令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む その5 戦車バカには軍事は理解できない。
財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
上陸・占領を阻⽌するための防衛戦略(P16)
○ ⼀般に、我が国のような海洋に⾯した国においては、相⼿国軍の上陸・占領の阻⽌を重視した防衛態勢を構築することが重要という考え⽅がある。
※ 海洋国家についても、向かい合う⼤陸側の国家との関係が、協調的か緊張的かによって、防衛戦略上の諸条件に違いが⽣じることには留意が必要。
○ 防衛⼒を強化していく上で、我が国はどういった戦略・戦術を採るべきであるのか、そのためにどのような装備品・態勢が必要になるのかといった点に関して、現在の整備の⽔準の適切性を⾒極めながら検討することが必要ではないか。
中国におけるA2/AD能⼒の強化
A2/AD能⼒(Anti Access/Area Denial)
・ 主に⻑距離能⼒により、敵対者がいる作戦領域に⼊ることを阻⽌するための能⼒(A2能⼒)
・ より短射程の能⼒により、作戦領域内での敵対者の⾏動の⾃由を制限するための能⼒(AD能⼒)
○ DF-21Dの配備(通称「空⺟キラー」)
🉑 空⺟などの洋上艦艇を攻撃する通常弾頭の対艦弾道
ミサイル(ASBM)
○ 無⼈艦艇や無⼈潜⽔艇の開発・配備
🉑 ⽐較的安価な装備で、敵の海上優勢を妨害可能
中国は米国と同じ土俵で戦っても勝てないことを知っています。ですから自らゲームチェンジをするような戦略を立てて、装備を開発しています。
イギリスの防衛戦略
❌ 海に囲まれた島国として、伝統的に海軍中⼼の防衛策を構築
❌ ⼤陸沿岸、⼤⻄洋、地中海等に⽬配りをした防衛ライン
❌ 近年陸軍を削減しており、更なる削減⽅針を公表
= ⾃国の採る戦略・戦術に即した防衛態勢の⾃⼰改⾰を実施
この項のグラフでは中国、英国ともに陸軍を減らしていることを指摘しています。兵隊の頭数を減らすことによって、浮いた予算を、近代化や海空戦力の強化、あるいはサーバーや宇宙などの新領域に投資をしています。
対して陸自の兵力はほぼ横ばいです。当然ながら新領域や海空への傾斜配分もできません。
部隊数も減っていないのに西南諸島に作った新部隊、新領域の部隊も新設しているので、既存部隊は充足率も低くて「10倍に薄めたカルピス」あるいは「骨粗鬆症部隊」化しています。
つまり、防衛省自衛隊には自己変革をする能力がなく、組織防衛と組織内政治のみを優先して現状維持をしている、ということです。ですから無人機や無人艇、無人車輌などの無人プラットフォーム導入が極端に遅れており、最貧国レベルといってもいいでしょう。
お大事の機甲戦力も戦車だけは更新したものの、後の装甲車両は博物館アイテムです。
ネットワーク化もお寒い限りで、RWSもプレートキャリアの導入もされていません。
それをおかしいと思わない奇異な組織文化があります。
ロシアが攻めてくるから機甲戦力を拡大する必要あるとか言ってこのような素人みたいなことをやっているわけです。
防衛装備の必要性に関する説明責任(P17)
○ ⼀部の防衛装備に関して、環境変化への対応や費⽤対効果の⾯をはじめとして様々な課題を指摘する声もある。
○ こうした課題を抱える装備品に引き続き依存することが最適と⾔えるのか、また⼤きなコストを投下しなければならないのか、防衛⼒を強化していく上で、その必要性について改めて国⺠に説明を尽くす必要があるのではないか。
