防衛大臣会見令和6年7月5日(金)での質問。

令和6年7月5日(金)の防衛大臣会見で木原防衛大臣に質問しました。
https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2024/0705a.html

Q:今の川重の件についてなんですけれども、2つお話があります。1つは、そもそも防衛省の原価計算、これかなり緩いのではないかと。ですからその原価がきっちり計算されておらずにですね、色々とそれに乗っけているものがあるんじゃないかと。以前から川重の方の潜水艦に関して言うと、海自の人間に聞くとですね、修理の時に泊まりに行くと、そうすると三菱重工より川重の方が色々対応がいいよという話は昔からだったというお話がございます。それから、過去、重工労連という労働組合に20年以上前に聞いたんですけれども、各原価計算の段階で鉛筆舐めて水増してやるよと、それを何段階も重ねて細部にまた水増ししてるから、原価って実はかなりいい加減だよという話を聞いております。こういう防衛省全体の原価計算に関する上げ方がまず問題ないのか、これがまず一点ということと、あとはその潜水艦2社体制というのは、果たして健全なのかと、かつて16隻態勢の時は交互に作っておりまして、かなり諸外国に比べると艦齢が若い段階で退役させて、ある意味潜水艦、使い捨てしていた訳ですね。お金のある時はそれでいいんですけれども、こういう財政状況厳しい中で2社を維持するためだけにですね、潜水艦交互に造っていく必要があるのかと、なおかつ、潜水艦のクルー非常に先ほどの人的基盤の問題も絡んでくると思うんでけれども、一番資格的に難しいところがあります。果たして今後も今の22隻態勢を維持できるサブマリーナを確保できるのかと。かつて、ジミー・カーター大統領、元サブマリーナでしたけれども、お前は不適格だと外されて大統領になったわけですけれども、ある意味大統領になるよりも潜水艦乗りの方が難しいわけです。そういう潜水艦クルーを果たして今後も維持できるのか、むしろ隻数を減らしてですね、クルー制を導入して交互に乗せていく。そうすると個々の艦の可動率は上がる。ただそうすると、2社態勢は維持できませんけれども、そういうことも含めて防衛省の方で検討すべきではないでしょうか。大臣どうお考えでしょうか。

A:まず前段についてですが、潜水艦修理をはじめとして、装備品の調達、私ども行っておりますが、正に潜水艦というのは防衛省固有の特殊な仕様であります。ある意味、市場価格が存在しないという物が多い中で、製造等に必要な材料費であったり労務費など、積み上げる原価計算方式によって価格算定を行うということになっております。価格の算定に当たりましては、企業から提出された見積資料について、その積算に至る考え方というものをですね、これは個別に聞き取るということにしております。そして、その積算の根拠となるエビデンス資料というものを、これもしっかりと確認をしております。こういった取組によって公正かつ適正な価格での調達が行われるように努めなければなりません。引き続き、こういうことを念頭にやってまいります。後段の2社態勢の在り方についてということだと思いますが、一般論として申し上げると、事業のそういった事業会社の統合の問題、あるいは個々の企業の組織の在り方というものは、あくまで各社の経営判断によるものであり、防衛省としては各企業の判断を尊重することが必要というふうに考えております。いずれにしましても、防衛力の抜本的強化というのを、私どもは進めている中で、今回、疑いとはいえ、こういう深刻な事案と受け止めざるを得ない事案が出てきておりますので、これまで以上に厳格に予算執行を行っていくということに努める、それに尽きると思っています。万一にも国民の疑惑や不信を招くような行為というものがあってはなりませんので、今後の予算要求、編成、予算執行について、国民の疑惑を招くことがないように、適切に行ってまいります。

木原大臣は潜水艦メーカー二社体制維持を是とするのか、少子高齢化でもっとも確保が難しい潜水艦のクルーを22隻分も今後確保できるかという質問に正面から答えていただけませんでした。

追加質問しようと思ったのですが、当日は大臣のスケジュールで時間がなく、潜水艦スキャンダルで質問者も多かったので後でしようと思ったら順番が回ってきませんでした。
この件は改めて会見で質していく予定です。

どこの国でも潜水艦メーカーなんて大抵1社ですよ。輸出も含めて。こんな贅沢して税金浪費している国はありません。

またかつての潜水艦16隻体制は二社を食わせるためのものであり、戦略的な合理性はありませんでした。16年で潜水艦を使い捨てにしてたのは我が国ぐらいです。艦齢があがると運用上問題がという当局の主張がありましたが、その後安倍政権では22隻体制になって延命で対応しています。軍オタさんたちが信じていた大本営発表は嘘だったということです。

