令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む その5
財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
我が国の周辺国との相対関係(P13)

○ 中国の国防費は⽇本の3倍以上であるが、同時に、その経済規模も同程度の差が⽣じている。
○ 貿易関係においては、⽇本にとって中国が占める割合が輸出⼊ともに⼤きく拡⼤している⼀⽅で、中国の我が国への依存度は低下。
○ 投資関係についても、⽇本の中国向けの割合が近年増加。
「⽇本・中国の国防費・GDPの⽐較」を見れば、たしかに中国の国防費は日本の3.5倍と巨額になっています。ですが、GDPも3.7倍です。無論表に出てこない額も相当あるでしょうが、GDPの成長に合わせての堅実な増額といえるでしょう。
対して我が国は安倍晋三が10年間でGDP600兆まで増やすとぶち上げましたが、実際は560兆円に過ぎません。しかもその間は、財政赤字は消費増税もしたのに、悪化の一途を辿っています。つまり成長率では中国に大きく水を開けられています。
にもかかわらず、安倍晋三と与党自民党はアベノミスは借金して軍拡をしろと主張しているわけです。そのような過度な軍拡は財政を更に悪化させて国家の体力を奪います。結果長期に的見た場合国防に回せる予算が激減します。それは崩壊したソ連を見れば明らかです。
そして日本の中国に対する過度な経済依存も問題です。直接対外投資において、日本の対中投資は1400億ドルで全体の7.2%。対して中国に対日投資は42億ドル、全体の0.2%に過ぎません。かなりの非対称です。
そして日中の貿易関係です。2000と2020年を比較すると日本の対中輸出は4位から1位になっています。輸入も2二位から1位になっています。これは無論日本企業が現地生産して日本に輸入するものも含まれています。
対して中国の対日輸出は3位で変わらず、輸入は1位から2位に下がっています。
これから分かることは日本経済は中国依存度が高いですが、中国経済の日本に対する依存度が低くなっているということです。
仮に戦争になった場合、より大きな経済的な打撃を受けるのは日本です。本項でわかるのは、中国はGDP成長に合わせて軍拡しているのに、日本は成長がなく、財政赤字は増大している。そして日中の依存率は日本の方が高いので、戦時になれば日本経済はより大きな打撃を受けるということです。
つまり、中国に合わせて借金して軍拡してもそれは続かないし、逆に国力を弱める、すなわち防衛に回す金がなくなって、国防力は大幅に低下します。
いくらアメリカにF-35売ってくれと頼んでも、ドルが用意できず、価値が下がった円では受け取ってくれないでしょう。
有事における我が国経済・⾦融・財政の脆弱性(P14)

○ 貿易や対外投資で依存度の⾼い周辺国と軍事的有事が発⽣した場合、経済制裁や社会不安の増⼤等から経済状況が⼀変し、資本逃避や物価⾼などが⽣じる可能性。(=有事における我が国経済・⾦融・財政の脆弱性)
○ 平時から、防衛⼒強化のみならず、有事に⼗分耐えられる経済・⾦融・財政とするためのマクロ経済運営が必要。
ここでは有事における日本経済の脆弱性が指摘されています。このあたりはいわゆる経済安全保障に分野となります。
外貨の確保が急務
🉑 戦略物資の確保(輸⼊)のニーズが急増
・ 装備品、エネルギー、⾷糧等が継戦能⼒の維持に必須
🉑 経常収⽀への影響(悪化要因)
・ 紛争相⼿国を含むサプライチェーンの毀損による輸出の減少
(貿易収⽀の悪化要因)
・ 海外⼦会社の収益低下(所得収⽀の悪化要因)