このページに、自衛隊LOVEな軍おたさんたちが、財務省は戦車不要だと言っていると誤読して噛みついたわけです。彼らは上記の文言すら読んでいないでしょう。知性が低い、好き嫌いでしか軍事を語れない、あるいは趣味の軍事と現実の国防を混同して語るような人たちはリテラシーと知性が低いと思います。ところが自分は軍事の事情通だと信じて、一家言もっているわけです。
イージス・アショアの洋上化等(迎撃ミサイル)
【 説明を求める声】
① 能⼒
🉑 新技術や発射様態の多様化への対応可能性
🉑 洋上配備のメリット・デメリット
② 運⽤
🉑 搭乗員の確保や負担軽減、船独⾃の制約(例︓定期検査時には従事不可)
🉑 同盟国含む諸外国との相違に伴う対応(知⾒の蓄積、相互運⽤等)
コスト⾯から⾒た⾮対称性
③ コスト
🉑 船体構想によるコスト変動
🉑 他に採り得る代替案の有無
🉑 BMDに関するコスト⾮対称性
ただでさえ、弾道ミサイル撃つだけでいい北朝鮮(中国もですが)は、安価に攻撃力を維持できます。対して防戦する我が方はより高いコストがかかるわけです。その中で、海自のイージス艦とシステムの違うレーダーを使うアショアを導入しようとしてレーダーをお手つきで買って、それが破綻したので、今度は別にイージス艦を作って、二系列のイージス艦を装備するのがリーズナブルですか、と問いかけているわけです。
例えばそれよりも、イージス艦に搭載するSM6の数を増やす、イージス艦にクルー制を導入して稼働率を上げるなどということが考慮されていません。クルー制を導入すれば乗員は二倍必要ですが、海上勤務は少なくなり、イージス艦の稼働率もあがります。それに
FFMや警備艦の数を減らし、その任務を無人機に任せれば、要員の確保は可能なはずです。これをオペレーションリサーチの観点からきちんと精査すべきですが、防衛省はやっていないようです。
ぶっちゃけた話、アショアは安倍晋三がアメリカの歓心を買うために、防衛省をつんぼ桟敷にして頭越しで決めた話でしょう。そして頓挫しても責任を誰も取らなかった。こういう横車はまるでナチス第三帝国と同じであり、文民統制とはいいません。
陸上戦⾞・機動戦闘⾞(地上戦闘)
【 ウクライナの戦⾞・装甲⾞に対する戦い⽅ 】
○ 物量で勝るロシア軍に対し、ウクライナは⽶国製の携帯型対戦⾞ミサイル「ジャベリン」等を使⽤して激しく応戦。多くの戦⾞・装甲⾞の破壊に成功。
○ 戦⾞や機動戦闘⾞と⽐較して、ジャベリンは安価な装備品であり、コスト⾯において、両者はコスト⾮対称。物量で勝る敵⽅に対抗するために、対戦⾞ミサイル等を活⽤することはコストパフォーマンスを⾼める可能性。
コスト⾯から⾒た⾮対称性
戦⾞・機動戦闘⾞(R4予算)
10式戦⾞︓約14億円 / 1両 16式機動戦闘⾞︓約7億円 / 1両
ジャベリン(⽶国製)
ミサイル︓2300万円程度 / 1発 発射ユニット︓2億7000万円程度 / 1機
ここを「自衛隊LOVEな軍ヲタさんたち」は戦車不要論だ、と脊髄反射して怒りの思いをSNSとにぶつけたわけです。ですがこの資料のどこにも「戦車は不要だ、対戦車ミサイルがあればいい」とは書いていません。書いていないことが書いてあるようにみえるのでは心の病気ですから病院に言ったほうがよろしいかと思います。
ここで財務省が言いたいのは、陸自の運用構想や装備体系は現状のままでいいんですか?