更に申せば少子高齢化で最も確保が難しいサブマリーナを22隻分も確保できるのか。
それは省力化を進めても無理です。現状定員に入っている医官すら全く乗っていません。例外は海外任務だけです。
きつい潜水艦勤務は退職者も多い。隻数を減らして完全クルー制を導入すべきです。そうすれば任務のキツさも緩和されて離職者も減るのではないでしょうか。乗員は艦の数の二倍必要ですが、個々の艦の稼働率は上がります。また無人プラットフォームの活用も今後の課題でしょう。持続可能な潜水艦隊の整備を目指すべきです。ハードウェアの数を競うべきでない。スカスカの乗員で数だけ維持しても戦力にはなりません。

潜水艦の数を減らすのであれば二社体制維持は自然に無理となります。潜水艦事業を統合して専門の会社でも作ればいい。ただしその場合、上場会社にして経営を透明化することが条件で、たすき掛け人事のような愚は行わない仕組みづくりと政府の黄金株保有を前提にすべきです。

■本日の市ヶ谷の噂■
自衛隊人事のからくりは、帝国陸海軍の悪しき伝統を踏襲し、入隊時の学校の成績には非常に優秀、優秀、普通などの基準がある。学校卒業時の成績が決まると異動先では、勤務評価はそれと同じにしなければいけない。人事担当者の書類作成が楽だから。かくして、入隊時の学校の成績が退職まで影響する。途中の勤務業績はあまり関係ない。これに嫌気がさしてやめる人間が多い、との噂。




Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
「敵に手の内をさらさない」という防衛省、自衛隊の「敵」は国会と納税者か
https://japan-indepth.jp/?p=83101
新聞各紙 残念な防衛関連の未検証記事
https://japan-indepth.jp/?p=82844
日本の報道の自由度が低いのは記者クラブのせい
https://japan-indepth.jp/?p=82748

次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する
https://japan-indepth.jp/?p=81695

次期装輪装甲車、AMV採用を検証するその1
駿馬を駄馬に落とす陸自のAMV採用
https://japan-indepth.jp/?p=81667

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない
やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情
https://toyokeizai.net/articles/-/744651


月刊軍事研究4月号に陸自の18式防弾ベストに関する記事を寄稿しました。
軍事研究 2024年 04 月号 [雑誌]
軍事研究 2024年 04 月号 [雑誌]

この記事へのコメント

Goodman80
2024年07月06日 12:34
海自の潜水艦の運用からすれば潜水艦隊など無用で、あんな深く潜れて航海期間が無駄に長い艦など必要無いんですよね。各基地にS-80クラスの船を8~12隻配備すれば良いだけでしょう。予備を含めて50隻程度で今の人員で運用出来ます。航海期間も半分以下になり、乗員確保も格段に向上する筈。誰があんなクソみたいな艦を考え付くんすかね、人間性を疑っちゃいます。調達担当やメーカー設計担当の人間を一般隊員と同じ待遇で航海の度に強制的に体験搭乗させて根性を叩き直すべきでしょう。
Goodman80
2024年07月06日 12:40
日本とロシアのミサイル艇同士がにらみ合い!? 北海道沖にロシア艦2隻が出現 自衛隊が警戒・監視
https://trafficnews.jp/post/133623
タランタルなんてまだ動いてたんすね、わかたかとP-3Cで監視したんすね、大変お疲れ様です。あんな船に乗せられて、乗ってるだけでうつ病気になりそう。
ミスターフリゲート
2024年07月06日 15:40
参考に
日本ってマジで危機感持った方がいいと思う
http://blog.livedoor.jp/itsoku/archives/61628118.html

>もう遅いて
>もはや一度滅ばないとダメなレベル。
>もう中国の一部になる以外に方法はないよ
>危機は過ぎてる。諦めるしかないよ
>あとは沈むだけの船やでな、出来る限りゆっくり沈むことを祈るだけよ
ひゃっはー
2024年07月06日 16:53
>そして、その積算の根拠となるエビデンス資料というものを、これもしっかりと確認をしております。

「アルキメデスの大戦」に出てくる櫂少佐みたいな優秀な人材を外部から連れてきた方がいいと思うぞ。
偽陸士
2024年07月06日 16:54
Goodman80様。

>誰があんなクソみたいな艦を考え付くんすかね、人間性を疑っちゃいます。調達担当やメーカー設計担当の人間を一般隊員と同じ待遇で航海の度に強制的に体験搭乗させて根性を叩き直すべきでしょう。

