【掃海艇火災事故】防衛省と海幕は艦艇の乗員充足率を公開すべき

大変痛ましい事故が起きました。
直接の原因は今後明らかになるでしょうが、事故の背景には乗員の不足があるのではないでしょうか。


火災の海自掃海艇「うくしま」が転覆し鎮火、行方不明の3曹を潜水捜索へ
https://www.yomiuri.co.jp/national/20241111-OYT1T50002/

>福岡県宗像市・大島沖を航行中の海上自衛隊の掃海艇「うくしま」で10日午前に起きた火災で、福岡海上保安部は11日、うくしまが同日午前0時5分頃に転覆したと発表した。現場では消火活動が続いていたが、転覆に伴い鎮火した。

海上自衛隊の艦艇の乗組員は慢性的に大きく不足しています。イージス艦ですら充足率は6割程度です。一人で複数の部署を兼務することも少なくないようです。
機関にしてもその他部署にしても、少ない人数で回すと担当する仕事も増え、兼業も増えます。それで担当の任務を十全にこなせるわけがないでしょう。
また仕事に忙殺されるので、自分の担当部署に関する勉強も中々できないでしょう。当然注意も散漫になる。事故や戦時の被弾に際してのダメージコントロールに人手を割くことも難しいでしょう。

今回の事故の原因がそれだとはいいませんが、川上の原因になっているのではないでしょうか。

更に申せば何度もご案内のように護衛艦や潜水艦に本来乗っているべき医官が乗っていません。例外は海外任務だけです。

もがみ級フリゲートでは本来3隻に対して4組のクルーを用意するクルー制を採用するはずでしたが、実現しませんでした。これはぼくが質問して明らかになったことであり、海幕と防衛省はバックレていました。

都合の悪いことはダンマリというのが防衛省と自衛隊の組織文化です。バレなければいいという組織文化です。当然問題があっても内部で処理すればいいとなりますから、反省も再発防止もしない。だから延々と同じような失敗を繰り返します。
充足率が低い上に、クルー制も導入できない。そうであればただでさえきつい艦隊勤務は、より過酷になります。しかもいじめやハラスメントはどこが悪い、告発者をいじめ倒すという陰湿な組織文化と相余って中途退職もかなり多い。

このようなことを続けていれば、海自の人的資源はどんどん枯渇して自滅を迎えるでしょう。ところが防衛省にも海幕にも当事者意識と能力が欠けている。そして今後も今回のような事故が多発することになるでしょう。

唯一の解決策は充足率の公開です。多くの納税者は国会議員含めてこの惨状をしりません。
充足率の低さ、その低充足率で戦えるか、事故は起こらないのか議論すべきです。
防衛省は「相手に手の内をさらさない」と秘密主義をとりますが、国民が知らない内に自衛艦隊は骨粗鬆症状態になっており、戦時に役に立たなくなっている可能性が高いです。というか現実そうなっています。
であれば海自の予算をいくら増やしても税金を浪費するだけです。

例えば100人の工場で従業員が60人しかいなかったとすれば、事故が起きやすくなるし、事故の際の対処が難しくなることは容易に想像がつくでしょう。海自の艦艇でもおなじことです。

これから先の人口動態を真摯に受け止めて、海自の艦隊の規模は縮小すべきです。ソシテあわせてクルー制を導入すべきです。艦艇の数を半分にしてもクルー制を導入すべきです。艦の稼働率はクルー制のほうが上がるので、艦隊の稼働率は半分より高くなります。

それに無駄な部隊を削る。大石英司氏も仰っていますが、P-1は全部P-8に変えるべきです。その代わり、機数は30~40機まで減らす。能力も稼働率も大きく向上します。維持費も随分やすくなるでしょう。無人機との連携もできる。そのうえで、哨戒用の無人機を採用すればいい。

海上警備は極端な話海保に丸投げすればいい。

US-2部隊も解散でいい。代わりに無人機を使えばいい。エルビット社は無人機に救難ボートを収容したポッドを開発しており、救難任務に使えます。これは既にアジアの国々でも採用されているそうです。所詮飛行艇は夜間や悪天候では着水できない。であれば無人機でボートを落とし、その間にヘリでかけつければいい。整備要員も含めて救難部隊のダウンサイジングと省力化が可能です。

繰り返しますが、艦艇の充足率は公開すべきです。それをやらないと海自は自滅します。その決定は政治が行うべきです。予算を増やすだけが防衛族の仕事ではないはずです。



■本日の市ヶ谷の噂■
清住哲郎防衛医科大学校病院救急部長が2025年1月11日12日に主催するITLS High Threat Course「戦闘外傷救護・初期治療講習」は 清住哲郎1人が取り仕切っており、他の専門家を排除、協力まで徹底的に断っている。 High Threat 「高脅威下」の医療を学ぶ講習ではなく、清住哲郎を超える専門が現れる「脅威」に備えるための自己完結満足型・独裁講習会。 ITLS国際会議に出たことがない清住哲郎と、英語を話せず、国際会議に出ずにNASAで観光していた陸自衛生学校教官が「参加しただけの米国研修」を指導部とする講習(他の正規資格者は完全排斥)。 実態は世界最新の内容を教えるのではく、防衛医大が会場を貸すために許可した「第一線救護衛生員」の教育内容を民間の医師・看護師・救急救命士に教え「自衛隊の医療職はすごいでしょ」と思わせる「広報講習」にして、清住哲郎単独ライブが実態で百害あって一利なし、との噂。



