオフ(P8)

○ 国内の⺠⽣市場への技術のスピンオフについて、その実績等を確認。
○ 防衛省の研究開発事業は、新たな領域に関する技術や最先端技術分野に投資をしているものの、「防衛⽤途に特化」する傾向にあり、防衛技術の⺠⽣への転⽤は、実績上も限定。現在は、むしろ⺠⽣技術からの転⽤を推進。
○ また、経済安全保障の観点から、機微技術の情報保全に向けた取組も進んでいる中、防衛等の⽤途で研究開発した重要技術を⺠⽣へ転⽤することは、現状より限定的となるのではないか。
防衛省にも業界にも防衛産業を「産業」と認識していません。まるで行政機関内で完結する仕事であるかのような感じです。
前回ご案内の通りです。
>技本の担当がネットで見て参考にした写真というのはぼくもご本人に確認しました
https://kiyotani.seesaa.net/article/201403article_13.html
日本の防衛装備が中国に後れを取る根本的背景
https://toyokeizai.net/articles/-/274368?page=2
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
つまり、防衛省から仕事を受ければ、それで終了。それを将来の収益に役立てる気はありませんし、能力もありません。民間企業失格です。
例えばヘリ産業。メーカー3社エンジン2社がほぼ防衛省にぶら下がって寄生しています。それが何十年も続いています。まるで50ズラ下げて親に喰わせてもらっているニート「子供部屋おじさん」そのものです。
本来ヘリは軍事以外の市場が内外で広く、日本は世界有数のヘリ市場を持っています。にもかかわらず、顧客はBK117を除けば、全部防衛省だけ。民間は勿論、警察、海保、消防、自治体などすべて外国製ヘリを採用しています。
それはメーカーにやる気がなく、性能、品質、コストで世界に太刀打ちできる製品が開発できないからです。そのようなヘリを防衛予算という税金で、諸外国の何倍も高い値段で買い支えてメーカーを喰わせています。
そしてそれが将来内外の市場で食っていけるまともなメーカーになることは絶望的でしょう。この期に及んでも、メーカーの統合すらできないのは官民共に当事者意識と能力が欠落しているからです。
最後のチャンスは先の陸自のUHXでした。これで川重エアバス共同開発案が採用さされば、スバルは自動的にヘリメーカーから脱落、BK117に次ぐ世界市場で売れるヘリの開発になるはずでした。ところが川重が慢心してまともにプレゼンもやらなかった。この件で川重とエアバスの関係は冷え切りました。更に申せば、安倍政権がオスプレイ導入のために、安かろうかろうでもいいと内局に圧力を掛けました。
結果スバルは旧式のB412の改良型、その改良も全部ベルに丸投げで、世界で殆ど売れる見込みもないUH-2が採用されました。これで事実上日本のヘリ産業の可能性は断たれました。
にも関わらず、未だに何倍も高い値段で国産ヘリを調達するのは納税者に対する背信行為です。
MRJにしても防衛需要で培った高い技術も持ってすれば容易に旅客機なんぞ作れるとおもっていたわけですが、結果はあのざまです。
ゴム製履帯も壁面透過レーダーもそうですが、防衛省需要で培った技術を民間に転用したり、輸出をしたりして事業の層を厚くすれば会社としても利益があがります。無論そこにはリスクがあるわけですが、民間企業なら取って当たり前のリスクを嫌って、ひたすら「子供部屋おじさん防衛産業」を決め込んでいるわけです。
こういう事業は潰すほうが国益です。
<防衛技術の⺠⽣への転⽤実績>
F-2戦闘機(1995年初⾶⾏) P-1哨戒機⽤F7エンジン(2010年設計完了)
※ ⺠間転⽤契約の実績は、P-1哨戒機⽤F7エンジンに係るもの(2016年)に限られる。
「現在は、むしろ⺠⽣技術からの転⽤を推進」
