イタリアがP-1哨戒機を導入することはありえない。

竹内修氏のイタリアがP-1を採用する可能性があるという記事です。ですが、ぼくは、それは実現しないと思います。単にエアバスから譲歩を引き出すための当て馬だと思います。

日本の軍用機「初の輸出」に現実味 「win-winだね」ってそういう意味か… かつてないほど接近する日伊
https://news.yahoo.co.jp/articles/c706ff5c714610b7ec1207b1daab3b23290b7967

>イタリアが加盟するEU(ヨーロッパ連合)は2025年3月4日、ヨーロッパの防衛力を強化するため、最大8000億ユーロ(約125兆円)の資金を投入する計画を発表しており、おそらくイタリアは地中海方面で活動するロシア海軍に対する備えに、少なからぬ資金を投入するものと考えられます。

> イタリアは日本と同様、自国で賄えない防衛装備品の多くをアメリカから輸入してきました。周辺のイギリスやドイツなどはボーイング737をベースに開発されたP-8A「ポセイドン」哨戒機を導入していますが、現在、ヨーロッパ諸国の間にはトランプ政権に対する反発から、アメリカ以外の国から防衛装備品を導入しようという動きが広まっています。
>ロシアの軍事行動の活発化と、ヨーロッパ諸国の「アメリカ製防衛装備品離れ」が重なったことで、イタリアはP-1に白羽の矢を立てたというわけです。

まずP-1の調達コストが高すぎる。性能、信頼性が高いP-8の二倍です。そしてシステムが低性能、対潜能力が低いのは周知の事実です。最大の問題は約三割の低い稼働率です。

これは主としてエンジンの問題(ついで光学電子センサー)なので改修のためにはエンジンの交換しかない。調達機数が10機程度として、そのためにエンジン換装しますか?という話です。そしてシステムもレオナルドが作り直しますか?
そしてエンジンも機体も全部専用です。つまり日本から輸入して相応の量をデポしておかないといけない。これがP-8であればエンジンも機体も737の流用ですから、なんなら民間市場からでも調達できる。

米国からの装備調達が政治的に問題であるならば、P-8ではなく、エアバスのA319 MPAに乗る方が現実的でしょう。民間機の流用ですから、P-8同様に、運用コストが安く、高い稼働率も期待できます。イタリアがプロジェクトに参加するならば相応の生産や開発分担が、レオナルドも期待できます。何なら一部のシステムだけでもイタリア仕様にすることも可能でしょう。何かあっても欧州域内の機体ですから対処は迅速にできるし、近代化も容易でしょう。
https://www.airbus.com/en/newsroom/press-releases/2025-02-airbus-signs-new-study-contract-to-define-frances-future-maritime

イタリアがP-1を導入する理由はひとつもありません。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
防衛省、陸自用汎用無人機開発へ
https://japan-indepth.jp/?p=87091

ES&D誌に寄稿しました。
Japanese MoD initiates project to develop VTOL UAV for ground forces
https://euro-sd.com/2025/04/major-news/43491/japan-mod-to-develop-vtol-uav/

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
高コスト・低品質な国産戦闘服:自衛隊装備調達の問題と改革の必要性
https://japan-indepth.jp/?p=86904
石破首相のC-17導入発言の真意
https://japan-indepth.jp/?cat=38

ES&D誌に寄稿しました。
Japan orders 17 Boeing CH-47 Block II Chinook helicopters
https://euro-sd.com/2025/02/major-news/42595/japan-orders-17-ch-47-block-ii/


過去の著作の電子版が発売になりました。
『ル・オタク フランスおたく物語』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1PJ1YL/
『弱者のための喧嘩術』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1L9SPW/

防衛破綻 - 清谷 信一
防衛破綻 - 清谷 信一
専守防衛 - 清谷 信一
専守防衛 - 清谷 信一


Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
日本の国会議員は文民統制を理解していない
https://japan-indepth.jp/?p=86366
日本の装甲車事業は日本製鋼所と防衛省が潰す
https://japan-indepth.jp/?p=86042


補正予算という麻薬が将来の国民を蝕んでいる
https://japan-indepth.jp/?p=85936

海自の無人機、MQ-9Bの調達とインド軍の調達の違い
https://japan-indepth.jp/?p=85823

 European Security & Defenceに以下の記事を寄稿しました。
Japanese MoD selects Beechcraft T-6C as the JASDF’s new primary trainer
https://euro-sd.com/2024/12/major-news/41765/japan-selects-t-6c-for-jasdf/

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
航空自衛隊 次期初等練習機選定は審査が僅か一ヶ月で試乗もなし
https://japan-indepth.jp/?p=85525

月刊「紙の爆弾」12月号に以下の記事を寄稿しました。
税金を浪費して欠陥機を導入防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態
紙の爆弾 2024年12月号 [雑誌] - 鹿砦社
紙の爆弾 2024年12月号 [雑誌] - 鹿砦社

