財務省、財政制度分科会(令和7年11月11日開催)防衛「資料」を読むその6

本年も恒例の財務省、財政制度分科会(令和7年11月11日開催)防衛「資料」を読んでいきます。総理が高市氏、財務大臣が片山氏で「責任ある積極財政」を標ぼうしていますから現場は苦労しているのではないかと思います。
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防衛装備品の調達・研究開発の在り方等
P13
防衛装備品の調達・研究開発のあり方等(総括)
○ 我が国の防衛力を抜本的に強化するためには、大幅に増加する予算を効果的・効率的に活用していくことが重要。
○ 防衛装備品は、市場価格の存在しないものが多いという特殊性があり、原価を積み上げた価格をベースに調達することが多い(原価計算方式)。競争が働かないこの方式のもとでも企業が効率化を進める意欲を持つような仕組みづくりが必要。
○ 中長期的に防衛装備品の能力向上を図っていくために、防衛技術に係る研究開発は重要な要素。その際、「研究ありき」ではなく、研究成果を防衛装備品の開発に繋げていくための仕組みづくりも課題。
○ 防衛生産・技術基盤の維持・強化も重要であり、防衛産業における官民連携のあり方についても検討が必要ではないか。

財務省の立場としては防衛費を大幅に上げるのであれば、その使い方を適正、効率的に行えということです。競争原理がはたらず、原価計算も不透明じゃないのか?
研究開発にしても必要な研究開発ではなく、やりたい研究開発に偏っていないか、という問いかけであり、また防衛産業との関係性も見直すべきだということです。

防衛産業の現状
調達関係
装備品は、「原価計算方式」による調達が多い。これは企業にとってコストをかけた方が利益が増える側面があることが課題。加えて「原価計算方式」の基準は、透明性が不足。

例えばより複雑で工数の多が多いほうが企業が儲かるということです。例えば部品点数が100個で工数が300の製品よりも、部品点数が500個で工数が5000の方が企業が儲かるわけです。部品点数が多くなれば故障は増えるし、工数が増えればそれに利益が載せられますから工数が多いほどもうかる。結果は信頼性が低く、調達・維持コストが高い装備になる、ということです。
そして防衛省にはコストを主体的に監視するための機関やデータベースがなく企業のいうことを信じるしかない。だから電気F社では社内広報に堂々と防衛部門の利益率は18パーセントなどと書いてあったりするわけです。
一つの方法はできる限り海外製品と競わせることです。他国の製品は市場でもまれて性能、信頼性、コストでの合理性で淘汰されています。


研究開発
研究成果が装備品の開発に繋がって行かない場合がある。
研究開発は後に育っていく技術の取りこぼしをなくし、研究委託・補助先に研究成果へのコミットメントを求めていくことが課題。

研究開発でも全く新規の基礎研究である場合、歩留まりはあまり問題ではない。何に利用できるかわからない研究も多いからです。そうはいってもより高い成果を出すような目利きが必要です。このために終了後に第三者機関による検討や評価が必要です。

それから防衛省の開発では技術実証と装備化のための研究の境界があいまいです。例えば装備化前提であれば、必要な部隊に配備するための単価や開発コストがリーズナブルでなくてはならないはずです。ところがあたかも技術実証であるかのようにこのような要素が検討されていない。例えば壁面透過レーダー開発では単に外国製品が日本の電波法で使えないという理由でした。そしてそれを陸自に配備する場合の個数や予算すら検討されておらず、また既に諸外国で多く製品が開発されており、それらに対する優位性をも明確ではなかった。結果開発のための開発で終わって装備化されなかった。

技術実証にしても装備化にしてもこれも外部の第三者機関が評価すべき。それは防衛省のよくやる「有識者会議」で呼んでくる御用学者ではなく、まともな人材を採用すべきです。かつての無人機FFRSの外部評価は手放しの礼賛でしたが、信頼性が低く東日本大震災では一度も飛べませんでした。つまり外部の御用学者は有害ということです。

そして防衛省の技官は実際にモノづくりをした経験がない。実際に企業の開発や生産の現場にいた人間をリクルートすべきです。

官民連携
諸外国では防衛産業における枠組みが存在。

このようなフレームは我が国に存在しない。

今後の主な改革の方向性
① 適正なコスト水準の設定(総原価関係)
・「コストデータバンク」を活用することで、事業間の原価を比較し、適正なコスト水準を算定 することで、効率化のインセンティブとすべき。
② QCD評価の適正化(P率関係)
・P率の算定にはQuality・Cost・Delivery評価を採用しているが、透明性を確保しながら、水準(5〜10%)の妥当性を検証していくべき。
・基準内容の曖味さをなくすとともに、コストデータバンクに係る原価情報の開示度やコスト削減額に応じて、企業努力の評価を行うべき。
・基準内容の曖昧さをなくすとともに、コストデー タバンクに係る原価情報の開示度やコスト削 減額に応じて、企業努力の評価を行うべき。