有事には外貨がかなり必要になります。ですが、先にご案内の通り貿易収支が赤字化しており、外貨準備高が減る傾向にあります。外貨がなければ戦時の装備も燃料も買えません。戦車を増やすよりも外貨を増やすべきです。
供給制約による価格上昇
🉑 紛争相⼿国からの輸⼊が停⽌
・ ⽣活必需品や⼯業製品(中間財含む)の不⾜
🉑 紛争相⼿国による周辺・関係国への⽇本向け物資供給の縮減圧⼒
・ サプライチェーンの毀損、資源不⾜に陥るおそれ
⽇系企業・⾦融機関の収益低下や資⾦繰り難 🉑 紛争相⼿国による⽇系企業への制裁
・ 活動停⽌、資産凍結、海外送⾦停⽌、制裁⾦等
🉑 ⽇系企業・⾦融機関の信⽤が低下
・ 周辺国と対⽴状態にある中で、国際⾦融市場で信⽤を維持
し、必要な資⾦調達ができるのか。
国内⾦融資産からの逃避
🉑 海外資産への逃避(キャピタルフライト)
・ 安保環境・経済の不安定化
・ 社会不安の⾼まり
○ ⾃然災害や感染症等の他のリスクが発現し、我が国の脆弱性が⾼まっている際に、軍事的有事が⽣じるなど、必ずしも有事が単独で訪れるわけではないことも留意。
○ 脆弱性を解消せず、放置し続ければ、相⼿国にその脆弱性・姿勢を狙われるおそれ。
○ 市場参加者が脆弱性を「先取り」することで、⾦融資本市場や経済に与える影響にも注意が必要。
これまた経常収支が悪化しているので、戦時にバッファーが殆どないわけです。
日本経済が戦争に耐えられないでしょう。
何度も申しますが、借金で軍拡をするということは、財政基盤を脆弱化させて国の体力を弱めることになります。端的に申せばGDPを拡大し、税収を増やして累積債務を返してくことが国力を高めることになります。
そのためにはふるさと納税のような事実上の官製脱税含めて、衆愚迎合のばらまき政策を根絶する必要があります。しかも我が国は少子高齢化で国内市場は縮小するなかで、そのつけを払っていく必要があります。これは国民に多大な負担を強いることになるでしょう。
社会保障費や税金の負担は増えて可処分所得は減るでしょう。まさに血を吐くようにして借金を返さないといけない。でもそれは衆愚迎合の歴代政権を選んだ、あるいは選挙にいかなかった国民の連帯責任です。仕方がありません。この事実を衆愚迎合のバラマキをしてきた政治家は国民に告げることはありません。ですがこのまま借金でばらまきを続ければ、後に更に酷い形でつけを払うことになるでしょう。
国家財政基盤の強化こそは国防の基礎です。それ無い軍拡は根なしの徒花に過ぎません。
Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
我が国の周辺国との相対関係(P13)

○ 中国の国防費は⽇本の3倍以上であるが、同時に、その経済規模も同程度の差が⽣じている。
○ 貿易関係においては、⽇本にとって中国が占める割合が輸出⼊ともに⼤きく拡⼤している⼀⽅で、中国の我が国への依存度は低下。
○ 投資関係についても、⽇本の中国向けの割合が近年増加。
「⽇本・中国の国防費・GDPの⽐較」を見れば、たしかに中国の国防費は日本の3.5倍と巨額になっています。ですが、GDPも3.7倍です。無論表に出てこない額も相当あるでしょうが、GDPの成長に合わせての堅実な増額といえるでしょう。
対して我が国は安倍晋三が10年間でGDP600兆まで増やすとぶち上げましたが、実際は560兆円に過ぎません。しかもその間は、財政赤字は消費増税もしたのに、悪化の一途を辿っています。つまり成長率では中国に大きく水を開けられています。
にもかかわらず、安倍晋三と与党自民党はアベノミスは借金して軍拡をしろと主張しているわけです。そのような過度な軍拡は財政を更に悪化させて国家の体力を奪います。結果長期に的見た場合国防に回せる予算が激減します。それは崩壊したソ連を見れば明らかです。