ウクライナの戦場ではこういう現実がありますよ、と提示しているだけです。
自衛隊の予算には上限があるわけです。ですから限られた予算を何に使うか、そして使わないのか、どれに優先順位をつけるのか、という話です。
現状見れば陸自は戦車やMCVなど見栄えの良い「火の出るおもちゃ」を偏愛しているのがわかります。10式やMCVの開発導入は熱心ですが、本来機甲戦力は諸兵科連合が重要です。ところが陸自は金を戦車だけにつぎ込んで、歩兵戦闘車や対空車輌などは30年前のままで、更新どころか近代化もしてない。まるで「機甲博物館」です。
そしてドローンやUGV、ネットワーク化、精密誘導砲弾、対ドローンシステム、RWS(リモート・ウエポン・ステーション)など、途上国ですら当たり前に導入しているシステムを導入していません。戦車を溺愛して予算をこれにつぎ込んだからでしょう。
その溺愛する戦車やMCVにしてもクーラーすらつけていないので、夏場のNBC環境では戦えません。MCVは少し前からクーラーがつくようになりましたが、これは財務省の主計官からつけないと、予算を出さないと脅されたからです。
陸幕は大本営参謀よろしく、自分の都合に合わせて相手が戦争を起こしてくれるとおもっているよです。主戦場は北海道で、華々しい戦車戦とかを夢見ているのでしょう。当然てきはNBCでは攻撃を行わないという「設定」でしょう。平和ボケ、お花畑もいいところです。
率直に申せば陸自の戦車隊は虐殺の対象でしかありません。
敵はドローンではるか先から陸自戦車隊を発見して、武装型ドローン、自爆型ドローン、榴弾砲や迫撃砲の精密誘導砲弾、対戦車ミサイルで武装したUGV、対戦車ミサイルを搭載した機動力の高いATVなどで、戦車砲の射程外から陸自戦車部隊を虐殺できます。彼らはドローンや歩兵からデータをもとに迅速に攻撃できます。
ネットワーク化も遅れて、ドローンを撃退する手段もない陸自戦車隊は相手がどこにいるかもわからずに皆殺しです。河野太郎元防衛大臣だったときに、広域多目的無線機を問題ないと太鼓判おしていましたが、連隊基幹システム経由では未だに不通が多く、しかも通信速度は諸外国の通信機の三分の一程度ですから、動画もデータも送ることができません。
では防衛大綱が指摘する、我が国の直面する島嶼防衛、ゲリラコマンドウ対策、そしてサイバー攻撃への対処能力は低いままです。まともな投資もされていません。
そもそも防衛大綱でも我が国に対する大規模な着上陸作戦はほぼないとしています。それは今も変わりません。ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアが北海道に攻めているとかいう陸自元将官や「専門家」がおいでですが、陸続きでしかも、ロシアの中心部から近いウクライナでもあの体たらくです。
そして沿海州にはまともなインフラもなく、師団単位の戦力を揚陸する手段もありません。
彼らにはロシアはショッカーとか死ね死ね団とか、ギャラクターのような世界征服を目的にした組織で、ロシアは兵站能力がなくても、戦車が海の上を飛んで日本に攻めてくるといっているのと同じです。
そうであれば我々は火星人とかゴジラとかキングギドラとか、X星人の侵略にも備えないといけなくなります。
自衛隊LOVEな軍ヲタさんたち、あるいはWILLとかHanadaの読者とかは、防衛省、自衛隊は絶対に正しいという自衛隊無謬は一種のカルト宗教です。自衛隊が絶対正しいのだから彼らの現状を疑うのは国賊であるとでも思っているのでしょう。
そのような理性放棄こそが国防を危うくするものだと思います。
彼らは財務省あたりに予算が湧いてくる泉でもあると思っているのでしょう。ですが実際には予算は有限です。そして自衛隊は隊員の確保にも苦労しており、人的資源も有限であり、少子高齢化で諸らいの隊員確保も難くなります。
つまりヒト・モノ・カネという有限である資源をどう活用するか考える必要がありますが、彼らにはそれが理解できない。