研究関係
研究関係 ・研究を「やりっ放し」にせず、適切にフォローアップする仕組みを整えるべき。 ・研究委託・補助先のインセンティブとなる契約の仕組みを検討するべき (懸賞金制度、報奨金制度など)。
・研究継続の可否について、厳格かつ透明性のある審査を行うべき。

官民連携
・諸外国では、防衛産業における官民連携の枠組みが存在。


これらの方策を実現するためには開発管理や調達部門の増員が必要。現状欧州主要国と比べて、一桁少ない。しかも会計士もおらず、幹部は2年ごとに移動するので、その分野の知識を蓄積する時間がないし、自分の在任中だけ無難にこなせればいいと無責任に考えがちである。しかも調達期間が諸外国に比べて何倍も長いこともあり人材がそこに張り付いている。たとえば諸外国では5年でやる事業を20年かけていれば、人手は4倍必要になる。まずはここから手をつけるべき。増員と事業管理をする人材の育成が急務。

■本日の市ヶ谷の噂■
11月13日から15日にノースカロライナ州で開催されたITLS米国本部の国際会議では日本のITLS Hign Thretコースの内容が本来の要件を満たしていないとの疑いをかけられた。
ITLS high-threat の violent situations を防衛医大のITLS High Threatコースは防衛医科大学校病院 外傷・熱傷・事態対処医療センター長、医学博士 清住哲郎 1等海佐がviolent situations 「殴る蹴る」の暴力と誤訳したのではとの疑い。
violent situations とは大規模地震や津波等のNatural Disaster 「大規模自然災害」の対義語。平時の対応力を超える人的災害のことを指すので殴る、蹴る、刃物で刺す、拳銃で1発くらい撃つことを指しているのではない。ここの認識を間違えるとITLS high-threat の教育シナリオが完全に狂う
そのせいか、今年東部方面隊の予備医官の訓練では正門に自動車が衝突して2名が負傷というシナリオだったことに納得がいく。営門での交通事故が訓練内容であった。交通事故の患者2名であれば普段の救急外来で診ているので予備自衛官の招集訓練でする必要はない。
招集訓練に医師が参加するためには1日に25万円ほど必要。5日間となれば125万円だ。不在時に他の医師による代行が必要だからだ。とても教育訓練招集手当で足りる額ではありません。それでいて普段の交通事故と同じ想定。
常識的に考えれば戦傷病といえば殺傷力の高い突撃銃の銃創に高性能爆薬の爆傷、大量傷病者のはずです。今回の訓練はこれらの症例について学び、国防の役に立ちたいと公募予備自衛官(技能)に志願した医師や看護師を大いに失望させた。金額ではなく、医者が病院を不在にするとは大変なことであり、そうまでして国防に尽くそうという医官は今後予備自衛官にはならなくなる、との噂。

Kindleで有料記事の公開を始めました。
いずも級、22DDHは駆逐艦に非ず。 (清谷防衛経済研究所) - 清谷信一
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暴力装置 (清谷防衛経済研究所) - 清谷信一
暴力装置 (清谷防衛経済研究所) - 清谷信一

東洋経済オンラインに寄稿しました。
拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653

ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817

過去の著作の電子版が発売になりました。
『ル・オタク フランスおたく物語』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1PJ1YL/
『弱者のための喧嘩術』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DY1L9SPW/
防衛破綻 - 清谷 信一
防衛破綻 - 清谷 信一
専守防衛 - 清谷 信一
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この記事へのコメント

偽陸士
2025年11月25日 11:21
片山さつき。
以前は防衛予算にも容赦無かった筈。
別人では無いかとすら思える。

とにかく、期待外れだ。
日本にとって石破政権が最後の砦だったのだろう。
あとは滅亡を待つばかりだ。
ミスターフリゲート
2025年11月25日 13:03
市ヶ谷
もう防衛医大は解体すべきでしょう。
まともな教育ができない医大なぞいらない。
今の医官や衛生兵、生徒も教官も全員強制的に海外留学させて学び直した方が早いまである。
偽陸士
2025年11月25日 14:14
仏メディア、自発的に参加可能な10ヶ月間の兵役制度が発表される見込み
https://grandfleet.info/european-region/french-media-voluntary-10-month-military-service-expected-to-be-announced/
欧州では兵役義務の議論、再導入、拡大が相次いでおり、仏メディアも24日「マクロン大統領が今週にも自発的な兵役制度を発表するだろう」と報じ、国民が自発的に参加できる10ヶ月間の兵役制度を導入して有事の際の人的リソース供給源を拡充するらしい。