月刊「紙の爆弾」12月号に以下の記事を寄稿しました。
税金を浪費して欠陥機を導入防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態
紙の爆弾 2024年12月号 [雑誌] - 鹿砦社
紙の爆弾 2024年12月号 [雑誌] - 鹿砦社

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
自衛隊「職務中の死亡事故」はなぜ止まらないのか?4月のヘリ墜落で8人死亡、背後に潜む人災の実態とは
https://merkmal-biz.jp/post/77927

Japan in depthに以下の記事を寄稿しました。
新聞テレビが報じない自民党の防衛費GDP比2パーセント公約の撤回
https://japan-indepth.jp/?p=84903

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
航空自衛隊のT-7後継機取得 「官製談合」疑惑が再燃するなか、透明な入札は実現できるのか?
https://merkmal-biz.jp/post/77504/2

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「自衛隊員の手榴弾事故」現状の対策は不十分な訳
旧式の危険な手榴弾が訓練でも使用されている
https://toyokeizai.net/articles/-/831217


Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
率直に言う 陸上自衛隊の戦車は「全廃」すべきだ
https://merkmal-biz.jp/post/77045
「石破首相 = 軍事オタク」は本当か? 防衛知識ゼロの他政治家が国を守れるのか? 石破氏を長年知るジャーナリストが“真実”を語る
https://merkmal-biz.jp/post/76790

月刊軍事研究に「ユーロサトリでみた最新MBTの方向性」を寄稿しました。
軍事研究 2024年 11 月号 [雑誌]
軍事研究 2024年 11 月号 [雑誌]

Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。
防衛省、ベトナムに「資材運搬車」を提供
https://japan-indepth.jp/?p=84403
「軍オタ」が歪める防衛議論(前編
https://japan-indepth.jp/?p=84282
軍オタが歪める防衛議論(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=84315

European Security & Defenceに寄稿しました。
https://euro-sd.com/2024/09/major-news/40266/jgsdf-calls-for-numerous-afvs/

東京新聞にコメントしました。
兵器向け部品の値段「見積り高めでも通る」 防衛予算増額で受注業者の利益かさ上げ 「ばらまき」と指摘も
https://www.tokyo-np.co.jp/article/352551

月刊ZAITENに寄稿しました。
https://www.zaiten.co.jp/latest/

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態
https://toyokeizai.net/articles/-/774627

月刊軍事研究8月号に防衛省、自衛隊に航空医学の専門医がいないことを書きました。
軍事研究 2024年 08 月号 [雑誌]
軍事研究 2024年 08 月号 [雑誌]


Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
「敵に手の内をさらさない」という防衛省、自衛隊の「敵」は国会と納税者か
https://japan-indepth.jp/?p=83101
新聞各紙 残念な防衛関連の未検証記事
https://japan-indepth.jp/?p=82844
日本の報道の自由度が低いのは記者クラブのせい
https://japan-indepth.jp/?p=82748

次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する
https://japan-indepth.jp/?p=81695

次期装輪装甲車、AMV採用を検証するその1
駿馬を駄馬に落とす陸自のAMV採用
https://japan-indepth.jp/?p=81667

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない
やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情
https://toyokeizai.net/articles/-/744651

この記事へのコメント

やれやれ
2024年11月11日 12:27
火事で沈没してしまうし乗員は行方不明...
船は木製だからか空気が溜まったか幸か不幸か水の中で浮いているみたいですね。今なら引き上げは楽かも?とおもってしまいますがどうなるか。

中国が大型無人水上艦を公開 航空ショー、新型ステルス機も登場予定
https://www.asahi.com/articles/ASSCB428CSCBUHBI00WM.html?iref=comtop_International_05
このような海軍向けの展示用桟橋まで作るとは...
景色の様子から雰囲気珠海空港近くだと思いますが
あの周辺はかなりの遠浅なんですよね。
だから珠海空港も埋め立てで作れたわけだし。
漁港や埋め立て船の港はありますがそんなに大規模な港は無いし
フェリーなどの港はマカオのある東側に行かないとないし。
大型船は無理でも小型船なら浚渫してどうとでもなるか。
とりあえず中国兵器売る気満々ですなあ。
KU
2024年11月11日 13:00
>唯一の解決策は充足率の公開です。多くの納税者は国会議員含めてこの惨状をしりません。
充足率の低さ、その低充足率で戦えるか、事故は起こらないのか議論すべきです。

本来なら、そうした事も含めメディアが監視したり議論を行ったりするのでしょうけど、我が国大手メディアは興味も関心も無いときたもんだ(;´Д`)
KU
2024年11月11日 13:14
※<独自>「でっち上げ」辺野古抗議活動制止警備員死亡 事故現場で防衛局職員批判の横断幕

https://www.sankei.com/article/20241111-QRF7XRECDFIBBCHHQPVKLLNFR4/

平和運動+市民団体を名乗れば何やっても許される、ってかorz

※スウェーデン国防省、C-390選定 NATOで5カ国目  

https://www.aviationwire.jp/archives/312460

で、我が国が誇る日の丸輸送機わ、何時になったら売れるんですか?




やれやれ
2024年11月11日 15:52
Goodman80さん、
似ているのでそれかも知れませんね。
今週ニュースで色々出るでしょうから楽しみです。

山洞
2024年11月11日 17:44
数年前に同型艇もエンジンからの排気漏れを起因とする火災事故起こしてるんですよねこれ
ssao
2024年11月11日 19:56
https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2020/MA2020-5-22_2019kb0170.pdf

退役した同型艇のすがしまがこのような事故を起こしているので充足率より老朽化による欠陥の方が大きいのではないでしょうか。火災警報器もその場所だけなかったようなので。

充足率が足りていればより早く検知できたかもしれませんが。