防衛産業からのロビー活動で記事を書きました、みたいな。

例によって何か防衛大手からのロビーがきっかけの記事のように思えます。
日経も防衛問題の専門記者を置いて、海外も取材させたり英語で発信していはどうでしょうか。

国防力「民間頼み」の咎
継戦能力、防衛産業再興がカギ 利益率改善は輸出より先

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66406580Q2A131C2EA1000/

>部品を発注しても、利益の少なさや多品種少量生産の手間を理由にしたメーカーの生産打ち切りに直面する場合も多い。
>「請求額、もう少し削ってよ。丸めてよ」。装備品メーカーが自衛隊の担当幹部から言われてきた魔の言葉だ。

防衛大手のプライムはやめればいいんですよ。どうせ売上比率は数%に過ぎません。別に国営会社じゃないのだから止める権利はあります。問題は手を付けると面倒くさいから歴代の経営陣が防衛省と交渉もせず、事業の統廃合も造船以外はほぼやってこなかったことでしょう。さらにもうせば、防衛省に防衛産業を産業として見る習慣が未だに身につかないことも問題でしょう。
馬鹿な顧客とは付きない、事業から撤退するのも経営者の仕事です。官民共に当事者能力と意識が欠けていたわけです。

>米国の防衛企業の利益率が10%程度なのに比べ、日本は8%に届かない場合が大半だ。契約後の設計変更などで手間が増え、値下げ圧力もかかり利益率はさらに下がる。将来を悲観し撤退する防衛企業が相次ぐ。

このあたり重工各社とかがやっているメディアへのロビー活動の受け売りです。この記事もそうやって書かれたのでしょう。米国の防衛企業は輸出も多いし、リスクを取って開発もしています。開発しても採用されない、市場で売れないこともあります。
対して我が国はやった仕事に関しては金は必ずもらえる、トリッパグレがありません。
こんな当たり前のことを日経の記者は裏とりもしないで子供の使いよろしく記事にするわけです。そりゃ、まともな防衛産業の分析記事なんて書けません。

>防衛に関連する企業への目配りが不足しがちな背景には、防衛省・自衛隊の「行き過ぎた我慢文化」がある。整備・補給部門の経験が長い陸上自衛隊OBは「予算上の制約を理由に、交換部品を最初から調達しようとせず、不稼働装備品が続出しても隊員に我慢を強いてきた」と明かす。
>過剰な我慢を強いる空気は低い利益率という形で防衛企業にも向けられた。加えて防衛省・自衛隊の「甘え」も企業側の負担を増やしている。


これは外国取材していれば普通に分かる話ですが、いつもぼくが書いているように、調達に関して計画を出します。どんな装備をいくつ買うか、いつまでの製造、調達して戦力化するか、その額はいくらか。当然その間の消耗部品がどの程度いるかも計画に入ります。それを議会が承認して契約します。
自衛隊、特に陸自では戦争する気がないので、装備が動かなくても、不良でも問題にしません。FFOSやFFRSがいい例でしょう。
そもそも陸自には部隊の定数以外の予備の装備を買う文化すらないわけです。航空機ならIRANが定期的に必要ですから、予備機がないと部隊の稼働率は低下します。海自、空自にできて陸自にできないのですから、陸幕は無能だということです。
これは小銃に至るまでそうです。陸自の小銃がよく地金が見えているものがありますが、これは補給処に送って整備していないからです。小火器も一定期間使用するとガタが来たり、歪みがでて命中精度がさがったりします。ですから定期的に工場で整備して、表面処理もやり直します。それをやっていない。だから陸自の小銃などガタガタです。

それが長年の伝統だから、と疑問を持たないのは知性がないからです。

予算が取れないならば、まともな軍隊であれば部隊数を減らしても予備の装備を調達して運用計画を立てるでしょう。それをやると部隊長のポジションが減るから頑張って減らさない。しかも充足率が6割を切る部隊もゴロゴロあるわけですから、戦えるわけがない。

>黒江氏(元次官)は、撤退する防衛企業から国が生産ラインを買い取って「国有兵器工廠(こうしょう)」化したり、他社に買い取ってもらう仲介をしたりするなど、企業支援の面で政府が踏み込む余地があるとしたうえで「今は日本の防衛産業を再興する最大にして最後の機会」と強調する。

これは以前からぼくが政策提言で書いていたことです。

東京財団委託政策提言
「国営防衛装備調達株式会社を設立せよ」
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2005/01023/pdf/0001.pdf