陸自の規模は縮小し、機甲戦力は種火程度に減らして、その運用能力を保存する程度でいいでしょう。浮いた金と人で、海空、新領域を強化。
合わせて陸自も「昭和の軍隊」から「現代の軍隊」に近代化を図るべきです。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自最高峰と謳われるAASAM訓練隊の拳銃射撃の安全管理が犯罪的。実弾射撃中の射場において、ボルトがクローズのまま、拳銃の弾倉に弾込めをしている隊員の背負っている小銃が隣の隊員に銃口が向いてしまっている。射場指揮官、射撃係は米軍なら怒られて済むレベルの問題ではなく、懲罰モノの所業との噂。
https://youtu.be/MxQDYpJqmIU
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
財務省が戦車の有益性を辛辣に指摘した真の意味
現実を直視した「真に有効な防衛力」の議論が必要だ
https://toyokeizai.net/articles/-/587274
apan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。
「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf
上陸・占領を阻⽌するための防衛戦略(P16)
○ ⼀般に、我が国のような海洋に⾯した国においては、相⼿国軍の上陸・占領の阻⽌を重視した防衛態勢を構築することが重要という考え⽅がある。
※ 海洋国家についても、向かい合う⼤陸側の国家との関係が、協調的か緊張的かによって、防衛戦略上の諸条件に違いが⽣じることには留意が必要。
○ 防衛⼒を強化していく上で、我が国はどういった戦略・戦術を採るべきであるのか、そのためにどのような装備品・態勢が必要になるのかといった点に関して、現在の整備の⽔準の適切性を⾒極めながら検討することが必要ではないか。
中国におけるA2/AD能⼒の強化
A2/AD能⼒(Anti Access/Area Denial)
・ 主に⻑距離能⼒により、敵対者がいる作戦領域に⼊ることを阻⽌するための能⼒(A2能⼒)
・ より短射程の能⼒により、作戦領域内での敵対者の⾏動の⾃由を制限するための能⼒(AD能⼒)
○ DF-21Dの配備(通称「空⺟キラー」)
🉑 空⺟などの洋上艦艇を攻撃する通常弾頭の対艦弾道
ミサイル(ASBM)
○ 無⼈艦艇や無⼈潜⽔艇の開発・配備
🉑 ⽐較的安価な装備で、敵の海上優勢を妨害可能
中国は米国と同じ土俵で戦っても勝てないことを知っています。ですから自らゲームチェンジをするような戦略を立てて、装備を開発しています。
イギリスの防衛戦略
❌ 海に囲まれた島国として、伝統的に海軍中⼼の防衛策を構築
❌ ⼤陸沿岸、⼤⻄洋、地中海等に⽬配りをした防衛ライン
❌ 近年陸軍を削減しており、更なる削減⽅針を公表
= ⾃国の採る戦略・戦術に即した防衛態勢の⾃⼰改⾰を実施
この項のグラフでは中国、英国ともに陸軍を減らしていることを指摘しています。兵隊の頭数を減らすことによって、浮いた予算を、近代化や海空戦力の強化、あるいはサーバーや宇宙などの新領域に投資をしています。
対して陸自の兵力はほぼ横ばいです。当然ながら新領域や海空への傾斜配分もできません。
部隊数も減っていないのに西南諸島に作った新部隊、新領域の部隊も新設しているので、既存部隊は充足率も低くて「10倍に薄めたカルピス」あるいは「骨粗鬆症部隊」化しています。
つまり、防衛省自衛隊には自己変革をする能力がなく、組織防衛と組織内政治のみを優先して現状維持をしている、ということです。ですから無人機や無人艇、無人車輌などの無人プラットフォーム導入が極端に遅れており、最貧国レベルといってもいいでしょう。
お大事の機甲戦力も戦車だけは更新したものの、後の装甲車両は博物館アイテムです。
ネットワーク化もお寒い限りで、RWSもプレートキャリアの導入もされていません。