根性が治るかどうか兎も角、設計・性能要求・調達に関わった人達は改善が図られるまではシフトに入るべきでしょう。

自分で設計し調達に関わった船を枕に討ち死になんて、胸が熱くなるじゃありませんか!
Goodman80
2024年07月06日 18:11
偽陸士様
外界から隔離された海の底で、クッサくてセンマイ艦内で棺桶より狭い3段ベットで息を殺して長期間生活するとか、どんなドマゾでも耐えられんでしょ。通常は通常、訓練は訓練、実戦は実戦でしっかり分けて考えるべきっしょ。
ssao
2024年07月06日 18:38
清谷さん、韓国も2社体制です。ハンファとヒュンダイ、この2社仲が悪い意味ようで。
Goodman80
2024年07月07日 09:23
New heavy infantry fighting vehicle spotted in Russia
https://defence-blog.com/new-heavy-infantry-fighting-vehicle-spotted-in-russia/
T-72ベースの兵員輸送車らしいです、イスラエルも同じような車両改造してましたよね。陸自も保有戦車300両と決められたんだから、10式100両+、90式300両で90式が100両余るんだからこれを改造すれば良いじゃん。ま、使えるモノかどうかは別にして、決められたことはちゃんと守らんと、責任有る大人の集団とは言えんしょ。
KU
2024年07月07日 09:28
考えてみりゃあ、軍隊ではない、あくまで国を守るために設けられた一行政機関が戦車や潜水艦や戦闘機を運用しているんですよね^_^;。ある意味スゲえよなあw。


岸田総理が英スターマー新首相と電話会談 就任に祝意伝えGCAPなどでの協力を確認

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1278606?display=1

あんな協議機関も出来たし、まずわ次期戦闘機開発は大丈夫そうですぬ。

万博リングは戦艦大和か 見学者のカメラで現地スタッフが撮影 連想させる情報統制

https://www.sankei.com/article/20240707-BUI5AMEI4FKC7E7X7ZJWJZMF4I/

ここまでされると余程、世間に見られちゃマズいモノがあるに違いまい!とか勘繰りたくなるのが人情^_^;
KU
2024年07月07日 09:36
>T-72ベースの兵員輸送車らしいです、

90式戦車の有効活用考えよ

https://japan-indepth.jp/?p=52366

清谷さんが4年前に書かれた記事ですが、記事中で名前や写真が出てくるヨルダンのアル・ダウザなんて良さそうですけど。センチュリオンベースだし、それこそキュウマルを魔改造する際の格好のお手本になりそうですが。
KU
2024年07月07日 10:19
ウクライナが「迎撃ドローン」を実戦配備 無人偵察機やランセットの撃墜重ねる

https://forbesjapan.com/articles/detail/72225

>ロシアはここ2〜3年、新型ドローンを数多く実証試験したり公開したりしながら、官僚主義的な調達制度のため実戦配備にはウクライナ側よりもはるかに長い時間がかかっている。

防衛省自衛隊も、似たようなモンですかねorz。いざ開発だの調達だの言っても、やれ会議開くだの、やれ稟議書回すだの時間だけ無駄に使う...
キヨタニ
2024年07月07日 10:22
ありがとうございます。

>ssaoさん
>
>清谷さん、韓国も2社体制です。ハンファとヒュンダイ、この2社仲が悪い意味ようで。
ブロガー(志望)
2024年07月07日 20:42
お邪魔します。
 こんな事を書くのも何ですが、防衛大臣がフリーのジャーナリスト「如き」をまともに相手にしたら、他の与党政治家や官僚他から「あいつはフリーのジャーナリスト『如き』と同レベルの人間」と見なされて、まともに相手にされなくなるのではないかと思ったりもします。例えば防衛省の官僚から「フリーのジャーナリスト『如き』にしゃべる奴なんかには何も教えられない。」になったりして。
 部下が上司に従うのは、従わずに上司に「なら他の奴にやらせる。」と言われたら、自分のする事ひいてはその場所での自分の存在理由を失うからです。大臣が官僚に「なら他の奴にやらせる。」と言って、例えば能力はあっても仲間内では少数派になっている人物とか内外のOBとかを招いてやらせる事が可能であれば官僚は大臣に従うのかも知れませんが、日本の組織は目先の人間関係に依存しているが故にそういった事ができないので官僚は大臣に従わないのではないかと。尤もその分「まともではない力」とかには滅法弱いのでしょうが。
 後余談ですが海自は旧海軍の継承者を自任しているので、潜水艦の運用も旧海軍の「押し寄せる敵艦隊をできる限り自国から遠い場所で削る漸減作戦」を継承しているのかも知れません。徳川家康は薩摩の島津に対し「熊本の細川⇒姫路城⇒大阪城⇒紀州徳川家⇒尾張徳川家」という「漸減作戦」を考えていたそうですから、「漸減作戦」は「進攻ルートが限られ、距離が延びると補給か急激に困難になる陸戦の発想」なのかも知れませんが。