財務省、財政制度分科会(令和7年11月11日開催)防衛「資料」を読むその9

本年も恒例の財務省、財政制度分科会(令和7年11月11日開催)防衛「資料」を読んでいきます。総理が高市氏、財務大臣が片山氏で「責任ある積極財政」を標ぼうしていますから現場は苦労しているのではないかと思います。
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P17 先端的研究事業において成果を生み出す運用のあり方
○ 防衛省は、防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を強化するため、先端的研究事業を通じて、民間技術を活用し た革新的・萌芽的技術の発展・育成を行ってきたが、これまで装備品の開発に繋がった実績はなく、国民の目に見える成果を生み出し ていくことが必要。
○ そのためには、研究を「やりっ放し」にせずに、研究終了後の状況を体系的に把握するためのフォローアップの仕組みを設けることで、研 究結果を最大限生かすよう取り組むべきではないか。その上で、研究委託・補助先のコミットメントを高めるため、得られた成果に対して 報酬やインセンティブを与える方法の導入も考えるべきではないか。また、成果の見込みが低いものについては、中間評価での事業終了 や予算額の減少等を厳格かつ透明性をもって運用するなどの対応を行うべきではないか。
○ その中でも、「ブレークスルー研究」は、高リスクであるにもかかわらず、評価や選定に関する具体的な運用基準等が定められていないまま、研究テーマの選定が進んでいる状況であり、早急に運用体制を整えることが不可欠。

近年防衛省の研究開発費は大幅に増加しているが、その使い方はかなり粗雑である。一つの理由は先端的や基礎研究をやってこなかったので、その評価ができる人間が育っていないということがあるが、組織として評価のシステムが貧しい、それから防衛省や自衛隊の秘密主義、隠ぺい主義で互いにかばいあう文化が存在する。
「評価や選定に関する具体的な運用基準等が定められていないまま、研究テーマの選定が進んでいる」ところはまさにそういうところが原因だろう。

先端技術や基礎研究は防衛省では評価できる人間がいないので、外部の有識者を招くべきだ。だが防衛省は事業の外部評価にしてもこれまで「御用学者」ばかりを選定してきたので厳しい批判が受けてこなかった。単にやっていますアピールでしかない。
きちんとダメなものはダメであるという評価をする外部からの目が必要だ。
技術実証や装備化前提の研究開発でも実力が低い。そもそも自分たち具体的に製品を開発したことがないに上に、開発関係者、それを評価する立場の人間が海外でのコンファレンスや見本市などに頻繁に訪れて、他国の開発関係者や軍のユーザーなどとの情報交換などをしていないことがある。しかもポジションは2年単位で交代なので、プロジェクトを通して責任をもつ文化がない。
例えばレールガンにしても開発はレールガン本体のみである。だがレールガンは近接信管が搭載できないために、極めて高い探知と組み合わせないと命中しない。本来探知技術とセットで開発すべきだ。それ以前に米軍では既にレールガンの開発はやめている。それは実用性が低いと判断したからだが、米軍より後から開発を初めての装備化の可能性はどの程度なのかきちんとリサーチしているのか。また将来のユーザーある海自や陸自と装備化の可能性を詰めているのか。
過去の研究も技術実証研究と装備化のための研究の境界が曖昧である。例えば装甲車両
ハイブリッド駆動システムは装輪、装軌ともに本来実用化を目指して行うべき研究だが、開発が実質的に終わった現状でもこれを装備化する具体的な計画はない。
ユーザーである自衛隊が必要な技術ではなく、自分たちがやりたい、あるいは開発ができそうなもの絞っていると自衛隊側からは批判も多い。

財務省は以下のように問題点を指摘している。

フォローアップの課題
・令和6年度に公表された予算執行調査によれば、安全保障技術研究推進制度の研究終了
事業(82件)のうち、継続事業(48%)のフォローアップがされていなかった。 ・令和6年度以降、終了案件をすべてフォローアップするよう運用が改められているが、防衛装備 品に繋がるか否かの判断項目やフォローアップ期間など、運用方法が制度化されていない。