P-1のエンジンにしてもそうです。これをてこに、世界のエンジン市場にIHIとしての乗り込んで一定市場を取るという野望も希望もありません。単にP-1の開発と生産で防衛省の予算を食いつぶせばそれで終わりです。世界市場に進出するならばリスクもコストもかかりますが、防衛需要で寄生しているだけならばリスクなく、利益は確実に確保できます。後は今まで通り外国企業の下請けをしていればいい。
こういう後ろ向きな企業が、先端的な戦闘機用エンジンを自主開発できるわけがない。
<機微技術の管理に向けた動向>
○ デュアルユース技術等の懸念国等への流出を防⽌するため、政府全体としての取組を強化。
○ 現在、経済安全保障法制で「機微技術の流出防⽌」等に向けた議論が⾏われており、防衛関連の技術は厳格な管理対象になる⾒込み。
実際の話、そんな盗まれる高度な技術が防衛産業にあるのか大変疑問です。
三菱電機など大手でも、サイバーセキュリティには無頓着です。実際にハッカーに侵入させてみて、その穴を塞ぐというようなサービスもあるのですが、「うちの会社」は大丈夫といってやらないところも多いわけです。根拠ない自信を持っている会社は情報の保全、技術の保全にもたいてい甘い傾向にあります。
この記事へのコメント
https://www.aviationwire.jp/archives/251271
ご参考まで。
https://www.sankei.com/article/20220520-GA7ZLAV6OVGF7FRLS5TP2MYPFI/
「スバルは防衛省向け事業に取り組むとともに、民間向けヘリ市場でも販売拡大を図る。412EPXは昨年5月に警察庁に初めて納入し、4機の受注実績があるという。ベル・テキストロンのネットワークを活用し、納入先を増やしていきたい考えだ。」
これを見ても主体的に拡販しないのがもろ分かりですね。
それにツッコミを入れない産経の優しいことよ(笑)...
それこそ、F-Xの補完用兼次期練習機として大量採用するべきですよ!(確信)。
>>>UH-2
>UH-2多用途ヘリコプター量産初号機、宇都宮で初飛行
https://flyteam.jp/news/article/136713
仕切り直しになった直後は、民間市場でも売れる機体を!なんて話もありましたが、いざ蓋を開けたらorz。てか、スバルもベルにおんぶに抱っこじゃあ先も見えてますよねえ...。商売する気が皆無にしか見えん(´Д`)
>日米首脳会談 岸田総理が防衛費増額を表明へ 中国への対応で連携も
https://news.yahoo.co.jp/articles/bba3ee03669480208006c0e923f343d44b62adbb
どうせまた、アメリカに貢ぐんだろうから多用途ヘリも練習ヘリ(レンジャーX辺りでも)も哨戒ヘリもアメリカから大人買いすりゃあ良いでしょうにねえ。何なら練習機もw。
軍用機と民間機では使っている技術は同じような物でも安全性や信頼性に対する考え方がまるで違いますからね。
今までだって自前の民間機で散々苦労したのに喉元過ぎれば熱さ忘れるではね。
同じく川重もC2もP1も民間機の常識が入ってないから型式証明は取れませんし、その為の技術力も金も無いとゲロしてくれました。EC145/BK117はエアバスヘリコプタの力添えがあったから取れた訳で。
今後輸送機や支援機、哨戒機などが民間機ベースになったら必然的に型式証明が機体取得用件になるでしょう。安全性や信頼性は軍用機基準よりずっと厳しいですからね。誰だって性能が同等なら安全な飛行機で任務に就きたいでしょうから。
するとよいよ国産機が海外で売れる目が無くなる訳で。ボーイング、エアバスは当然として軍用機でもロッキードはおろかイリューシンやロシアンヘリコプタでさえ型式証明取ってますからね。言い訳できないですよ。
いずれ戦闘機や攻撃ヘリ以外は型式証明必須になるでしょうね。
さて防衛省は天下り維持のために軍用専用機を作るのでしょうかね。他に顧客もいないだろうし。
後は前の回に色々書いたのでこの辺で。
自衛隊マンセーとスバルマンセーの複合体で気持ち悪いです。