日本は何時まで現役至上主義を続けるのだろう。
やれやれ
2025年11月25日 14:48
財務省の方が余程論理的で正しい指摘をしているのに防衛省と来たら...
結局防衛産業と一緒に甘い汁を吸うこと以外考えてないのでしょうね。
どうせ戦争は起こらないし訓練だけやっとけば十分、なのだから...
なのに台湾有事を起こそうとしている首相が身近にいるとは思いもよらなかったでしょうね(汗)。

■本日の市ヶ谷の噂■
自衛隊の医官は当てにならないので米軍の軍医に来てもらった方がよいのではないでしょうか?日本のお遊びと言うと失礼ですがマトモな戦傷医もいないのだからその道の経験者に実技指導含めて色々教えを請う方が現実的かも知れません。
戦争や兵器に関する単語は分からなくても英語で直接話を聞くほうが誤解が少なくてお互いのためかも知れませんよ。
やれやれ
2025年11月25日 15:13
「台湾有事」発言の高市早苗氏が首相である限り日本経済はボロボロになる 一刻も早く「ポスト高市」を真剣に議論すべきだ
https://dot.asahi.com/articles/-/270207
お節ご尤もなんですが無理でしょうね。
右翼だけじゃなく他の国民が支持している時点で無理。
日本に決定的な打撃を加えられて支持率が1割にでもならないと
難しいのではないか?
どのみち日本に取って良いことは何もなさそうだ orz

「ばらまきをしてどうやって国力強くなるんですか?」…高市早苗首相「積極財政により国力を強くする」発言…「モーニングショー」玉川徹氏が疑問
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f27bfafea0611c87c36e2d0336d6ec7bfa4e253
この辺のやり取りをTVで見たかったですね。
誰もアベノミクスの問題について積極的なツッコミを入れる番組が無かったので面白かったかも?

ご参考まで。
ミスターフリゲート
2025年11月25日 19:00
参考に
〈敗戦国には原爆を5発落とせばいい〉 中国で吹き荒れる日本への暴言 「駐大阪総領事は“ツイ廃”と揶揄されるほどのSNS中毒」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f49dab1dc9df38d1750e5d2a5acce12295826bf2  

やれやれさん
市ヶ谷の件、激しく同意です。
333
2025年11月25日 22:11
次は韓国が何ぞ言う順番なのか?

「韓国基地から中国を攻撃」で“台湾有事は日本の問題”ととぼけていた韓国人は真っ青に 在韓米軍司令官の宣言が突きつけた踏み絵
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f0fb916225af82f99f18a7b776be2be565450af

ひょっとして、アメリカは日韓がずっと曖昧な態度を取って来てるから「お前ら、どっちに付くねん? はっきりしてもらおうか!」と踏み絵をして来てない?
まあ、その為の韓国の原潜なんでしょうねえ。

いざという時、「ここから北京を狙いまっせ」という話ですわね。(ひょっとしたら韓国の原潜が黄海から?)
しかし、米中関係は強固とか言ったあとでこのネタを出しますかw
強固というより狂虎やんw
中国からしたら「おい!さっきの電話会談はなんやったんや? おちょくっとるんか!」ですね。
偽陸士
2025年11月26日 03:06
https://youtube.com/shorts/uQ8n7RdEVf4?si=Bs44ozbODA6cneGv
This is the perfect model for shotgun enthusiasts who say: “I want a magazine-fed shotgun, but in 20 Gauge.”
To own this unique shotgun that reflects your spirit, we invite you to our exclusive authorized dealers.

https://youtu.be/w-oJJCyQCcA?si=ZyUcnWx7ZGZ4YP__
This is my full unboxing and range review of the Derya DY12Y — a compact 12-gauge AR-style shotgun with a lot of potential. I break down the fit & finish, controls, and then take it to the range for live testing using 00 buck.



今年のクリスマスプレゼントはこれが最適かも。(笑)
やれやれ
2025年11月26日 03:25
【衝撃】新世代アサルトライフルM7の6.8mm弾の威力!台湾に集う兵器・武器の展示会で見た、現代兵器の進化と変化とは?
https://www.youtube.com/watch?v=cRf9sr9Wp98
11:00位からSIGのM7の動画になります。
5.56、7.62でも穴のあかない防弾の鉄板に大穴開けてます(汗)。
そんなに威力あるの?
他の映像も含めてご参考まで。