研究先・補助先のコミットメント向上の課題
・端的研究事業では、委託・補助先の大学や企業等において自己負担が生 ずることがない。特に、安全保障技術研究推進制度は、「防衛装備品にすぐ に適用可能な研究を求めているものではありません」「研究の内容に介入する ためのものではありません」と公に示す等、成果への関与が難しい特性。
・他分野では、成果へのインセンティブを設ける研究制度も存在。

中間評価・ブレークスルー研究の運用体制の課題
安全保障技術研究推進制度では、中間評価37件中1件のみ中止(~R5)。ステージゲートがある先進技術の橋渡し研究と対照的(55件中13件が中止)。 ・ブレークスルー研究では、既に先導研究を開始しているが、本格研究への移行 左記の継続事業(39件)について、「将来的に防衛分野時におけるステージゲートの設定基準など、運用体制が十分に整っていない。


これらの指摘は防衛省、装備庁に技術を評価する人材と評価のためのフレームが存在ないことを意味している。無論基礎研究がそのまま装備開発に結びつくことはないが、それでも評価は必要あり、技術実証や装備化前提の研究であれば尚更である。
また次ページにあるように諸外国の制度をよく研究した上で取り入れるべきである。ただその前提として開発や評価の人的資源の質量ともに増大が必要だ。そのためには自衛隊を図って人件費を捻出することも必要だろう。



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いずも級、22DDHは駆逐艦に非ず。 (清谷防衛経済研究所) - 清谷信一
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暴力装置 (清谷防衛経済研究所) - 清谷信一
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The Board of Audit reports low operational rates for P-1 patrol aircraft (English Edition) - KIYOTANI, SHINICHI
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東洋経済オンラインに寄稿しました。
拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653

ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817

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防衛破綻 - 清谷 信一
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専守防衛 - 清谷 信一
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この記事へのコメント

やれやれ
2025年12月02日 16:23
「きちんとダメなものはダメであるという評価をする外部からの目が必要だ。」
防衛関係だけじゃなく民間の開発にも言えることですけどね。
あからさまに失敗しましたと報告する企業は珍しい。
一定の成果は得られたとか、コストが合えば商品化できたとか、
量産性に難アリで製造工程を作れないので製品化は辞めましたとか、
他社と同等ですが後発なのでいまから市場を取るのは厳しいのでとか、巧妙に失敗を回避するような物言いで誤魔化すのが好きなんですよね。仮に事実としても、だから失敗しましたとは結論付けない。
失敗しましたと言うと給料の査定にも響きますからね。
というのもあって思い切った開発をするモチベも失われてお茶を濁すようなものばかり作ってきて衰退したと言うのもありますが。
失敗でも成功でもいいですがきちんと成果としてレポートや論文を残して誰でも閲覧可能にして欲しいものです。
企業は失敗した方は知りませんが成功した、成果を出したものは一応発表しているし特許も出してますからね。

「ハイブリッド駆動システムは装輪、装軌ともに本来実用化を目指して行うべき研究だが、開発が実質的に終わった現状でもこれを装備化する具体的な計画はない。」
この辺は他もやっているのでうちもやってみました程度の事のような気がします。戦略的(低燃費を期待)とか戦術的(モーターだけで駆動して静音化)とか将来どのような装甲車が必要だからこの技術が必要か?というのを真面目に考えずとりあえずやってみました、一定の成果が見られたので終了します、ではねえ。
これはゴム履帯や戦車のガスタービン機関にも言えると思います。
せっかく開発したゴム履帯は使われず、ガスタービンはM1戦車を見れば最初から燃費悪いの分かってて作ってみたらやはり燃費悪くて使い物になりませんでした、では情けない。やる前から分かるだろうに。
ハンファはゴム履帯の戦闘車を売り込もうと躍起なのに日本と来たら。

無駄な開発にならないことを祈ります。
やれやれ
2025年12月02日 16:27
タイヤで走る「装輪戦車」アジアで大増殖中! その“今っぽい”理由とは? キャタピラ式は時代遅れに?
https://trafficnews.jp/post/610734
今更ですがご参考まで。
ミスターフリゲート
2025年12月02日 17:05
参考に
トランプ大統領、高市首相に台湾巡り中国を刺激しないよう助言-WSJ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-26/T6CXHHT9NJLU00

