財務省、財政制度分科会(令和7年11月11日開催)防衛「資料」を読むその11 

本年も恒例の財務省、財政制度分科会(令和7年11月11日開催)防衛「資料」を読んでいきます。総理が高市氏、財務大臣が片山氏で「責任ある積極財政」を標ぼうしていますから現場は苦労しているのではないかと思います。
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P21 自衛官の処遇・勤務環境の改善
○ 戦後最も厳しい安全保障環境に直面し、自衛隊の任務も拡大する中、自衛官の定員割れが続き、充足率は足元で90%を 下回るなど、防衛力の抜本的強化の担い手である自衛官の確保が喫緊の課題。
○ こうした問題意識から、昨年10月には「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」 が立ち上げられ、令和7年度予算において30を超える手当等の新設・金額の引上げ等を講じている。こうした方策だけではなく、 自衛官の社会的地位の向上や「基本方針」で言及されている組織文化の改革など包括的な取組を進めるべき。

充足率が90パーセント弱だと対したことはないという印象になるが、兵隊、任期制自衛官はかなり少ない。陸自の北部の部隊では充足率4割台の部隊もある。2士だと4割程度で士長を入れても7割台。任期制自衛官が少ないということはそこから曹になる人間の分母が小さいということだ。当然充足率もそうだが、質の面でも下がってくる。
処遇改善は必要だが、それ以前に閉鎖的排他的でモラハラ、パワハラが横行し、自衛隊を批判すると異端扱いする歪んだ組織文化の是正が必要だ。
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P22 若年定年退職者給付金制度の見直し
○ 自衛官はその職務の特性上、若年定年制(一般の公務員の定年年齢を下回る定年)がとられており、こうした制度から生じる 不利益を補うことを目的とした給付金(若年定年退職者給付金)が支給されている。本制度については、令和8年度からの施 行を目指し、その水準の引上げや支給制限の仕組みに関する緩和措置等が検討されている。
○ 就労意欲等に与える影響を踏まえて支給制限を緩和する場合、その影響に関するエビデンスを検証するとともに、複数年分の支 給を特定年の所得に基づいて一括して行う現行制度を見直し、所得水準の変化をより丁寧に反映する制度とすべきではないか。

この給付金には賛成だが、それだけでは効果は薄いだろう。任期制自衛官は早くて3年、長くても30歳程度で退職するが、それから有利な職に就くのは難しい。これは50代で退職する曹や幹部はもっと深刻だ。一般社会から隔絶した組織の常識にどっぷり浸かってきた人間が外の世界に適合するのは大変難しい。

例えば退職後に大学や職業訓練で学びなおす、その間の給料はだすとかの書法が必要だろう。後は恩給を支給するのも手だ。それから諸外国のように一定年齢で一定階級に達していないものは退職するシステムも必要だ。定年まで頑張って留まるよりも30代、40代で転職する方が有利だ。
またそのように退職する人間を防衛省で文官として雇用して、再教育を施したうえで地方協力本部や調達関連部門、自衛隊の各種学校の職員などで雇用するも一案だ。そうすれば65歳まで無理なく雇用できる。その場合予備自衛官になることを条件としてもいいだろう。
これはその職種に長く携わることになるので、幹部が2年交代で移動するよりも職務に習熟できるし、移動の際の引っ越しなどのコストも削減できる。


P23 自衛隊組織のスリム化
○ 自衛隊の現員数は減少傾向にある一方で駐屯地等の数は横ばい又は微増傾向。自衛隊においては陸・海・空自の一体的な統合 運用に向けた取組が進められているが、例えば、米国では統合運用を進める中で、陸・海・空の軍種をまたいだ基地(ジョイントベース) の設立による基地の統廃合が進められた。
○ より機動的かつ効率的な部隊運用を可能とする観点から、与党・有識者から提言されている中間司令部の見直しや、災害派遣や地 元経済等において自衛隊が果たす役割を踏まえた既存部隊の見直しといった自衛隊組織のスリム化を検討していくべきではないか。

指摘の通りで、統廃合すべき基地、駐屯地、施設は多い。1989年から横ばいだ。また部隊を新設しても既存の部隊を解体しないので、部隊の充足率は下がっている。たとえば5か所の施設を1か所に統合すれば警備や給食など各種役職や設備などは単純計算で五分の一になる。
 本来これは政治の問題である。だが政治家がそれを阻害する。自衛隊の施設があった方が税金が取れるし、過疎地では人口も維持できるからだ。だが自衛隊は国防のために存在しているのであって、地元の金ずるとして存在しているわけではない。政府が断固として決断してやるしかない。

更に申せば少子高齢化が進む将来、現在の隊員数を維持することは不可能だ。その現実に合わせて部隊を縮小し、重複する組織を減らし、また自動化などを推進すべきだ。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自が鳴り物入りで導入した新型小銃20式とこれに合わせた新型弾薬J3高威力弾だが、J3に問題があってJ3の調達が中止される。以前本「本日の市ヶ谷の噂」でもJ3はMINIMIで撃つと集弾がばらけるという問題があったと報じたが、更に20式で射撃すると機関部が故障するという。本来新型銃を開発するときは弾薬に合わせて開発するのだが、同時に開発を進め、まとも試験をしてこなかった陸幕と装備庁の当事者能力の欠如と、豊和工業と旭精機の連絡が不十分だったことが原因、との噂。


有料記事
戦艦馬鹿
先日大人の事情で商業媒体に掲載できなかったのでNoteで公開した「馬鹿が戦艦でやってくるの増補改訂版です。
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戦艦馬鹿 清谷信一軍事記事 (清谷防衛経済研究所) - 清谷信一
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馬鹿が戦艦でやってくる!
https://note.com/kiyotani/n/nb15cc60ae49f?app_launch=false


東洋経済オンラインに寄稿しました。
拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653

ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817

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専守防衛 - 清谷 信一
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この記事へのコメント

やれやれ
2025年12月13日 16:20
■本日の市ヶ谷の噂■
NATOの普通弾を複数のメーカーから大量購入してそれぞれ試験した方が良かったのでは?
有事の際は国内での増産では間に合わないでしょうし
とにかく融通して貰った弾で戦うしか無いのだから
あまりにも余裕の無い銃だと直ぐに使えなくなりそう。
と言うか毎度情けない。やはり実弾での試験が少なすぎるのが問題なのでは?
やれやれ
2025年12月13日 16:23
「またそのように退職する人間を防衛省で文官として雇用して、再教育を施したうえで地方協力本部や調達関連部門、自衛隊の各種学校の職員などで雇用するも一案だ。そうすれば65歳まで無理なく雇用できる。その場合予備自衛官になることを条件としてもいいだろう。」
これは良い案ですね。
一定の専門性を持った人なら調達にも力を発揮しそうですね。
Goodman80
2025年12月13日 17:09
一般企業は65歳までの再雇用が義務付けられているので自衛隊も同様に期間社員として再雇用すれば良いんじゃないかな。但し全ての定年を60歳にして、一般隊員も将官も同様に扱う。
■本日の市ヶ谷の噂■
銃器メーカーと弾薬メーカーに対応出来る迄調達を停止する様勧告すれば宜しい。それまでは特戦群等でも使用しているHK416を購入すれば宜しい。隊員の評価を確認の上、20式を再度採用するかどうか決めれば良いでしょう。それならば財務省も文句言わんしょ。
ガネット
2025年12月13日 22:43
十一年式軽機みたいですね。
三八式の実包で設計したはずなのに使ってみたら故障多発、
対策で十一年式に減装弾用意するという横着したので
同じサイズで弾薬に互換性がないという。