そして日本の中国に対する過度な経済依存も問題です。直接対外投資において、日本の対中投資は1400億ドルで全体の7.2%。対して中国に対日投資は42億ドル、全体の0.2%に過ぎません。かなりの非対称です。
そして日中の貿易関係です。2000と2020年を比較すると日本の対中輸出は4位から1位になっています。輸入も2二位から1位になっています。これは無論日本企業が現地生産して日本に輸入するものも含まれています。
対して中国の対日輸出は3位で変わらず、輸入は1位から2位に下がっています。
これから分かることは日本経済は中国依存度が高いですが、中国経済の日本に対する依存度が低くなっているということです。
仮に戦争になった場合、より大きな経済的な打撃を受けるのは日本です。本項でわかるのは、中国はGDP成長に合わせて軍拡しているのに、日本は成長がなく、財政赤字は増大している。そして日中の依存率は日本の方が高いので、戦時になれば日本経済はより大きな打撃を受けるということです。
つまり、中国に合わせて借金して軍拡してもそれは続かないし、逆に国力を弱める、すなわち防衛に回す金がなくなって、国防力は大幅に低下します。
いくらアメリカにF-35売ってくれと頼んでも、ドルが用意できず、価値が下がった円では受け取ってくれないでしょう。
有事における我が国経済・⾦融・財政の脆弱性(P14)

○ 貿易や対外投資で依存度の⾼い周辺国と軍事的有事が発⽣した場合、経済制裁や社会不安の増⼤等から経済状況が⼀変し、資本逃避や物価⾼などが⽣じる可能性。(=有事における我が国経済・⾦融・財政の脆弱性)
○ 平時から、防衛⼒強化のみならず、有事に⼗分耐えられる経済・⾦融・財政とするためのマクロ経済運営が必要。
ここでは有事における日本経済の脆弱性が指摘されています。このあたりはいわゆる経済安全保障に分野となります。
外貨の確保が急務
🉑 戦略物資の確保(輸⼊)のニーズが急増
・ 装備品、エネルギー、⾷糧等が継戦能⼒の維持に必須
🉑 経常収⽀への影響(悪化要因)
・ 紛争相⼿国を含むサプライチェーンの毀損による輸出の減少
(貿易収⽀の悪化要因)
・ 海外⼦会社の収益低下(所得収⽀の悪化要因)
有事には外貨がかなり必要になります。ですが、先にご案内の通り貿易収支が赤字化しており、外貨準備高が減る傾向にあります。外貨がなければ戦時の装備も燃料も買えません。戦車を増やすよりも外貨を増やすべきです。
供給制約による価格上昇
🉑 紛争相⼿国からの輸⼊が停⽌
・ ⽣活必需品や⼯業製品(中間財含む)の不⾜
🉑 紛争相⼿国による周辺・関係国への⽇本向け物資供給の縮減圧⼒
・ サプライチェーンの毀損、資源不⾜に陥るおそれ
⽇系企業・⾦融機関の収益低下や資⾦繰り難 🉑 紛争相⼿国による⽇系企業への制裁
・ 活動停⽌、資産凍結、海外送⾦停⽌、制裁⾦等
🉑 ⽇系企業・⾦融機関の信⽤が低下
・ 周辺国と対⽴状態にある中で、国際⾦融市場で信⽤を維持
し、必要な資⾦調達ができるのか。
国内⾦融資産からの逃避
🉑 海外資産への逃避(キャピタルフライト)
・ 安保環境・経済の不安定化
・ 社会不安の⾼まり
○ ⾃然災害や感染症等の他のリスクが発現し、我が国の脆弱性が⾼まっている際に、軍事的有事が⽣じるなど、必ずしも有事が単独で訪れるわけではないことも留意。
○ 脆弱性を解消せず、放置し続ければ、相⼿国にその脆弱性・姿勢を狙われるおそれ。
○ 市場参加者が脆弱性を「先取り」することで、⾦融資本市場や経済に与える影響にも注意が必要。
これまた経常収支が悪化しているので、戦時にバッファーが殆どないわけです。
日本経済が戦争に耐えられないでしょう。