>米国側の説明によれば、トランプ氏は高市氏に対し、台湾を巡る発言の語調を和らげるよう助言した。トランプ氏は、高市氏が国内政治上の制約を抱えており、中国を怒らせた発言を完全に撤回することは難しいとの説明を受けていたため、その点も理解していたという。

【悲報】高市早苗首相、日本の保守層に愛想つかされるので撤回は出来ないとトランプおやびんに説明なさる
http://blog.livedoor.jp/googleyoutube/archives/52021300.html

ヤバい、かも?
偽陸士
2025年12月02日 18:22
高市首相、小泉防衛相に国際逮捕状もあり得る?防衛省がイスラエル製ドローンを導入するリスクとは(志葉玲) - エキスパート - Yahoo!ニュース https://share.google/eFMqP59d3mcUjvtT7

聞くに耐えない意見だ。
兵器の購入が国際法違反に問えるなんて初めて聞いた。
これだから日本人の多数派から支持され無い。



>自衛隊で「男女平等」は成り立つか 続発するセクハラを正当化してしまう軍事組織の本質(寄稿・久保田茉莉):東京新聞デジタル
https://share.google/AE1UrqulSiiNf2v05

軍事組織だからは、無理があるのでは。
だがミリタリーオンブズマン入れて、徹底的に国会に報告させるべきだろう。
その上で隠蔽して加害者を幇助した関係者を厳罰に処さないと入隊希望者が居なくなる。
軍隊無ければ誰が国を守るは通用しない。
誰しも国家より家族親族郎党の方が大事に決まってる。
隊員達を大事に出来ない軍隊など必要無い。

傭兵や民兵組織に取って代わられるか、分割されて県知事に監督される様になるだろう。
そうなると第三者委員会や県庁の委託を受けた自治体警察の尋問が待っている。
秋霜烈日な処分を受けてそれで初めてマトモな組織になるのだろうか。
坂田三吉
2025年12月02日 18:59
小泉氏、宇宙領域の対処力強化を 「生活基盤の維持に不可欠」(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://share.google/6WNBxgm8WcEmtfY6f

府中基地ね、外周約1.5kmの狭い所だから入間と統合したほうがいいかも。
そうしたらお手当が。
偽陸士
2025年12月02日 19:12
パトカーと装甲車が並んで走行 県警×陸自"テロ想定"共同対応訓練(KKT熊本県民テレビ) - Yahoo!ニュース
https://share.google/UMg9LFWiZ0jY6MuGT


此処にもパトリアいたのね。
坂田三吉
2025年12月02日 20:57
"軍の指揮統制を担うシステム、フィリピン軍に初の輸出へ…中国への対処力強化が狙い"
https://l.smartnews.com/m-6HiBheww/xoF81i

三菱電機製ですか、昔指揮システムが立ち上がりの時、NECだけだと独占になってしまい宜しくないので三菱電機を参加させたけどSEに自衛隊の組織を一から教えなければならないなどかなり大変だったそうで。
やれやれ
2025年12月03日 11:02
中国、原料制約のない「無尽蔵」電池の開発先行 日本のトップ研究者が漏らす無念
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00800/120100004/?i_cid=nbpnb_top_editorpicks
なんか頓珍漢な事を書いてるな。
そもそもレアアースを使わないバッテリの開発に熱心だったのは中国の方なのに。
日本ではLFPもナトリウムイオンも半固体も実用化できていない。
中国はどれも量産化している。日本ですらこれらを利用した製品をAmazonや楽天などで簡単に購入可能だ。
日本は何故か全固体電池に全振りする勢いで突っ込んだが結果は他の電池では中国に全部抜かれる有り様。
頼みの全固体電池ですら開発は後追いなのに追い越されている状況。
完全な戦略ミスをさも資源が原因の様に書くのは如何なものかと。
強いて擁護するとしたらレアアースより人的資源、開発リソースが圧倒的に不足している日本ではどのみち厳しかった。結局リチウムイオン電池のその先を作れなかったということ。
有料記事ですがご参考まで。