ですが、それにしても防衛省と自衛隊が防衛産業を産業であるという認識を持たなければ画餅になるだけです。

■本日の市ヶ谷の噂■
元女性隊員のセクハラ告発以来、防衛省のハラスメント対応で被害者の隊員からの特別防衛監察希望が多すぎて観察本部は対応が追い付かず、パンク状態、との噂。

この記事へのコメント

やれやれ
2022年11月30日 20:03
2005年時点でこれだけの報告書をまとめ上げるとは
立派ですね。時代が流れた分だけ若干の修正は必要ですが、内容的には今でも通用します。
修正版を使って輸出や防衛産業擁護の議員や専門家委員会の頬っぺたを往復ビンタしてあげたら少しは現実が見えてくるのではないでしょうか。
この頃の私はようやく自衛隊の装備変じゃね?弱いんじゃね?と疑問を深く持つ様になった頃です。他の国のと比べると見た目だけでもたよりないし展示会ではドローンがウザい存在になりつつある位増えてるし、なのにドローンなんてろくに無いし。

■本日の市ヶ谷の噂■
…闇は深いですね…どんだけハラスメント野放し組織だったのかと。
KU
2022年11月30日 22:07
>>>監察本部

ハカイダーとかの件などを放置プレイしてきたんだし、自業自得でしょ。

※昨日の記事ですが↓

>「死の商人になるな」ミサイル長射程化に市民団体が抗議、製造元の三菱重工前で【動画あり】

https://www.tokyo-np.co.jp/article/216877

>>>杉原浩司さん

さすがわ、「週刊 護衛艦いずもをつくる」に全力で激オコした杉原さんですぬ(^_^;)。

>「なぜ戦争訓練をするのか」自衛隊演習場で“米軍実弾射撃訓練”開始で市民団体が抗議活動 宮城

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tbc/217800?display=1

...まさかとは思いますけど、この人たちって軍隊が何をする組織か、ご存知ないんですか?
KU
2022年11月30日 22:26
>防衛費増額の財源に「外為特会余剰金」「コロナ積立金」を検討 政府関係者

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/217574?display=1

使えるものは、根こそぎ注ぎ込むつもりなんですか...?
KU
2022年12月01日 08:24
>「反撃能力」保有へ、長射程ミサイル同時開発を検討···極超音速など10種類以上

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221130-OYT1T50278/

ホントに、そんな一度に同時平行で開発しちゃって大丈夫なんですか...?仮に開発に成功者しても、ちまちま少量生産するんぢゃあ、意味が無いですよね。
KU
2022年12月01日 08:27
×成功者
○成功
兵長
2022年12月01日 09:19
清谷さんは、自衛隊にどんな物が必要でどんな物が不要、又は削減した方が良いと思いますか?
偽陸士
2022年12月01日 13:58
日本は貧乏國なんだから、無理せずトルコとイラン両方からドローン買えばいいんだよ。

何を優雅に滑空弾だのF-3だの贅沢品ばかり買いたがるかね。(笑)

そんなこと言える御身分か保守にはお分かりにならないらしい。


https://sp.m.jiji.com/article/show/2835861


これからはイスラム圏の時代かも知れない。

欧米露中日と仲良くトイレに流れて逝くのかも知れない。
ミスターフリゲート
2022年12月01日 14:22
偽陸士さん
イスラエルも忘れずに
キヨタニ
2022年12月01日 16:05
過去の記事をご参照ください。
それ以前に駄目な組織文化の一掃が必要です。

>兵長さん
>
>清谷さんは、自衛隊にどんな物が必要でどんな物が不要、又は削減した方が良いと思いますか?
二読者
2022年12月01日 23:12
いじめやハラスメントを肯定するつもりは毛頭ありませんが、命令と服従で動き、「有事」には「敵」を殺傷する軍事組織からそれが消滅することは有り得ないと考えます。(というか、いじめとハラスメントが皆無の軍隊があればぜひ知りたいです)
だからこそ、違反者は粛々淡々と処罰することでそれを抑止・防止するしかないのですが。
根絶すべき内なる敵として、明確に定義してもらいたいです。でないと「可愛がる」後輩や部下が誰一人いなくなるよ?
偽陸士
2022年12月02日 11:26
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1809/11/news042_6.html

米軍で罵倒はするが手を出さないのは、ベトナムでフランギングが続出した反省からです。


今の自衛隊の場合、隊員に銃と実弾と刃を落としてない銃剣を支給し個人管理にすれば、ハラスメントも収まります。

この記事へのトラックバック