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
自衛隊「職務中の死亡事故」はなぜ止まらないのか?4月のヘリ墜落で8人死亡、背後に潜む人災の実態とは
https://merkmal-biz.jp/post/77927

Japan in depthに以下の記事を寄稿しました。
新聞テレビが報じない自民党の防衛費GDP比2パーセント公約の撤回
https://japan-indepth.jp/?p=84903

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
航空自衛隊のT-7後継機取得 「官製談合」疑惑が再燃するなか、透明な入札は実現できるのか?
https://merkmal-biz.jp/post/77504/2

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「自衛隊員の手榴弾事故」現状の対策は不十分な訳
旧式の危険な手榴弾が訓練でも使用されている
https://toyokeizai.net/articles/-/831217

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
率直に言う 陸上自衛隊の戦車は「全廃」すべきだ
https://merkmal-biz.jp/post/77045
「石破首相 = 軍事オタク」は本当か? 防衛知識ゼロの他政治家が国を守れるのか? 石破氏を長年知るジャーナリストが“真実”を語る
https://merkmal-biz.jp/post/76790

月刊軍事研究に「ユーロサトリでみた最新MBTの方向性」を寄稿しました。
軍事研究 2024年 11 月号 [雑誌]
軍事研究 2024年 11 月号 [雑誌]

Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。
防衛省、ベトナムに「資材運搬車」を提供
https://japan-indepth.jp/?p=84403
「軍オタ」が歪める防衛議論(前編
https://japan-indepth.jp/?p=84282
軍オタが歪める防衛議論(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=84315

European Security & Defenceに寄稿しました。
https://euro-sd.com/2024/09/major-news/40266/jgsdf-calls-for-numerous-afvs/

東京新聞にコメントしました。
兵器向け部品の値段「見積り高めでも通る」 防衛予算増額で受注業者の利益かさ上げ 「ばらまき」と指摘も
https://www.tokyo-np.co.jp/article/352551

月刊ZAITENに寄稿しました。
https://www.zaiten.co.jp/latest/

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態
https://toyokeizai.net/articles/-/774627


Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
「敵に手の内をさらさない」という防衛省、自衛隊の「敵」は国会と納税者か
https://japan-indepth.jp/?p=83101
新聞各紙 残念な防衛関連の未検証記事
https://japan-indepth.jp/?p=82844
日本の報道の自由度が低いのは記者クラブのせい
https://japan-indepth.jp/?p=82748

次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する
https://japan-indepth.jp/?p=81695

次期装輪装甲車、AMV採用を検証するその1
駿馬を駄馬に落とす陸自のAMV採用
https://japan-indepth.jp/?p=81667

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない
やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情
https://toyokeizai.net/articles/-/744651

この記事へのコメント

Goodman80
2025年04月14日 12:14
海自も高性能で高価なP-1は倉庫の奥の奥に大事に終っておいて(あれ?)、とっておきの場面で使用するべきでしょう。通常業務ならシーガーディアンやATR 72ASW等の安い機体で行えば宜しい。経費削減の為、A319 MPAにするのも手かと、空中給油機もエアバス A330 MRTTにすれば欧州機で統一できるし。
やれやれ
2025年04月14日 13:36
まあ当て馬でしょうね。
あとはリップサービス位のもので。
そんな事は竹内さんも先刻ご承知でしょう。
最初から当て馬って書くと誰も読んでくれないですから。
真面目に比較すると勝ち目の無い事は直ぐに分かりますし。
フランスだかに提案したようなドンガラだけ販売でエンジンもアビオも一切合切お宅の好きなものを選んでいいからと言う売り方するかも知れませんが。
やれやれ
2025年04月14日 16:34
世界の“米国離れ”で注目高まるフランスの軍事産業、日本はアメリカ製武器購入依存から脱却できるか?
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/37268
ご参考まで。
Goodman80
2025年04月14日 18:01
関税の次は安全保障、トランプ大統領が本気で迫る日米安保体制の双務化
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/87644
>真の武装中立路線にも踏み切れず、米側の要求に応ずる防衛力強化も決断できなければ、日本は、米国からも見放され、いずれ中国の属国になる道を歩む危険性もある。
今の自衛隊じゃ武装中立には程遠い戦力しか無いし、しかも出来る人材など皆無。組織も人材も装備も一から作り直す時間も無いんだが、米国様の御威光をもって少しでも良くなるようガッツリご命令して頂くしかない。いと悲し…。
ミスターフリゲート
2025年04月14日 20:38
参考に
【日米演習】台湾有事、空自戦闘機が中国艦を攻撃する模様😲
http://blog.livedoor.jp/googleyoutube/archives/52016308.html

コメ欄は首突っ込むべきじゃないって声が多いが、状況によるな。在日米軍基地も攻撃されようなら、嫌でも巻き込まれるし、攻撃されなくとも南西諸島近海の警戒には動かざるを得ないだろうが。

>結局のところ国民が米軍に反対し、米軍を追い出さない限りは台湾有事は阻止ができない。
そして国民民主党がそれをするわけは1000%ない。
米軍の狼藉に真っ向から反対しているのは山本太郎のみ。