何度も申しますが、借金で軍拡をするということは、財政基盤を脆弱化させて国の体力を弱めることになります。端的に申せばGDPを拡大し、税収を増やして累積債務を返してくことが国力を高めることになります。
そのためにはふるさと納税のような事実上の官製脱税含めて、衆愚迎合のばらまき政策を根絶する必要があります。しかも我が国は少子高齢化で国内市場は縮小するなかで、そのつけを払っていく必要があります。これは国民に多大な負担を強いることになるでしょう。
社会保障費や税金の負担は増えて可処分所得は減るでしょう。まさに血を吐くようにして借金を返さないといけない。でもそれは衆愚迎合の歴代政権を選んだ、あるいは選挙にいかなかった国民の連帯責任です。仕方がありません。この事実を衆愚迎合のバラマキをしてきた政治家は国民に告げることはありません。ですがこのまま借金でばらまきを続ければ、後に更に酷い形でつけを払うことになるでしょう。
国家財政基盤の強化こそは国防の基礎です。それ無い軍拡は根なしの徒花に過ぎません。
Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134
この記事へのコメント
国防ですが、少ない予算で如何に実施できるかがミソ。戦車火砲の削減など陸自は縮小、海自空自兵站に集中し、その海自空自も兵器そのものやコンポーネントを国産ばかりに拘らず、妥協できるなら海外製にするなどの工夫が必要です。
しかし外交努力が一番ってのも聞きますね。外交努力をメインにしつつも、水面下では万が一に備えるってのが理想でしょう。もっとも、外交努力メインと主張する左翼方は、具体的な内容がないですが
我々は税金、年金、介護保険一体いくら払っていますか。
そしてその使われ方は妥当かつ効率的でしょうか?
ここ100年余りの間に、多くの国家と国民達が役人に成果を上げさせようとして、時間を無駄にしています。
この国もなまじ税収が有り借金も出来るものだから、予算も巨額なものとなり行政府も巨大化します。
まずは兵を去り食を去り、そして信を去りましょう。
国全体で500兆円、そのうち政府部門が100兆円なんてまともな経済じゃありません。
センサーとシューターが分離してない海上戦力。
時代遅れな有人兵器主体の陸自。
ドローン入れれば地対艦の有効射程も延びるだろうに。
陸自も積極的に海上への戦力投射が可能になります。
沖縄近海を内海に出来ます。
自前で輸送艦を運用するより容易かと。
空自にしてもパイロットをいたずらに危険に晒し疲労させ、機体の寿命を縮める無人機無用論。
核保有論の万倍有害ですよね。
トルコから空対空ミサイルが運動
中途で誤送信しました。
空自もトルコから空対空ミサイルの運用が可能な無人機を導入し、戦う前から消耗するのを防ぐべきです。
国そのものが金も人口も周辺国に対して劣勢なのに、その上非効率な事をやっていれば擂り潰されるのも時間の問題でしょう。
『やってはいけない相続対策』を読みました(完読には至っていませんが)。マスコミ等が相続税徴収範囲の拡大と税率アップを"煽り"、煽られた人達が不動産屋他のカモにされる事例が増えているそうです。もっと確実な節税対策は色々あるそうですし(祖父母から孫への教育費支援他)、そもそも実際に自分が幾ら取られるのかを知る必要があるのですが(素直に払うのが一番安上がりの場合もあるとか)。スケールは違いますが防衛等とやっている事は同じではないかと思ったりもします。また政治家及びそのお仲間を含む一部の富裕層は相続税率自体が引き下げられたばかりか「財団」といった一種の"ブラックボックス"が用意されていますが、先に述べた"煽り"はあってもそういった事があまり伝えられないのはやはり「記者クラブ」の成せる技なのかと。