それをおかしいと思わない奇異な組織文化があります。
ロシアが攻めてくるから機甲戦力を拡大する必要あるとか言ってこのような素人みたいなことをやっているわけです。
防衛装備の必要性に関する説明責任(P17)
○ ⼀部の防衛装備に関して、環境変化への対応や費⽤対効果の⾯をはじめとして様々な課題を指摘する声もある。
○ こうした課題を抱える装備品に引き続き依存することが最適と⾔えるのか、また⼤きなコストを投下しなければならないのか、防衛⼒を強化していく上で、その必要性について改めて国⺠に説明を尽くす必要があるのではないか。
このページに、自衛隊LOVEな軍おたさんたちが、財務省は戦車不要だと言っていると誤読して噛みついたわけです。彼らは上記の文言すら読んでいないでしょう。知性が低い、好き嫌いでしか軍事を語れない、あるいは趣味の軍事と現実の国防を混同して語るような人たちはリテラシーと知性が低いと思います。ところが自分は軍事の事情通だと信じて、一家言もっているわけです。
イージス・アショアの洋上化等(迎撃ミサイル)
【 説明を求める声】
① 能⼒
🉑 新技術や発射様態の多様化への対応可能性
🉑 洋上配備のメリット・デメリット
② 運⽤
🉑 搭乗員の確保や負担軽減、船独⾃の制約(例︓定期検査時には従事不可)
🉑 同盟国含む諸外国との相違に伴う対応(知⾒の蓄積、相互運⽤等)
コスト⾯から⾒た⾮対称性
③ コスト
🉑 船体構想によるコスト変動
🉑 他に採り得る代替案の有無
🉑 BMDに関するコスト⾮対称性
ただでさえ、弾道ミサイル撃つだけでいい北朝鮮(中国もですが)は、安価に攻撃力を維持できます。対して防戦する我が方はより高いコストがかかるわけです。その中で、海自のイージス艦とシステムの違うレーダーを使うアショアを導入しようとしてレーダーをお手つきで買って、それが破綻したので、今度は別にイージス艦を作って、二系列のイージス艦を装備するのがリーズナブルですか、と問いかけているわけです。
例えばそれよりも、イージス艦に搭載するSM6の数を増やす、イージス艦にクルー制を導入して稼働率を上げるなどということが考慮されていません。クルー制を導入すれば乗員は二倍必要ですが、海上勤務は少なくなり、イージス艦の稼働率もあがります。それに
FFMや警備艦の数を減らし、その任務を無人機に任せれば、要員の確保は可能なはずです。これをオペレーションリサーチの観点からきちんと精査すべきですが、防衛省はやっていないようです。
ぶっちゃけた話、アショアは安倍晋三がアメリカの歓心を買うために、防衛省をつんぼ桟敷にして頭越しで決めた話でしょう。そして頓挫しても責任を誰も取らなかった。こういう横車はまるでナチス第三帝国と同じであり、文民統制とはいいません。
陸上戦⾞・機動戦闘⾞(地上戦闘)
【 ウクライナの戦⾞・装甲⾞に対する戦い⽅ 】
○ 物量で勝るロシア軍に対し、ウクライナは⽶国製の携帯型対戦⾞ミサイル「ジャベリン」等を使⽤して激しく応戦。多くの戦⾞・装甲⾞の破壊に成功。
○ 戦⾞や機動戦闘⾞と⽐較して、ジャベリンは安価な装備品であり、コスト⾯において、両者はコスト⾮対称。物量で勝る敵⽅に対抗するために、対戦⾞ミサイル等を活⽤することはコストパフォーマンスを⾼める可能性。
コスト⾯から⾒た⾮対称性
戦⾞・機動戦闘⾞(R4予算)
10式戦⾞︓約14億円 / 1両 16式機動戦闘⾞︓約7億円 / 1両
ジャベリン(⽶国製)
ミサイル︓2300万円程度 / 1発 発射ユニット︓2億7000万円程度 / 1機
ここを「自衛隊LOVEな軍ヲタさんたち」は戦車不要論だ、と脊髄反射して怒りの思いをSNSとにぶつけたわけです。ですがこの資料のどこにも「戦車は不要だ、対戦車ミサイルがあればいい」とは書いていません。書いていないことが書いてあるようにみえるのでは心の病気ですから病院に言ったほうがよろしいかと思います。
ここで財務省が言いたいのは、陸自の運用構想や装備体系は現状のままでいいんですか?