難しいところ
Goodman80
2025年04月15日 08:19
20mmリモートウェポンステーション
https://drive.google.com/file/d/1K__KcuMxi1OK8O_-Yf31u4kvLk0vG9rE/view
誠におくらばせながらやっと20mm機関砲RWSのテストを行うようです。まあ、発注先が日本製鋼なんで全く期待は出来ないんですが。この後ノロノロと25mm、30mmとかやって行くんだろうな。RWSも個人火器等も無しに海賊対策で海外とか頭オカシイ、世界中の海賊は海自の担当でしょ。
Goodman80
2025年04月15日 08:24
誠にすいません
防衛装備庁、水上艦用能力向上型機関砲供試器材を契約
https://jm2040.blogspot.com/
もうテストは完了済みの様です。
ミスターフリゲート
2025年04月15日 08:35
参考に
過去最大、日本人89万人減 24年推計で1億2029万人
https://www.47news.jp/12446601.html
http://blog.livedoor.jp/itsoku/archives/62289318.html
いくらなんでも減りすぎ。
移民受け入れているが、高度人材は少なく不良外国人ばかりで治安は悪化、コミュニティは乗っ取り。移民受け入れようにも地獄。
手遅れだろうが、自国民の人口増やすことはできないのか?
ガハハ
2025年04月15日 11:50
> 米側に「一つの戦域」構想伝達
無敵皇軍自衛隊様のガラパゴス国損装備では、米帝様とインオペできず一つの戦域で戦えないのでは? ガハハ
やれやれ
2025年04月15日 12:01
死者が相次ぐ陸自「レンジャー訓練」の実態 のどの渇きのあまりに尿を飲み、わざと崖から落ちて離脱…
https://dot.asahi.com/articles/-/254368
現場でも疑問に思われていたようで。ご参考まで。
ガハハ
2025年04月15日 12:22
硫黄島から進歩してないどころか退化してる無敵皇軍陸自様、ガハハ
米帝様はアイスクリーム食って3交代でしたっけ?
偽陸士
2025年04月15日 22:07
ミスターフリゲート様。


>>結局のところ国民が米軍に反対し、米軍を追い出さない限りは台湾有事は阻止ができない。
そして国民民主党がそれをするわけは1000%ない。
米軍の狼藉に真っ向から反対しているのは山本太郎のみ。

>難しいところ

えっ、何が難かしいんですか。
曲がりなりにも、デモが出来て大統領選や総統選を出来る国々と戦車に挽き肉にされる国。
どっちに付くか考えるまでもない。

そもそも台湾の住人が大陸の政治なんかヤダと言ってるんだから、無理強いするなら抵抗されるのは当然だし、日本もそんな凶暴な体制とのお付き合いは遠慮するのは当たり前。

隣が武器を用意するなら、こちらも武器を揃えれば良い。
こっちが丸腰になる必要も無ければ、圧制者に支配され服従される義務は無い。
相手が話し合いに応じるなら、我らも武器を売却すれば良い。

法を説く前に人を見よ。
ブロガー(志望)
2025年04月19日 22:51
お邪魔します。
 根底には「軍用品>>>民生品」「専用品・特注品>>>汎用品」といった概念があるのではと思われます。かつて「零戦を試験飛行のため滑走路に痔運んだのは牛車」のようにそれはある程度「正しかった」のでしょうが(戦前の日本は高度経済成長以降のような経済大国ではなかったか)、その後必ずしもそうは言えなくなりました。民生品・汎用品の方が数多く作られ多くの人に使われる事でコストが低く信頼性が高い場合があります。哨戒機は広い領域をカバーするために「数」が必要ですし、多くの機体を短くない時間飛ばすため「信頼性」も重要です。更に現代ではエレクトロニクスやソフトウェアの重要度が増しています。もっと言えば日本は航空機開発の経験「自体」が少ないので、少ない経験で作った専用機よりも経験豊富な国が作った汎用機の方が優秀かもと思ったりもします。尤も戦後の日本は「(将来「撃ちてしやまん」の人間が出てくる可能性を否定しきれないからか)戦おうとしても戦えない国」を目指してきたので、その目的には合致しているのかも(日本以外に自らそれを目指す国は無いか)。
Suica割
2025年04月21日 12:25
ブロガー(志望)様

哨戒機の名機であるP3Cは、元は旅客機のエレクトラですからね。
昔から米軍は、正解肢を選んでいたとも言えます。
海自のなかには、767改造でいいんじゃないという連中は居ました。
今考えると、一番無難だったのでは?とも思います。
上手くすれば、米軍にとっては戦力化も早い。アメリカに金も落ちる。便宜払ってやろうとなってもおかしくはなかった未来もあったと思います。
ふきのとう
2025年04月24日 11:38
かつての空自のF-X調達でもスウェーデン機やフランス機の名前が出たことはありましたが、その程度の扱いってことなんですかね。