ウクライナの戦場ではこういう現実がありますよ、と提示しているだけです。
自衛隊の予算には上限があるわけです。ですから限られた予算を何に使うか、そして使わないのか、どれに優先順位をつけるのか、という話です。
現状見れば陸自は戦車やMCVなど見栄えの良い「火の出るおもちゃ」を偏愛しているのがわかります。10式やMCVの開発導入は熱心ですが、本来機甲戦力は諸兵科連合が重要です。ところが陸自は金を戦車だけにつぎ込んで、歩兵戦闘車や対空車輌などは30年前のままで、更新どころか近代化もしてない。まるで「機甲博物館」です。
そしてドローンやUGV、ネットワーク化、精密誘導砲弾、対ドローンシステム、RWS(リモート・ウエポン・ステーション)など、途上国ですら当たり前に導入しているシステムを導入していません。戦車を溺愛して予算をこれにつぎ込んだからでしょう。
その溺愛する戦車やMCVにしてもクーラーすらつけていないので、夏場のNBC環境では戦えません。MCVは少し前からクーラーがつくようになりましたが、これは財務省の主計官からつけないと、予算を出さないと脅されたからです。
陸幕は大本営参謀よろしく、自分の都合に合わせて相手が戦争を起こしてくれるとおもっているよです。主戦場は北海道で、華々しい戦車戦とかを夢見ているのでしょう。当然てきはNBCでは攻撃を行わないという「設定」でしょう。平和ボケ、お花畑もいいところです。
率直に申せば陸自の戦車隊は虐殺の対象でしかありません。
敵はドローンではるか先から陸自戦車隊を発見して、武装型ドローン、自爆型ドローン、榴弾砲や迫撃砲の精密誘導砲弾、対戦車ミサイルで武装したUGV、対戦車ミサイルを搭載した機動力の高いATVなどで、戦車砲の射程外から陸自戦車部隊を虐殺できます。彼らはドローンや歩兵からデータをもとに迅速に攻撃できます。
ネットワーク化も遅れて、ドローンを撃退する手段もない陸自戦車隊は相手がどこにいるかもわからずに皆殺しです。河野太郎元防衛大臣だったときに、広域多目的無線機を問題ないと太鼓判おしていましたが、連隊基幹システム経由では未だに不通が多く、しかも通信速度は諸外国の通信機の三分の一程度ですから、動画もデータも送ることができません。
では防衛大綱が指摘する、我が国の直面する島嶼防衛、ゲリラコマンドウ対策、そしてサイバー攻撃への対処能力は低いままです。まともな投資もされていません。
そもそも防衛大綱でも我が国に対する大規模な着上陸作戦はほぼないとしています。それは今も変わりません。ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアが北海道に攻めているとかいう陸自元将官や「専門家」がおいでですが、陸続きでしかも、ロシアの中心部から近いウクライナでもあの体たらくです。
そして沿海州にはまともなインフラもなく、師団単位の戦力を揚陸する手段もありません。
彼らにはロシアはショッカーとか死ね死ね団とか、ギャラクターのような世界征服を目的にした組織で、ロシアは兵站能力がなくても、戦車が海の上を飛んで日本に攻めてくるといっているのと同じです。
そうであれば我々は火星人とかゴジラとかキングギドラとか、X星人の侵略にも備えないといけなくなります。
自衛隊LOVEな軍ヲタさんたち、あるいはWILLとかHanadaの読者とかは、防衛省、自衛隊は絶対に正しいという自衛隊無謬は一種のカルト宗教です。自衛隊が絶対正しいのだから彼らの現状を疑うのは国賊であるとでも思っているのでしょう。
そのような理性放棄こそが国防を危うくするものだと思います。
彼らは財務省あたりに予算が湧いてくる泉でもあると思っているのでしょう。ですが実際には予算は有限です。そして自衛隊は隊員の確保にも苦労しており、人的資源も有限であり、少子高齢化で諸らいの隊員確保も難くなります。
つまりヒト・モノ・カネという有限である資源をどう活用するか考える必要がありますが、彼らにはそれが理解できない。
陸自の規模は縮小し、機甲戦力は種火程度に減らして、その運用能力を保存する程度でいいでしょう。浮いた金と人で、海空、新領域を強化。
合わせて陸自も「昭和の軍隊」から「現代の軍隊」に近代化を図るべきです。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自最高峰と謳われるAASAM訓練隊の拳銃射撃の安全管理が犯罪的。実弾射撃中の射場において、ボルトがクローズのまま、拳銃の弾倉に弾込めをしている隊員の背負っている小銃が隣の隊員に銃口が向いてしまっている。射場指揮官、射撃係は米軍なら怒られて済むレベルの問題ではなく、懲罰モノの所業との噂。
https://youtu.be/MxQDYpJqmIU
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
財務省が戦車の有益性を辛辣に指摘した真の意味
現実を直視した「真に有効な防衛力」の議論が必要だ
https://toyokeizai.net/articles/-/587274
apan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134
この記事へのコメント
ところで、何故かこれと同じ記事が2つもあるのですが
ウクライナの教訓がどれだけ陸自を改革できるかが大事ですよね。
今回の戦争で大量に屠られたロシア戦車隊を見て、戦車を削減する国が増えるのではないでしょうか。
精密誘導砲弾や自爆ドローンの有用性はさすがに陸幕も理解できたはずなので、防衛予算を増額するならこういった分野に集中投資してほしいです。
「彼らは財務省あたりに予算が湧いてくる泉でもあると思っているのでしょう。」
仮に無制限の金の湧く泉を持っていて何百兆円使えたとしても負けるでしょう。
根本的な考え方が昭和のままなのだから。
むしろ無駄金ばかり使って効率化を考えないから
死体の山を築くだけ。それでも勲章だの英雄だの靖国だの
言っとけば大丈夫程度の脳味噌ではいずれ人的資源も兵站も枯渇するでしょう。実際は全て有限だからもっと早く
全滅するでしょうね。
戦略も戦術も装備も人員もきちんと考えなければそうなりますよ。
素人の財務省の方が余程よく知って理解しているあたり
情けない限り。
実戦だったら自衛隊vs財務省軍だったら財務省の方が勝つのでは。しかも圧倒的大差で。野外を駆け回る必要も銃を振り回す必要すらないですからね。白兵戦すらするまえに全て終わっていますよ。
■本日の市ヶ谷の噂■
噂じゃないですよね(汗)彼らの無事を祈ります...
事故が起こってから騒ぐんだろうな、きっと。
同じ日の別の位置からのビデオの様です。
こちらの方が拳銃の方は分かりやすいですかね。
https://www.youtube.com/watch?v=5LgYiWHbARs
安全な銃の取り扱いに関する規則
https://www.youtube.com/watch?v=NvDLU-4InbU
初心者向けの安全な銃の扱い方です。youtubeにもこの手の初心者向け動画が一杯ありますね。
GUN誌等にも時々射撃前の準備でも写真つきで書いてある時もあります。
比較のために
米軍兵士が新しい9mm拳銃「M17」で射撃テスト
https://www.youtube.com/watch?v=CmzMpuW_wVg
渡される前の拳銃はスライドが引かれた状態で
弾はハンヴィか何かのボンネット使って机代わりにしていますね。
中国のA2D2に習い、上陸拒否に努める編成にしました。と言えるから。
かつて日本は、軍艦は戦艦長門や大和、戦闘機は零戦や隼といった至らぬ点は多々あっても欧米とやり合えるだけの物を作りました。しかし戦車、特に敵戦車と戦う戦車は欧米とやり合えるだけの物は作れませんでした。本土決戦で米戦車と戦うために三式中戦車や五式中戦車を作りましたが不完全燃焼に終わりました。であるから置かれた状況や軍事的必要性とは関係なく「敵戦車と戦う戦車」を作り続けているのではないかと。しかも一貫した方向性も無く「できたらできた物に不満を抱いてまた作る」の繰り返しなので完成度とかが上がる訳でもありません。特殊詐欺に騙された人が制止する行員に向かって「嘘でもいいから振り込ませろ」と言い返すように、「今の戦争、特に本土防衛線ではそれ程役に立ちませんよ」と言っても「役に立たなくても作らせろ」なのでは。外国では130ミリ砲とか140ミリ砲が出てきているようなので、130ミリ砲または140ミリ砲搭載の戦車を開発するのではないと思っています。砲も国産で作るかも知れませんし、まともに作れば今の諸外国の第三世代戦車と同等以上の大きさと重さになるでしょうが、諸外国のそれに比べて軽量の90式戦車ですら許容できなかったのですから、何か変な事でもするのではないかと思っています。
往年の戦艦は一貫して「水上艦同士で優位に立つ」ための物で、水上艦の主たる脅威がミサイルを含む航空機と潜水艦になった事でその歴史を終えました。戦車は「敵の機関銃網を破る」ために生まれ、その後「敵戦車を無力化する」に変わりました。今では「敵戦車を無力化する」手段は複数あり、特に無人機やドローンが有力手段として台頭してきていますから、戦車もそれに合わせて変わるべきではないかと。